いい心臓・いい人生 【第137号】 第33回日本冠疾患学会にて

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いい心臓・いい人生 【第137号】 第33回日本冠疾患学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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いつの間にか今年も残すところ僅かになりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
この12月13日と14日に岡山で日本冠疾患学会があり参加して参りました。
今回は倉敷中央病院の循環器内科門田一繁先生と心臓血管外科小宮達彦先生が会長で、
「人をつなぐ、医療をつなぐ」というテーマでした。

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循環器病領域は内科系と外科系の競合が厳しい領域の一つと言われて久しいのですが、
今これをハートチームの元にしっかりつなごうという趣旨が含まれる現代的なテーマ
です。私はご縁あって長年この学会の理事を務めさせて頂いておりますが、学会
そのものの方向性が内科と外科の垣根を超えた全面協力での患者さんベスト治療で
あるだけに、この学会にふさわしい立派なテーマと思いました。

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さて初日の合同シンポジウム「心原性ショックに対する補助循環」では主にインペラや
ECMOがらみの補助循環の最近の展開が論じられました。インペラやエクペラなどの強力
治療によってこれまでの不治の急性心不全、ショック状態が治せる可能性を感じました。

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ついで外科ビデオセッション・New TechniqueではInfarct Exclusion変法が近畿大学
の金田敏夫先生から発表されました。30年以上前にトロントから発表させていただいた
方法を強化していただき嬉しいことでした。私は機能性僧帽弁閉鎖不全症FMRに対する
Dual Repair僧帽弁形成術を2つのビデオで検討しました。座長の兵庫医大坂口太一
教授、福島県立医大横山 斉教授からいくつもの鋭いご質問を頂き、皆さん特長がわかり
やすくなったように思いました。内科系の先生もこの発表を聴いて下さっていたようで、
今後内科外科のハートチームでの参考になればと思いました。

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ランチョンセミナー・今CABGとどう向き合うか?では榊原病院の平岡有努先生がOff
the job trainingとして通常のブタ心臓だけでなく肋骨付き資材でのLITA―LAD吻合や
VSP練習、食道肺付き資材で弓部大動脈置換術練習なども行えることを紹介されました。
九州大学の塩瀬明教授はチャレンジャーズライブから始まり国内ローテーションや海外
留学などでも果敢に研修機会を広げて行く努力を紹介されました。昔から伸びるひとは
どんな環境でも伸びるという言葉がありますが、こうした立派な姿勢の人にはより立派
な環境を提供したいし、提供しなければと皆さん思われたのではないでしょうか。

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懇親会でビデオ発表へのご質問やコメントを内科・外科の先生方からもいただき、大変
有意義でした。とくに内科の先生方からの貴重なコメントをいただけたのはこの学会
ならではと改めて感じいりました。

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2日目は実践エコー講座(岸和田市立病院の六尾哲先生)を拝聴しました。広範囲の
テーマを網羅され、良くまとまっており、さっそく役に立つ実用的実践的な内容でした。
コメディカルの皆さんにも有益であったものと思います。

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外科シンポ・オンポンプ対オフポンプCABGは部分参加でしたが、オフポンプもオン
ポンプもその特徴を把握して使いこなせば良い結果に結びつくという印象を得ました。
無理なくできるならオフポンプが第一選択と思いました。オフポンプ先進国日本の
お家芸を皆で安全に進化させて頂きたいものです。

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心臓リハビリ教育セミナー(群馬県立心血管センターの安達 仁先生)は心臓外科医
の私には斬新な視点が多く、累積LDLや異所性脂肪、夜食を控える理由、Insulin
release解除のための食後リハ運動、ACSトリガーと酒・コーヒー・怒り・興奮、心リハ
とCAD早期発見、笑顔の重要性などなど、病気の予防だけでなく二次予防、術後予後の
一層の改善などにも有益と思われました。

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ランチョンセミナー(阿部幸雄先生)は心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症(AFMR)と
心房生機能性三尖弁閉鎖不全症(AFTR)で、冠疾患学会との関連は良くわかりませんでした
が、充実した内容であり良いセミナーと思いました。
AFMRはやや少ない疾患という印象でしたが高齢者MRの原因では最多であり油断禁物です。
AFTRも高齢者では多く僧帽弁と三尖弁はセットでしっかり治す必要があるとのことで、
同感でした。

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午後のポスター・心機能低下では座長(ピンチヒッター)を仰せつかりました。いずれも
興味深い内容でした。私は前日のビデオ発表の解析部分をポスターで解説しました。
さまざまなご質問をいただき、ポスターらしい少数精鋭検討となりました。内科の先生も
お越しくださり、嬉しいことでした。

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岡山はお隣の倉敷に大原美術館があり、学会前に行く機会を得ました。前回ここへ来た
のは小学校4年生の時なので大昔のことでしたが覚えのある絵があり懐かく振り返り
ました。個人的にはモネとエルグレコは圧巻と感動しました。大原美術館の起源(利潤の
社会還元、それも一般市民への還元)や小島虎次郎、印象派の時代進化なども興味深く
思いました。

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学会テーマのように今後の仕事につなげる有益な学会でした。留守を守って下さった
医誠会病院の皆様に感謝申し上げます。

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令和元年12月19日

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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