最終更新日 2025年1月11日
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心臓手術の際におこり得るもっとも重い合併症のひとつが脳梗塞です。
残念ながらこれを完全に克服できている施設は世界に一つとしてありません。
しかしさまざまな努力の結果、一流施設ではかなりゼロに近づいているとも言えます。
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心臓手術のときに脳梗塞が起こり得る主要な原因として大動脈の硬化が知られています。
心臓を一時止めて、内部を治すために、大動脈を一時遮断します。
これを外すときに、もし大動脈内部に血栓や油などがついていると、
これが外れれば、そして血流に乗ってもし脳に流れていけば梗塞になり得るのです。
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そこでさまざまな予防策を講じて少々悪い大動脈でも脳梗塞が起こらないように工夫しているわけです。
さらに、大動脈のどこを遮断してもダメというほどの動脈硬化がある大動脈、いわゆる陶磁器大動脈(陶磁器のように硬くなっているという意味)の場合は、特別な工夫をします。
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たとえば体温をある程度下げておいて、一時全身の血流を止めて、
大動脈を開き、
中にある動脈硬化部分を取り去って、
つまり大動脈の中をきれいに掃除して
それからは大動脈を安全に遮断でき、普通の心臓手術に安全に戻れます。
あるいは体温をさらに下げて、一時全身血流を止めて、
大動脈に人工血管を縫い付けて、
それを遮断して、あとは通常の手術となります。
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大動脈以外にも心臓手術での脳梗塞の原因として知られるものがあります。
たとえば心房細動などの不整脈や、脳動脈や頸動脈の硬化・狭窄などです。
これらにも注意し、さまざまな予防策を張ることで梗塞をできるだけゼロ発生に近づける努力をしているわけです。
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この10数年増えたミックス(創が小さい手術)では人工心肺の血液を送る管(送血管)を下肢の付け根にある大腿動脈に入れざるを得ないため、脳梗塞が通常の正中アプローチより増えやすいという弱点があります。こうしたことも考慮に入れて作戦を立てる必要があります。
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こうした幅広い検討で今後さらに安全性が高まって行くものと期待されます。
同時にその技術でより重症の患者さんにも心臓手術の恩恵が届くようになるでしょう。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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