天皇陛下の冠動脈バイパス手術成功を慶ぶ

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2012年2月18日土曜日、天皇陛下の冠動脈バイパス手術が成功しました。

朝日ドットコムの速報は次のように伝えています。

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天皇陛下の手術無事終了 集中治療室に移る

狭心症の治療のため東京大病院(東京都文京区)に入院中の天皇陛下は、18日午前9時半ごろから心臓の冠動脈バイパス手術を受けられ、手術は午後3時半ごろまでに無事終了。午後3時55分に手術室から集中治療室(ICU)に移られた。

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車から挨拶される天皇陛下天皇陛下が狭心症を冠動脈バイパス手術によって克服され、ますますお元気に活躍されることをお慶び申し上げます。

執刀にあたられた畏友・天野篤先生(順天堂大学)や小野稔先生(東京大学)、それを循環器内科の立場からサポートされた永井良三先生(東京大学)、麻酔科の先生方、コメディカルの方々はじめ関係の皆様に敬意を表したく思います。

とくに大変な重圧のなかをゆるぎない信念と技術で心臓手術を完遂された天野先生を誇りに思う次第です。

私見ですが、この先生たちが助けられたのは、天皇陛下だけではないと思います。

虚血性心疾患の治療にいのちをかけて来られた多くの循環器内科医や心臓外科医、さらに冠動脈バイパス手術が適応となる無数の患者さんたちも含まれるのです。

それは狭心症の中には冠動脈が複雑に壊れていて、カテーテル治療よりも冠動脈バイパス手術のほうが長生きできることがすでに示されている患者さんが少なくないからです。

しかしそうした患者さんたちも、皮膚を切らずにできるカテーテル治療を選ばれることが日本では多く、必ずしも安全な治療選択がなされているとは限らない現状があるのです。それでもそれらの患者さんがお元気なうちはまだ良いのですが、死亡する方が長期的に発生するのは残念なことです。

天皇陛下が医学的にベストの治療を選ばれた勇気と決断、それを支援された医療チームの皆さんに私が敬意を表するのはそれもあるからです。

今回の冠動脈バイパス手術の成功は、かつて天覧試合でサヨナラホームランを放ってプロ野球を国民的なものとした長嶋茂雄さんの貢献に匹敵するものと個人的には思っています。

すでに冠動脈バイパス手術を受けられた患者さんたちも、今回の手術を慶んでおられます。自分たちの決断は間違っていなかったと。

多くの患者さんたちとともに、今回の手術成功を慶び、関係の皆様に感謝するものであります。

平成24年2月18日

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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Comments

  1. says

    過ってロナルド・レーガン元アメリカ大統領が、アルツハイマー病に罹った事を公表されて、其の病気の一般的な理解が深まったという話を聞いた事が有ります。
    陛下の手術が無事終った事もこの病気や症状に対する今後の、認識に実に大きな影響が有るように思います。
    多くの国民が自主的に病気の平癒を祈念する記帳に出かけています。天野篤先生のプレッシャーも大変なものだったと推察いたします。機会が有れば国民の一人の声として、ご苦労様でしたとお伝え下さい。