アンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)

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ARB(エー・アール・ビー)とは?

 

Ilm09_dc02001-sアンギオテンシンIIという血管を収縮させ狭くする物質を抑えるお薬です。

アンギオテンシンIIの受容体に結合してブロックすることで作動します。

そのため血管がリラックスし高血圧がやわらぎます。上図(動脈)の黄色い部分に効くのです。

血圧が下がると心臓は血液を送りやすくなり、心不全も改善します。

同様に、血圧が下がることで腎臓への負担もへって腎機能障害もやわらぎます。

ARBの効果はACE阻害剤と共通点がありますが、違うのはACE阻害剤がアンギオテンシンIIを造るのを抑えるのに対してARBは血管の平滑筋にアンギオテンシンIIが結合するのを抑えることです。

 

■どんな時に役立つの?

 

Ilm16_cd05008-s高血圧や心不全の治療に、また高血圧や糖尿病のための腎不全の治療に役立ちます。

高血圧や心拡大のある患者さんで糖尿病を予防したり脳卒中を減らします。

心房細動を予防するにも役立ちます。

心臓手術のあとも、心臓のパワーアップに役立つことがよくあり、手術とコンビで活用することもあります。手術で左室構造を治し、薬で心臓の筋肉を治すという協同作業です。

ARBはACE阻害剤と共通した点が多いため、ACE阻害剤が咳などのために使えない患者さんでも活躍します。

 

■ARBファミリーの中での相違点は?

 

いずれも効果や副作用で似ています。違うのは体内からどう排泄されるか、そして体内にどう広がるかです。

ARBの中には体内で活性化されてから作動するタイプのものもあります。

血圧降下作用がよりすぐれたタイプもあります。

たとえばイルべサルタン、カンデサルタンなどはロサルタンより血圧をより強く下げます。

 

■ARBの副作用は?

 

Ilm19_ca01002-s多くの患者さんで、副作用は少ないです。

一番よくあるのは咳、ついで血清カリウムの高値、低血圧、めまい、頭痛、ぼーっとする、下痢、味覚障害、皮膚発赤などです。

 

咳はACE阻害剤よりまれです。

まれですが重い副作用は腎障害、肝障害、アレルギー反応、白血球減少、浮腫です。

妊婦さんは奇形の心配があるため通常服用しないほうが安全です。

両側の腎動脈が狭くなっている方や、ARB過敏のかたも同様です。

他の降圧剤と同様、性生活に支障がでることがあります。

 

■他のお薬との関連は?

 

カリウム剤や、血中カリウムを上げるお薬との併用は、血中カリウム値をより強く押し上げ不整脈を起こします。

ARBは血中リチウム値を上げます。

ARBのひとつであるロサルタンはリファンピンによって血中濃度が下がり、フルコナゾールによって活性化しにくくなり、その結果、効き目が落ちます。

 

商品名ではどんなものが?

 

(薬理名(正式名))→(商品名)

カンデサルタン→ブロプレス

イリベサルタン→イルベタン、アバプロ

テルミサルタン→ミカルディス

バルサルタン→ディオバン

ロサルタン→ニューロタン

オルメサルタン→オルメテック

などがあります。

これらを服用している患者さんには、何か疑問やおかしいことがあれば、ご自身で判断されず、処方してくれた医師に相談されることをお勧めします。それによって安全が確保しやすくなります。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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