全国お茶サミット2012

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 2月3日に第16回全国お茶サミットが静岡県島田市で2日間にわたって開催されました。

IMG_0408bこのサミットはお茶の普及やお茶産業の振興のために毎年開催されている、文字通りお茶産業関係者の方々の大きなイベントです。

会長は島田市長の桜井勝郎さん、来賓は静岡県副知事の岩瀬洋一郎さん、農林水産省関東農政局の唐沢武さん、日本茶業中央会理事長の榛村順一さんはじめ、日本のお茶産業の重鎮の方々がずらりと並ばれるものでした。

榛村さんはお茶サミットの生みの親とお聞きしました。

さまざまな展示や講座、闘茶会、緑茶のアロマセラピー、その他のイベントとともにアトラクションと記念講演が企画されました。

私はご縁あってこの会から講演をご依頼いただき、これまで京都大学時代に緑茶ポリフェノールの心臓保護作用を研究した経験や自分自身お茶好きということもあってお引き受けしました。

日本人は毎日の生活の中で「日常茶飯事」という言葉にもあるように、ごく普通にお茶を愛飲していますが、

その医学的メリットについては必ずしも意識されず、お茶の良さも十分には活かされていない感があります。

IMG_0410bそこでまずなぜ心臓外科医の私がお茶のお話をするか、つまりお茶は心臓や全身に良いことから始めました。

 

ついで鎌倉時代から古文書にも記載されるお茶の効用や、生活に溶け込み、

あるいは茶道として芸術の域にまで高められたお茶と健康の歴史を概説しました。

そこで経験的になんとなく体に良いと言われるお茶の医学的科学的メリットを京都大学での実験研究の結果を紹介しながら紹介しました。

緑茶ポリフェノールを前もって飲んでいたラットと飲んでいなかったラットに心筋梗塞をつくり、そのダメージの度合いを調べたところ、

緑茶を飲んでいたラットは心機能、浮腫、組織所見、水分含有量とも緑茶を飲んでいなかったラットより優れていたのです。

お茶に含まれるポリフェノール、カテキン、ビタミンC、ギャバ、βカロチンその他さまざまな物質が健康に良い、そのカギのひとつが抗酸化作用であることを示しました。

抗酸化作用があるとなれば、それは当然、アンチエイジングや美容、がんの予防などにも役立つわけで、そうした効果も紹介しました。

せっかくの機会ですから、心臓病の予防や早期診断、早期治療という観点から、

虚血性心疾患、弁膜症、動脈硬化、大動脈疾患などの注意点を解説しました。

ポイントを知り、危険なサインがでればすぐかかりつけ医や専門医に相談すれば、心臓血管病の多くは治せる、あるいはもっと長く生きられることを示しました。

あわせて緊急の心臓手術や血管手術が必要な状態、ただちに病院へ行くべき状態をお話ししました。

こうしたちょっとした知識をもつことで、いのちが救われることはしばしば経験します。

そういう観点から、放っておくべきでない症状を解説したわけです。

病院へ行くと怖い検査や治療が待っていると考えられる方も少なくないと思います。

そこで苦痛なく冠動脈を調べられるCTや、

仮に手術が必要となっても患者さんにやさしいカテーテル治療、

大動脈瘤へのステントグラフト(EVAR)、

さらに小さい創で社会復帰も早いミックス手術やポートアクセスの心臓手術なども紹介しました。

それらのお話しが終わってから、質疑応答の時間になりました。さまざまな積極的なご質問をいただき、その関心の高さをうれしく思いました。

ご質問のひとつにワインとの比較がありました。赤ワインのポリフェノールは確かに心臓などを守るのですが、それほど効かせようとすればアルコール中毒になりかねない、しかしお茶ならその心配もないことをお話ししますと受けました。

また抗酸化物にいろいろあっても、それぞれ意義があるため、たとえばビタミンCさえ摂っておけばビタミンEやポリフェノールなどは不要かといえば、そうではなく、それぞれ大切であることもお話ししました。

引き続いて「付録」講演としてローカーボ食ダイエットを簡略にご紹介しました。

心臓血管外科の患者さんの治療をする中で、ただ単に手術するだけでは患者さんの長期の健康が守りきれないと思っていました。

もちろん長期間のフォローアップは大切ですし、実践して来ました。

しかしそれだけでは不十分なのです。

それは、心臓手術で心臓が良くなると、患者さんは食欲も増えふっくらと太られることが多々あるからです。

そこまでは良いことですが、そのまま太り続けて生活習慣病やメタボになってしまうとせっかくの心臓手術があだになって新たな病気を造っていることになりかねません。

そこでたまたま春日井市の開業医・灰本元先生と知り合い、

そこで学んだローカーボ食ダイエットが、正しく使えば患者さんたちに大きな恩恵となると思ったわけです。

逆にあやまった使い方では長期的には合併症がおこる可能性があります。

それらをふまえてローカーボ食のやりかたを簡略にお話ししました。

時間の都合でイントロ程度しかお話しできませんでしたが、

多くの方々が健康管理・予防や早期診断早期治療に関心をもって頂ければうれしいことです。

関心がおありの方々は私のホームページ(心臓血管外科情報WEB)や日本ローカーボ食研究会のホームページをご参照頂ければ幸いです。

ともあれお茶サミットの講演は賑やかに閉幕し、私なりにお役に立てたのであれば大変うれしいことです。

お世話になりました島田市お茶がんばる課の戸田さん、当日お世話して下さった中野さん、きれいな司会をして下さったアナウンサーの好本さん、ありがとうございました。

またこの機会を下さった上記の桜井さん、岩瀬さん、唐沢さん、榛村さんはじめ、関係各位に深く感謝申し上げます。

 

平成24年2月4日 米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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2010年1月25日 地震と心臓

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阪神大震災の惨状 阪神大震災から15年が経ちました(写真左)。最近はハイチの地震で何十万人の被害者がでています(写真最下段)。地震は本当にやっかいなものです。一日も早く予知ができるようになればと思います。

地震の原因はよくメディアでも報道されています。地球のマントル対流のためにプレートが移動し、そのプレート同士の接点のところでひずみが蓄積されそれが何かのきっかけで一気に取れるとき、振動が起こって周囲が揺れるのです。そのプレートの動きが心臓の心室心筋の動きに似ていて、解決のための何かのヒントにならないものかと思うことがあります。

心臓の中で全身ポンプの役割を果たす左心室は何層にも心筋(心臓の筋肉なので心筋と呼びます)が折り重なり、ベストの動きができるようになっています。地球で言えば多数のプレートがお互いになじみ、きれいにすべりながら動いているのです。すべりながら動くお蔭で心筋へのストレスが分散され安全に仕事ができるというわけです。もっとも心臓自体はよく動きますので、ミクロの地震をいつも起こしているとも言えるのかも知れませんが。

心臓のプレートがずれて行くために左心室のねじれ運動や血液を送り出している最中の壁のねじれ運動とバチスタ 肥厚(収縮期肥厚)がスムースに行われます。写真右はバチスタ手術の最中の心臓とねじれ運動(矢印)を示します。心筋梗塞のあとや心移植後の拒絶反応のときにはこのねじれ運動が障害されたりパタンが変わったりします。心筋梗塞でやられた部位とねじれ運動の変化が起こる部位が必ずしも同じでないところに絶妙の構造がうかがえます。

つまり心臓全体のバランスの中で局所の動きが成り立っているということです。ねじれ運動や収縮期肥厚のおかげであまりエネルギーを使わずに左心室は血液を全身に送りだせるのです。おもえば地球もひずみの蓄積が地震で取りはらわれなければ地球そのものが壊れてしまうのかも知れません。

ハイチ地震 mirror.co.ukより だからと言って地震をそのまま容認するわけにはいきませんので、やはりエネルギーの蓄積とその放出(つまり地震)の関係やタイミングを正確に測定・予知できることが大切と思います。どういう所見が出てくればまもなくプレート境界部でエネルギー放出が起こるのか、ということですね。

逆に、地震の予知ができる技術が進歩すれば、心臓のエネルギー効率もより改善でき、心不全などの治療にも役立つようになる、などと考えるのは心不全や心臓病の治療に命をかけて来たものの性癖とでも言えるのでしょうか。ともあれ地震の被災者の方々のご冥福や一日も早いご回復を祈らずにはおれません。

 

2010年1月25日 米田正始

 

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