腸骨動脈瘤とは 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 腸骨動脈瘤とは?

Iliac artery.

腸骨動脈瘤(ちょうこつどうみゃくりゅう) とは、骨盤内にある太い血管(腸骨動脈)がこぶのように膨らんでしまう病気です。

  • 総腸骨動脈瘤:全体の約70%

  • 内腸骨動脈瘤:約20%

  • 外腸骨動脈瘤:約10%

に発生します。

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腸骨動脈瘤は 腹部大動脈瘤(AAA) と合併することが多く、AAAの患者さんの 15〜40% に腸骨動脈瘤が見つかります。片側に腸骨動脈瘤があれば、もう一方にもできやすいため注意が必要です。

瘤の直径が 3cmを超えると急速に拡大 するリスクがあり、放置すると 破裂 → 致死的出血 に至る可能性があります。

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◆ 腸骨動脈瘤の症状

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小さいうちは 自覚症状がほとんどなく無症状 です。
しかし瘤が 6cm以上 に拡大すると次のような症状が出ることがあります:

  • 周囲の臓器や神経を圧迫 → 下腹部や腰の違和感

  • 血栓が飛ぶ → 下肢の血流障害(虚血やしびれ、冷感)

  • 破裂による突発的な腹痛・ショック

そのため、健康診断や他疾患の検査中に偶然発見されるケース が多いのも特徴です。

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◆ 診断方法

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  • エコー(超音波検査)

    • 低侵襲で安全に瘤の大きさを測定可能

    • ただし血管が蛇行している場合は不正確になることも

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  • CT検査

    • 正確な形状・範囲を評価できる

    • 造影剤や放射線被曝のデメリットあり

腸骨動脈瘤が疑われる場合は、エコーとCTを組み合わせて診断するのが一般的です。

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◆ 腸骨動脈瘤が破裂した場合のリスク

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腸骨動脈瘤が 一度破裂すると死亡率は非常に高く、30%前後 と報告されています。
診断が遅れるとさらに致死率は上がり、救命は困難です。

破裂を予防するためには、破裂前に計画的に治療を行うこと が何よりも重要です。

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◆ 腸骨動脈瘤の治療法

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● 経過観察

  • 瘤が小さい場合(3cm未満)や進行が遅い場合は定期的なエコー・CTで経過観察。

● 外科手術

  • 瘤を切除し人工血管に置き換える手術。

  • 確実性が高いが、体への負担も大きめ。

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ステントグラフト治療(EVAR

  • カテーテルを用いて血管内にステント付き人工血管を留置する低侵襲治療。

  • 高齢者や合併症のある方でも比較的安全に行える

  • 緊急破裂例でも救命率を高めることが報告されている

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◆ まとめ

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  • 腸骨動脈瘤は 放置すると破裂の危険がある命に関わる病気

  • 自覚症状が出る前に エコーやCTで早期発見 することが重要

  • 3cm以上で拡大傾向があれば手術やEVARを検討

  • 最新の低侵襲治療(ステントグラフト)により、より安全に治療可能

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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