最終更新日 2023年1月8日
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◾️まず機能性僧帽弁閉鎖不全症とは?
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機能性僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁そのものは壊れていないのに左室がパワーダウンして形がゆがむために僧帽弁まで歪んで逆流が発生するという病気です。かつては不思議な病気と思われていましたが、
現代はこの病気の原因や状態、治療法なども格段に進歩しています。
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◾️機能性僧帽弁閉鎖不全症は大きく2つに分けられます
(1)ひとつは心筋梗塞や狭心症などに伴う虚血性僧帽弁閉鎖不全症、 いまひとつは
(2)心筋症や心不全にともなう非虚血性僧帽弁閉鎖不全症です。
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◾️虚血性僧帽弁閉鎖不全症の場合は
心筋梗塞や虚血つまり心臓への血液の流れが不足して心臓が酸欠状態となり、左室の形や動きが悪くなり、僧帽弁を支える糸(腱索と呼びます)が左心室に引っ張られて弁が閉じなくなります。左図は冠動脈の主な3系統を示します。
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そのため虚血そのものをバイパス手術やカテーテル治療PCIあるいはお薬などで改善し、
またすでに心筋梗塞などで左室がかなり壊れている場合には僧帽弁形成術や左室形成術などを併用して弁がきちんと作動するように治します。
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近年この虚血性僧帽弁閉鎖不全症が増加傾向にあり、日頃の健康管理から、胸が痛い・苦しいなどのときに早期診断・早期治療することが命を救います。あまり重症になると心筋が多く失われていて、それらは今の医学では簡単には回復できないため心機能不足が解決しづらくなるのです。
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◾️非虚血性僧帽弁閉鎖不全症の場合は
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原因になっている病気を見つけ、治すことが必要です。冠動脈は正常範囲内です。たとえば大動脈閉鎖不全症や僧帽弁閉鎖不全症などの心臓弁膜症などが長期間そのままになっているとこの状態になることがあります。
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そうなるまでに心臓手術で治すことが患者さんの安全上有利なため、
日米の主要学会が作っているガイドラインでも、
適切なタイミングでのオペを推薦しているわけです。
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弁膜症以外では特発性拡張型心筋症に代表される心筋症が(2)の原因として重要です。
この場合は塩分制限、適度な運動、お薬から始まり、
それらで不足する場合は両室ペーシング(略称CRT)や
必要に応じて左室形成術(バチスタ手術やドール手術、セーブ手術など)その他の方法をもちいて左室を治します。
近年、私たちのチームではこの左室形成術が進化し、限界点がかなり高くなりました。
なおこれらでも対処できないほど重症になれば、
補助循環つまり人工心臓さらには心移植も考慮する必要が出てきます。
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◾️そこで方針
このように機能性僧帽弁閉鎖不全症は
左心室が壊れた、あるいは弱った状態ですので、
早期診断と早期の適切な治療が患者さんを救います。
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階段を登るとき息切れが強くなったとか、
足がむくみやすいとか、
体がえらい、疲れやすいなどのときにまずかかりつけの先生に相談されるのが良いでしょう。
心臓が大きいと言われたら、心臓専門医にご相談されるのが安全です。
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また健診で心雑音を指摘されたり、
生活のなかで胸が痛くなるとか胸が不快な感じがするときなどにも早めに相談されることが勧められます。
なお、心臓専門家の間でもこの病気は治せない、看取りする病気というお考えの先生も少なくありません。もしそう言われたら、諦める前に米田までお問い合わせください。できれば寝たきりになるまでに、つまりまだ体力が少しは残されているうちにご相談いただければ幸いです。
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お問い合わせはこちらまでどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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