Q: こうした従来の治療法でだめなとき、何か方法はあるのですか?
A: 上記の従来治療をどのように駆使しても閉塞性動脈硬化症ASOでは下肢の血流が不足し、下肢を切断する危険が迫っている場合には、
下肢に新しい血管を造って下肢を救う血管新生療法という試みがあります。
これは再生医学の一つです。
左図はbFGF徐放(bFGFは塩基性繊維芽細胞増殖因子というたんぱく質、徐放は徐々に放出する方法です)の動物実験の写真です。
bFGFで目に見える血管が沢山できているのがわかります。
目に見えるというのが大切で、比較的大きな血管とくに動脈ができるのです。
血管新生療法の効果十分です。
こうした実験を糖尿病や高コレステロールの動物でも十分に行い、効果と安全性を確認してから下記の臨床試験に入りました。
これまで実績があるのは骨髄の細胞(たとえば骨髄単核球細胞)を下肢に注射して血管を作る方法で一定の成果が報告されています。
私達はこれをさらに立派にすべく、bFGFを下肢で4週間じっくりと効かせる(徐放)方法を京都大学再生医科学研究所の田畑泰彦先生らと開発しこれまで7名の患者さんに臨床試験として使用しました。
痛みが消え、下肢の皮膚潰瘍が治るケースが多く、今後さらに展開させたく考えています。
これまでは京大病院でこの血管新生療法を行ってきましたが、2007年に米田正始が退職してから止まっていました。
2010年9月から、この治療法の良さがあらためて評価され、京都大学探索医療センターの目玉プロジェクトとして第二のシリーズが行われました。その結果、良好な成績が確認されて各種学会でも発表されています。
同時に大規模な企業化も検討しており、何よりも安全第一のため様々な準備、設備、倫理委員会や法律遵守のための手続きなどが必要なため時間をかけて取り組んでいます。
写真はバージャー病の患者さんの治療前後の比較をしたものです。ASOでも同様の効果が出ています。
安全重視のためまず最少量のbFGFを使っていますが、それでもこれだけ効くことから皆勇気づけられ、今後徐々に量を増やして一層の効果を期待しています。
将来的にはES細胞やiPS細胞などの万能細胞を使えるようになれば良いのですが、現時点ではこれらはまだまだ実験段階で、効果も安全性も未確定なため、
自然で体にやさしいbFGF徐放による血管新生療法を進める努力をしています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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