心臓手術・事例:マルファン症候群、ベントール手術1年後に腹部大動脈瘤手術

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マルファン症候群の患者さんは結合組織と呼ばれる、内蔵をつなぐ組織が弱いため、平素から定期健診を受けることが大切です。

心臓血管関係では心臓の弁や大動脈全体を定期的に調べれば、いのちを突然落とすことはほぼ防げます。

手間をかけただけ、得られるものが多くなるのです。

下記の患者さんはマルファン症候群をおもちの65歳女性で、1年前に大動脈基部拡張と大動脈弁閉鎖不全症のためベントール手術を受けられました。同時に僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁形成術も受けられました。

大動脈弁がかなり壊れていたため、患者さんご自身の弁を温存するデービッド手術は行わず、確実に人工弁をつけた人工血管で治しました。

術後経過は順調でまもなく元気に退院されました。

それから1年6か月経って、腹部大動脈瘤が健診の度に大きくなり、直径55mmに達し、このままでは破裂の心配が出てきたため、これも手術することになりました。

手術では腎動脈分岐部のすぐ遠位部から両側の総腸骨動脈をYグラフト人工血管で取り換えました。

瘤の中枢側まで大動脈は解離(壁が内外に裂けること)していたため、これを修復補強しながら人工血管を取り付けました。

それから4年近く経ちますが、心臓と腹部大動脈およびその周辺部には問題なくお元気です。ただし胸部大動脈(下行大動脈)が拡張気味なので、丁寧な定期健診を欠かさないようにしています。

このようにマルファン症候群の患者さんは大動脈全体や弁、その他の臓器などを永年守る必要があり、病気離れや医者いらずというレベルの状態は難しいのですが、手間をかけた分だけ安全性や快適性が上がるともいえ、患者さん・ご家族と相談しながらフォローアップを続けています。

iPS細胞が実用化すればまた話が違ってくると思いますし、早くそうなるのを期待していますが、当面、地道な努力が患者さんを守るのです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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