心臓病患者さんのためのノロウィルス対策

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かなり強い寒波が日本列島のほぼ全域を襲っています。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

この寒波に合わせるかのように、ノロウィルスが流行しています。

病院などでは多数の死亡者がでているところもあり、十分ご注意ください。


Ilm09_ad13001-s症状は下痢や嘔吐が主なようですが、普通の下痢嘔吐よりも激しく、何日か続くため、心臓病の患者さんたちにはとくにご注意戴きたく思います。

というのは強い下痢と嘔吐が発生しますと、まもなく高度の脱水になります。

たとえばいつも手の甲にある静脈が良く見えている方の静脈が見えなくなっているとか、舌が乾いているなどがあれば要注意です。

すると血圧が下がって、血液も粘っこくなり、もともと心臓病がある心臓には一般の健康者以上に大きな負担になりかねません。

また心臓手術後とくに人工弁や不整脈などのためにワーファリンを飲んでおられる方々には、急に強い脱水となれば血栓ができ、そのための二次的な脳梗塞などの恐れが出て来ます。

さらに嘔吐が強くIlm09_af06004-sて、あまり食べられない状態が何日か続けば、日頃ワーファリン(血栓予防のお薬です)を服用しておられる患者さんでは、その効き目が極端に強まることがあります。この場合は脳出血の心配が出て来るのです。毎日の食べ物の中には多少ともビタミンKが入っており、食べるのをいきなり止めてしまうとビタミンKが全然ない状態となって、ワーファリンが強く効きすぎるという事態になりやすいのです。

そういうことで、もし強い下痢や嘔吐に見舞われたとき、まず近くのかかりつけ医に相談し、そのときの状態に合わせて点滴でしっかりと脱水を治すなり、ワーファリンの効き具合がちょうど良いレベルになるようにINR検査を受け、指導してもらったりすることがたいせつです。

それと一層大切なこと、それは予防です。


ノロウィルスは大変伝染力が強く、患者さんの便から他のひとの手につき、そこから感染することが多々あります。またトイレなどで汚物が乾くとウィルスが空気中に放たれ、その空気を吸うと感染します。

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そのため、まずは手洗いやうがいの励行がたいせつです。外から帰れば、直ちにやりましょう。

また人ごみはなるべく避けるのが賢明でしょう。

しかしいったん嘔吐や下痢で発症すれば、上記のようにただちにかかりつけ医か病院へ行って下さい。

治せる病気で命を落とすことはぜひとも避けたく思います。

こうしてノロ対策を万全として、楽しいお正月をお迎えください

 

(2012.12.25.記載)

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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Comments

  1. **** says

    先生のWEBを拝見して、医師と病院は選ばなくてはならないと知りました。
    それまでは、病気になったら地元の大学病院で手術を受けるのが最高の治療と思っていました。
    幸運にも先生に助けていただきました。
    お正月が来るとまた一つ年を重ねます。
    生きている、生かされている、この命の有り難さ!
    天にも地にも拝み伏すほどの喜びです。
    先生どうもありがとうございます。
    風邪が流行っていますので予防に努めます。
    先生もくれぐれもお身体お大切に
    よいお年をお迎えくださいませ。

  2. N.O says

    私も上記の方と全く同感です。
    そしてこのようにピンポイントのアドバイスをwebで伝えて下さる事にも本当に感謝です。術後特有の心配も何となく持っていますので、本当に助かります。先生もどうかお元気でお過ごしくださいね。