最終更新日 2020年2月20日
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すでに心筋梗塞になってしまわれた患者さんには、その失われた心筋心臓の筋肉を元に 戻すことは現在のところ不可能ですが、残った心筋をフルに効果的に活躍させることで心臓の力を高めることは可能です。
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◼️左室瘤や虚血性心筋症
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たとえば左室瘤(心筋こうそくにやられた場所がこぶのように膨らんでしまいます)や虚血性心筋症(左心室全体の動きが悪くなります)には左室形成手術LVRと略します)が役に立ちます。
心筋梗塞後の左室形成術では左室の特に悪い部分を小さく縫い縮め、形を整えて、残った部分のパワーを上げようというわけです。
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私達は左室形成術を通算で130名以上の患者さんに行い、手術前に心筋梗塞のために心臓も全身も衰弱しておられた超重症の患者さんを除けば多くは救命できています。そしていったん回復した患者さんは長期間生存する率が高いことが判明しています。
◼️虚血性僧帽弁閉鎖不全症
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また左室の形が崩れたり大きくなりすぎて僧帽弁がゆが み、弁逆流を起こす虚血性僧帽弁閉鎖不全症が発生すれば、外科手術が活躍します。
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患者さんの心臓のパワーや全身の体力が落ちていることを考え、できるだけコンパクトな手術で、しかしポイントを押さえることを心掛けています。
(手術事例: コレステロール塞栓と虚血性僧帽弁閉鎖不全症の患者さん)
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心筋梗塞はなるべく起こさないのが望ましいのですが、不運にして梗塞が起こってからでも手術で治せるところが多々あるわけです。
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◼️治るためには
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大切なことは、まだパワーのある心筋(心臓の筋肉)がある程度以上残っていること、そして手術に耐えられる体力がまだあること、なのです。
そこで、体力がとことん落ちてもう生きるのに精いっぱいという状態ではなく、それより一歩でも二歩でも早い時期にご相談頂ければ、結果はよりよくなります。
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しかしあれよあれよといううちに状態が悪くなることもあります。そういう場合は、単にもうダメ、手遅れというのではなく、いったん入院して戴き、さまざまな方法で状態をある程度上向けてから手術することもあります。
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◼️問題は
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とくに心筋梗塞後の心不全の治療経験が少ない主治医の場合は、はやばやとギブアップされるケースが後を絶ちません。むしろ主治医ご自身が、誰か助けてくれる先生はいないかと困惑しておられることさえよくあります。だからこそ相談が大切なのです。
近い将来には再生医学によって血管を増やしたり、さらには失われた心筋を新たに作り直して心臓をより効率的に回復させる治療が出てくるかも知れません。
現在、再生医療の準備を進めています。
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メモ: 心筋梗塞のあとの左心室関係の二次的問題を心筋梗塞後の機械的合併症と呼び、以下が代表例です
1.左室瘤、
2.虚血性心筋症、
3.虚血性僧帽弁閉鎖不全症、
4.3.の中でも乳頭筋断裂、
5.心室中隔穿孔(VSP)、
6.左室破裂
いずれも治療や手術は可能ですが、タイミングを逸するとそれができないことがあります。
早目の対応が大切なわけです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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