13) 修正大血管転位症とは?弱い全身ポンプを守る最新治療【2025年最新版】

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更新日:2025年10月1日
執筆:福田総合病院 心臓血管外科専門医 米田正始

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◆修正大血管転位症とは?

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修正大血管転位症では弱い右心室が全身への血液供給を任され無理が生じます修正大血管転位症(Congenitally Corrected Transposition of the Great Arteries:ccTGA)は、先天性心疾患のひとつです。

  • 血流自体は正常:他の合併症がなければ、血液の流れ方は健常者とほぼ同じです。

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  • 心室と弁が入れ替わる:強力な左心室の位置に、本来は全身ポンプを担わない右心室が置かれています。また僧帽弁と三尖弁も入れ替わっており、構造的に弱い三尖弁が全身循環を支えることになります。

このため、成人期以降に心不全三尖弁閉鎖不全症を発症しやすいのが特徴です。

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◆合併しやすい病気

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修正大血管転位症では以下の病気を合併することがあります:

これらが合併した場合には、それぞれに応じた外科治療やカテーテル治療が必要となります。

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◆成人期に起こる問題 ― 三尖弁閉鎖不全と心不全

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合併症がなくても、もともと弱い右心室が全身ポンプとして酷使されるため、次第に疲弊し心不全や弁逆流が起弱い心臓でもそれを守りうまく使えば比較的元気に暮らせますこります。

かつてはこの病気の患者さんは成人後に心不全で亡くなることが多く、医学書には「寿命は60歳まで」と記載されていました。

しかし現在では、拡張型心筋症の治療に準じた戦略を組み合わせることで改善が可能とわかってきました。

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治療アプローチ

  • 三尖弁閉鎖不全がある場合:早期の弁置換術(全乳頭筋温存式)で右心室を守る

  • 弁形成術は通常心とは違い、かえって成績が劣る
  • 薬物治療:β遮断薬、ARB、ARNI、MRAなど

  • デバイス治療:CRT-D(両心室ペーシング+除細動器)を必要に応じて導入

  • リハビリ・生活習慣の最適化

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この総合的な治療により、より長生きし、生活の質を維持できる可能性が高まっています。(手術事例 修正大血管転位に弁膜症と心不全を来した高齢患者さん)

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Ilm16_ac02010-s◆修正大血管転位症の未来 ― あきらめない治療

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近年は人工心臓(補助循環装置)の進歩や、再生医療による心筋強化の研究も進んでいます。

私たちの経験では、三尖弁閉鎖不全を伴う患者さんでも心不全が悪化する前に弁手術を行えば、長期の予後が良好です。

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実際に、手術から10年以上経過し、80歳を超えて元気に生活されている患者さんもおられます。

医学教科書の「60歳まで」という限界を超えた実績が積み重なりつつあります。

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◆まとめ

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  • 修正大血管転位症は、右心室が全身ポンプを担うため成人期に心不全を起こしやすい病気です。

  • 三尖弁閉鎖不全や不整脈を合併することが多く、適切な手術と薬物治療で長生きできる可能性があります

  • 最新の手術、デバイス治療、再生医療の発展により、かつての寿命の壁を超える患者さんが増えています。

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👉 「修正大血管転位症」と診断された方は、決して諦めず、経験豊富な心臓外科医へ早めにご相談ください

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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