第4回日本ローカーボ食研究会にて

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糖質制限食の科学的研究会として発足した日本ローカーボ食研究会もいつしか第四回目の学術集会を持つようになりました。

今回は技術評論社から昨年11月に出版した教科書「正しく知る糖質制限食」の記念集会でもあり、会場は満杯で活気にあふれたものになりました。

遠方からのご参加もあり、関係者のひとりとして皆様に感謝申し上げます。

このNPO法人日本ローカーボ食研究会は春日井のアカデミック開業医・灰本元先生を軸にして、熱心な内科の先生方、管理栄養士さん、薬剤師さん、技師さんらが集まり今日の発展を迎えたものです。

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第4回研究会はまず灰本元先生から教科書出版の目的と経緯、ローカーボの背景にあること、が解説されました。これまでの糖質制限食の書物には科学性に欠けたものが多く、もし読者がそれを鵜呑みにすればがんが増えたり動脈硬化が悪化するおそれがあり(すでに米国ハーバード大学での本格長期研究で証明済み)危険である、その弊害を防ぐために科学的根拠のある教科書を創ろうとしたことが示されました。

そして教科書を創る過程で、かつては目の敵にしていた炭水化物が人類というより生命体にとって極めて重要な意義をもつことを知り、バランスの取れた総合的視野をもった穏やかな糖質制限食の本ができたことをお話しされました。

さらに糖質制限にまつわる様々な課題や問題点も指摘され、今後につなげる講演でした。

ついで小早川医院の小早川裕之先生がローカーボによる糖尿病治療におけるポイントをお話しされました。多数の臨床経験の中から、糖尿病の重症度に応じたローカーボダイエット、減量できない患者さんの対策、やせすぎの方への対応、長期間安定したダイエットのための考察、薬との関係などを解説されました。血中のインシュリンを増やすアマリールやアクトスなどの薬では体重が増えてしまうこと、逆にインシュリンを減らすメトグルコでは体重を下げることなどは興味深く、また実際の経験の中でうなづけるものでした。太った方には糖質をさらに減らすこと、やせた方には脂肪をもっと摂って頂くことなどもよく整理された対策と思いました。

渡辺病院の中村了先生はローカーボと体重について講演されました。ローカーボは低脂質ダイエットよりも早く効き(月単位)、早く体重を減らせる、しかし長期的(年単位)ではそれらの差がないことを示されました。大変興味深い内容と思いました。

患者さんの状態や食欲や考え方に応じて、こうした方法を使い分けることも良いのではとも思いました。肥満患者さんは単にメタボや糖尿病、脂質異常症、高血圧症、動脈硬化、CKDなどだけでなく、膝関節症、腰椎、逆流性食道炎(GERD)、睡眠時無呼吸(SAS)その他さまざまな問題を合併するため、これからさらに研究を進める必要があることがよくわかりました。その中で糖質制限食は有効な一打になることをあらためて感じました。

DSCN0119ついで私、米田正始がローカーボ食を心臓手術に応用するというテーマでお話ししました。そもそも心臓外科医の私がローカーボに関心をもったのは、心臓手術で患者さんが元気になっても、体調が良い、ごはんがおいしいと不健康な食事を摂ってメタボになるケースが少なくなく、このままではイカン、患者さんを本当に治したとは言えないと思うようになったことがきっかけでした。

つまり心臓手術後の健康管理にローカーボを活用したのですが、この2-3年は手術前の患者さんに応用することで、インオペ(手術不可)患者さんを手術可能にまで改善できることを発見しました。その成果をご披露しました。その内容を近々国際学会等で発表すべく準備しています。

私の講演のあと、平素敬愛する仲間の一人が「今日の発表で先生がやっておられることの意味がようやく判りました」と言って下さり、大変うれしく思いました。

皆さんのおかげで視野が広がり、治療手段が多様になり、患者さんへの恩恵がさらに増える、ありがたい限りです。

管理栄養士の篠壁多恵さんは現在名古屋大学大学院で研究する俊才で、きわめて勉強熱心な仲間です。6か月間のローカーボ食により摂取栄養素、食品群別摂取量の変化を調べられました。その結果、私たちが提唱するゆるやかローカーボ食では赤肉の摂取量が一日10gとわずかに増えるだけで、安全性が高いことが示されました。これはハーバード大学でのアメリカ人の研究成果と同じ方向性のもので、信頼に足りる内容と感心しました。

食の研究は個々の患者さんの生活の中でのことですので、食べたものを正確に把握する努力は大変なものだったと思います。

小又接骨院の村坂克之先生が恒例のアルコールの研究の続編を発表されました。わくわくする思いでこの成果を待っていたのは私だけではなかったものと思います。

糖尿病の患者さんでどのタイプのお酒のどの銘柄で血糖値が上がるか、あるいは上がらないかという実用的な研究で、先生ご自身が短時間で多量を飲まれ、そして血糖値を測るという体力気力が伴わないとできないものと、あらためて感心しました。

その結果、血糖値が下がったアルコールは、ある種の赤ワイン辛口、ある種のロゼ辛口、あるスパークリングワイン、ある糖質ゼロビール、ある種の純米酒など多数ありました。詳細は研究会の抄録をご参照ください。

こうしてキメ細かい、ゆるやかローカーボ食に合ったお酒の楽しみ方がこれから確立すると理想的と思いました。

名古屋大学名誉教授の加藤潔先生はアルコール代謝のご講演をされました。メタボリックマップの中でアルコールの位置がわかり、確かにうまく飲まないと体に悪い、エネルギー利用もおかしくなる、などが理解できました。この研究会で一番学術的な加藤先生ですので、サイエンスの眼を定着させて頂けるのはありがたい限りです。

第二部のパネルディスカッションではむらもとクリニックの村元秀行先生と灰本先生の司会でさまざまなディスカッションが行われました。

医師、薬剤師、栄養士、食品会社、薬品会社の方々がご意見をだされ、内容が充実しており勉強になりました。

痩せすぎの患者さんのダイエットをどうするか、逆になかなか痩せられないケースや長期的に良い状態を保つための工夫、あるいは高齢者の好みつまり脂肪を喜ばれない方々が楽しくダイエットして戴くにはどうするか、などなど熱く議論されました。

個人的には名古屋大学関係の外科や呼吸器外科の先生も出席され、興味深いコメントを下さり、心臓外科とは親戚のような領域ですのでうれしく思いました。

私のつたない研究にも関心をお寄せいただきありがたく存じました。

昼食は皆さん会場付近のレストランなどで摂られたようですが、私は協賛メーカーのローカーボ食品を戴いて勉強かたがた試食させて戴きました。脂肪のうまい使い方によってけっこう満腹感が得られました。

それやこれやで充実した第4回研究会でした。灰本先生、灰本クリニックの皆様、研究会の皆様、はじめご参加の方々に厚く御礼申し上げます。

 

平成26年2月8日

米田正始 拝

 

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