事例 バチスタ手術 (変法、心尖部温存式 バチスタ手術)

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患者さんは40歳男性、拡張型心筋症のため 5年前から心不全症状あり、他院で入退院を繰り返しておられました。

このような状態で生きるのはいやだと、心臓手術を決心されました。

 

入院時NYHA III度、左室拡張末期径LVDd 87mm、左室駆出率LVEF 9%、左室拡張末期い圧LVEDP 32mmHgと、高度に拡張し、機能低下した左室の状態でした。

海外なら心移植しても不思議ではない心臓です。

 

111.体外循環で心拍動の状態で、

心尖部(矢印)を温存し、左室側壁を切開し始めているところです。

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122.左室側壁の病気の部分をほぼ切除しつつあります。

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心拍動したままです。

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133.僧帽弁の閉鎖不全症を予防するために前尖と後尖をつなぎアルフィエリ形成をします。

現在はこの操作は概ね不要になっています。

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144.左室を再建(縫合閉鎖)しているところです。この間、心拍動した状態を維持して心臓を守りました。

バチスタ手術 (変法)では、新しい左室の形が紡錘形で自然に近く、力のかかり方に無理がありません。

患者さんは術後5年経過し、お元気です。

 

アメリカではバチスタ手術の成績が不安定で、保険が効かなくなり、すたれてしまいました。

私たちはその成績不安定の原因を、これまで多くの施設で左室心尖部を切除したりしなかったり、あまり注意を払ってこなかったことにあると考え、心筋症の動物で研究した結果、心尖部を温存すればバチスタ手術の成績は改善することを示しました。

ヨーロッパなどで賛同する心臓外科医が増えており、その成績のよさから、バチスタ変法(心尖部を温存するバチスタ手術)は今後リバイバルし、多くの患者さんを助けるものと期待しています。

さらに術式や治療の方法を改善すべく努力を続けています。

またこうした左室形成術が患者さんに役立っていることを重症心不全研究会を立ち上げて全国の仲間とともに啓蒙活動しています。


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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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