腸骨動脈瘤の手術について 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月26日

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◆腸骨動脈瘤とは?

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腸骨動脈瘤とは、お腹の奥にある腸骨動脈がこぶのように膨らんでしまう病気です。
症状がないまま進行することも多いですが、破裂すると命に関わる危険な状態になるため注意が必要です。

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◆腸骨動脈瘤の治療方針

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図3b

  • 瘤が小さい場合(直径3cm未満):薬による内科的治療や定期的なCT検査・エコーでの経過観察が基本です。

  • 手術が必要な目安

    • 瘤の直径が 3cm以上

    • 6か月で 7mm以上拡大

    • 1年で 1cm以上拡大

    • 症状(お腹や腰の痛みなど)がある場合

これらに該当するときは、破裂予防のため手術が推奨されます。

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◆腸骨動脈瘤の手術方法

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  1. 人工血管置換術

    • 腸骨動脈の瘤の部分を切除し、人工血管で置き換えます。

    • 状況により、大腿動脈まで人工血管をつなげてバイパスを作ることもあります。

  2. 瘤閉鎖術

    • 内腸骨動脈瘤など、他の血流ルートが十分にある場合は、瘤を閉じて血流を遮断する方法をとることもあります。

  3. 腹部大動脈瘤を合併している場合

    • 腸骨動脈瘤に加えて腹部大動脈瘤(AAA)が直径2.5cm以上ある場合は、同時に手術を行います。

    • このときはY字型人工血管を用いて、大動脈と腸骨動脈をまとめて再建します。

現在では切開をできるだけ小さくする工夫が進み、従来よりも体への負担が少なく、安全な手術が可能になっています。

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腸骨動脈瘤は破れれば大動脈瘤に準じた危険性があり油断禁物です◆ステントグラフト(EVAR)による治療

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近年は**ステントグラフト内挿術(EVAR)**が大きく進歩しました。

  • お腹を大きく開けることなく、足の付け根からカテーテルを入れて人工血管を内側に留置する方法です。

  • 回復が早く、体への負担が少ないのが特徴です。

  • 腸骨動脈瘤が腹部大動脈瘤と同時にある場合にも有効です。

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◆腸骨動脈瘤は油断できない病気

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腸骨動脈瘤は「地味な病気」と思われがちですが、破裂すれば大動脈瘤と同様に致死的です。

  • 症状がある場合

  • 検査で瘤が大きくなっている場合

には、速やかに血管外科・心臓血管外科の専門医に相談することが大切です。

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◆まとめ

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  • 腸骨動脈瘤は症状がなくても進行する危険な病気です。

  • 直径や拡大スピードによっては人工血管置換術やステントグラフト治療が必要です。

  • 破裂を防ぐためには、早期発見と適切なタイミングでの手術が重要です。

「腸骨動脈瘤」と診断された方は、ぜひ専門医にご相談ください。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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腸骨動脈瘤とは 【2025年最新版】

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最終更新日 2025年9月17日

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◆ 腸骨動脈瘤とは?

Iliac artery.

腸骨動脈瘤(ちょうこつどうみゃくりゅう) とは、骨盤内にある太い血管(腸骨動脈)がこぶのように膨らんでしまう病気です。

  • 総腸骨動脈瘤:全体の約70%

  • 内腸骨動脈瘤:約20%

  • 外腸骨動脈瘤:約10%

に発生します。

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腸骨動脈瘤は 腹部大動脈瘤(AAA) と合併することが多く、AAAの患者さんの 15〜40% に腸骨動脈瘤が見つかります。片側に腸骨動脈瘤があれば、もう一方にもできやすいため注意が必要です。

瘤の直径が 3cmを超えると急速に拡大 するリスクがあり、放置すると 破裂 → 致死的出血 に至る可能性があります。

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◆ 腸骨動脈瘤の症状

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小さいうちは 自覚症状がほとんどなく無症状 です。
しかし瘤が 6cm以上 に拡大すると次のような症状が出ることがあります:

  • 周囲の臓器や神経を圧迫 → 下腹部や腰の違和感

  • 血栓が飛ぶ → 下肢の血流障害(虚血やしびれ、冷感)

  • 破裂による突発的な腹痛・ショック

そのため、健康診断や他疾患の検査中に偶然発見されるケース が多いのも特徴です。

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◆ 診断方法

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  • エコー(超音波検査)

    • 低侵襲で安全に瘤の大きさを測定可能

    • ただし血管が蛇行している場合は不正確になることも

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  • CT検査

    • 正確な形状・範囲を評価できる

    • 造影剤や放射線被曝のデメリットあり

腸骨動脈瘤が疑われる場合は、エコーとCTを組み合わせて診断するのが一般的です。

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◆ 腸骨動脈瘤が破裂した場合のリスク

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腸骨動脈瘤が 一度破裂すると死亡率は非常に高く、30%前後 と報告されています。
診断が遅れるとさらに致死率は上がり、救命は困難です。

破裂を予防するためには、破裂前に計画的に治療を行うこと が何よりも重要です。

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◆ 腸骨動脈瘤の治療法

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● 経過観察

  • 瘤が小さい場合(3cm未満)や進行が遅い場合は定期的なエコー・CTで経過観察。

● 外科手術

  • 瘤を切除し人工血管に置き換える手術。

  • 確実性が高いが、体への負担も大きめ。

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ステントグラフト治療(EVAR

  • カテーテルを用いて血管内にステント付き人工血管を留置する低侵襲治療。

  • 高齢者や合併症のある方でも比較的安全に行える

  • 緊急破裂例でも救命率を高めることが報告されている

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◆ まとめ

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  • 腸骨動脈瘤は 放置すると破裂の危険がある命に関わる病気

  • 自覚症状が出る前に エコーやCTで早期発見 することが重要

  • 3cm以上で拡大傾向があれば手術やEVARを検討

  • 最新の低侵襲治療(ステントグラフト)により、より安全に治療可能

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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