13) 修正大血管転位症―弱い全身ポンプをどう守る?

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最終更新日 2019年5月27日

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◾️修正大血管転位症とは?

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修正大血管転位症は先天性心疾患の一つで、VSDなど他の合併病変がない場合、血液の流れ方は健康な方と同じです。

ただし左心室と右心室が入れ替わっています。

つまり本来の左心室の位置にパワーの弱い右心室が入っているわけです。

この右心室を解剖学的右心室と呼びます。

同様に僧帽弁と三尖弁(構造的に弱いです)も入れ替わっています。そのため大人になってから心不全になりやすいのです。

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修正大血管転位症では弱い右心室が全身への血液供給を任され無理が生じます  修正大血管転位症では

心室中隔欠損肺動脈弁狭窄

三尖弁閉鎖不全(普通の心臓でいう僧帽弁閉鎖不全症に相当)、

完全房室ブロック、WPW症候群

などを合併しやすく、合併した場合はそれぞれに対して治療が行われます。

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◾️修正大血管転位症と三尖弁閉鎖不全症および心不全

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上記の合併病変がない場合でも、もともとパワー不足な右心室が左心室の重労働をするなかで次第に疲労が蓄積し、心不全や三尖弁閉鎖不全症などの二次的病変を起こします。

そのため患者さんが成人され、ある程度の年齢に達すると心不全等のため亡くなってしまうことがこれまで多かったわけです。

この状態はある意味で、拡張型心筋症の状況に近いといえましょう。

拡張型心筋症といえば、世間的にはもうダメと思われがちですが、その治療に力を入れてきた私たちには、むしろ治せる可能性のある病気ととらえました。

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つまり成人に達した修正大血管転位症の患者さんでも、解剖学弱い心臓でもそれを守りうまく使えば比較的元気に暮らせます右心室にある程度のパワーが残っていれば、

三尖弁閉鎖不全症その他を含めた合併病変を治すことで、つまり拡張型心筋症に近い治療を行うことで、

もっと長生きし、あるいは生活の質(QOL)を高めることができるはずと考えたからです。

(手術事例 修正大血管転位に弁膜症と心不全を来した高齢患者さん)

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◾️修正大血管転位症、今後の治療方向は

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Ilm16_ac02010-sより多くの修正大血管転位症の患者さんが長く楽しく暮らせるよう、治療法を進化させる必要があります。

進歩著しい補助循環(ある種の人工心臓)や、いずれ再生医療で心筋(心臓の筋肉)のパワーアップを図ることも研究されています。

私たちの10年以上の経験で、修正大血管転位症プラス三尖弁閉鎖不全症の患者さんでは、心不全がひどくなる前に、三尖弁を直してしまえば、長期の予後が良いというデータを持っています。この手術からほぼ10年がたち、すでに80歳になられて、なお元気に暮らしておられる患者さんもおられます。

このように私たちも及ばすながら努力を積み重ねています。けっして諦められないようにお願いします。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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