8) 左室形成術を強化する方法―手術を含む総合戦力で予後を改善

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◾️左室形成術の強化法その1

P1170355bまず僧帽弁輪形成術(MAPと呼びます)を併用することで左室基部のパワーアップが図れることを動物で証明し、患者さんにも積極的に活用しています。あるいは病態によっては乳頭筋前方吊り上げ(略称PHO)を併用することでより高い効果を上げています。

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◾️左室形成術の強化法その2

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加えて両室ペーシング (CRTと略します) というペースメーカーの発展型が効果を出す患者さんには内科と協力して積極使用しています(ドール手術や両室ペーシングにつきましては4.虚血性心疾患の項をご参照下さい

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CRTはうまく使えば治療成績の向上や患者さんのQOLの改善に役立つ方法です。また重症心不全の患者さんでは退院後、ご自宅でときに不整脈が発生することがあります。そのときに直ちに患者さんを救える埋め込み型除細動器(ICD)も役立ちます。

心不全の患者さんではこれらCRTとICDの両方の機能を併せ持った高級機、CRTDも必要におうじて使います。これほどの高性能でも右上写真のように手のひらに軽く乗るサイズで、患者さんへの負担が最小限になるようになっているのです。左室形成術との併用で威力を発揮することもあります。

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◾️左室形成術の強化法その3

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患者さんの体力がない場合は、必要な合併手術をより絞り選んで行います。

逆に若い患者さんではある程度以上必要な合併手術をできるだけすべて行い、しっかりと治すことが有利なこともあります。

個々の患者さんの状況をしっかり把握し、それに応じて方針を立てることが手術の成功率を上げるために大切です。

虚血性心筋症・虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する複合手術。海外のジャーナルにも掲載され当時の新聞でも報道されました。.

複合左室形成術の一例です。

当時(10数年前)めずらしい大手術として新聞などで報道されました。

術前はショック(血圧が十分出ない)で危険な状態でしたが、5年以上経ったあともお元気です。50代という比較的お若いご年齢ゆえ、複合手術が実を結んだものと思います。なおこの図から

バチスタ手術変法(左室側壁に)とセーブ手術(心室中隔に)の位置関係がわかります。

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◾️左室形成術の強化法その4

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この数年間に、左室形成術そのものをより短時間でかつ確実にできるよう、工夫を重ねて参りました。詳しくはセーブ手術やドール手術のページをご覧ください。これらの術式の良いところだけを合わせた方法で患者さんの体力が温存しやすくなり、成績も安全性も向上しています。そしてこれらをより進化させた心尖部凍結型左室形成術でこれまで以上に患者さんに優しい左室形成術が成果を上げています。

また心不全に付随する僧帽弁閉鎖不全症をより短時間に確実に治せるよう、工夫を重ねています。上記の乳頭筋最適化術はそのひとつです。

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◾️左室形成術の強化法その5

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A316_005お薬の適切な活用は左室形成術のあとも重要です。

心臓をリラックスさせてエネルギーを貯めさせて元気にするタイプのお薬、たとえばベータブロッカーやACE阻害剤またはARB(アンギオテンシンII受容体ブロッカー)と呼ばれる薬、またアルダクトンAと呼ばれるタイプのお薬をしっかりと併用して、左室形成術である程度以上良くなった心臓をさらに改善するようにしています。

薬にもいろいろあり、抗生物質のようにポイントを絞って短期決戦型で的確に使うものもありますが、心不全に対するお薬は長期間にわたって丁寧に、副作用がないことを確認しながら使うことで患者さんの元気さだけでなく、寿命が延びることが知られています。

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◾️左室形成術の強化法その6

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Rehabilitationさらに心臓リハビリテーションや適切な栄養も欠かせません。まさに患者さんの病気とか心臓や内臓を診るだけでなく、体やこころまで診る全人医療へと進んでいるのです。

またASVに代表される加圧マスクも肺や心臓、全身の状態を良くするために役立つことが多いです。

それにはもちろん循環器内科の先生方や開業医の先生方あるいはコメディカルの皆さんとのチームプレーが役立っています。

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同時に左室形成術を中心とした心臓手術があってこそ、これらの方法が使えて、しかも威力を発揮することも多く、重い責任を背負う自覚をもって努力を続ける所存です。

ともあれ心臓の手術もハートチームによる総合治療とアフターケアが大切というわけです。

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Aki_0088同じ意味で、もとの疾患たとえば糖尿病や高血圧や肥満その他さまざまな病気の適切な治療やコントロールも大切です。

SAS(睡眠時無呼吸症候群)があればその治療も有用でしょう。

患者さん全身として元気になって戴く努力が本筋の治療です。

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医誠会病院心臓血管外科では熟練の心臓外科医や循環器内科医のもと、熱心な看護スタッフと充実のリハビリなどを含めたハートチームが出来上がり、かつ救急患者さん受け入れ大阪市トップという足腰があり、大きなICUやHCUも控えており、患者さんのケアを精神面の援助にまで広げて、健康の増進を図るようにしています。

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執筆:米田 正始
医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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