3b) 心不全の手術について――ネバー・ギブアップ

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心不全とは心臓が十分動けなくなる危険な状態です

◾️心不全とは

まず心不全とは心臓が十分に血液を全身に送れない状態で、これは心臓に血液が戻りにくい状態も含まれます。

少し専門的には前者を収縮機能不全、後者を拡張機能不全といいます。

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また正確には左心不全(左心=左心室と左心房)と

右心不全(右心=右心室と右心房)があり、

しばしば両心不全(=左心不全+右心不全)となります。

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◾️心不全の治療は

心不全は原因によって治し方もちがってきます

心不全にはさまざまな原因があり、その結果起こった心臓の不全状態ですので、病名というより症候群名です。

そのため心不全の治療といっても、まずその原因を治すことが肝要なため、治療法もその原因疾患によって異なります。

 心不全の治療方法の中に手術があります。昔は薬中心だったので、現在もなじみが薄いという方々もありますが、外科治療つまり心臓手術は間違いなく心不全の治療法の一つです。

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たとえば心筋梗塞などのために心不全になったのであれば、心臓の虚血(つまり冠動脈が狭 くなるか閉塞します)を治したり、心筋梗塞のために壊れた部分を修復するあるいは守ることが心不全の治療になるわけです。

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弁膜症のために心不全になったのであれば、その壊れた弁を治すあるいはそのためのうっ血などを軽減するところから治療が始まります。

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心筋症 (特発性心筋症心筋炎サルコイドーシス左室緻密化障害など)が原因で心不全になったケースでは、できるだけ心筋への負担を減らす、全身への負担を減らすことなどが治療の主体になります。

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◾️心不全に対する心臓手術とは

ここで外科治療つまり手術でどういうことが心不全の患者さんに対してできるかを述べてみます。

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オフポンプ冠動脈バイパス手術の出来上がり図です心不全が心筋梗塞によって起こった場合:

冠動脈の狭窄があるためできるだけ冠動脈バイパス手術で虚血を治し、

すでに心筋がダメになった左室壁に対しては適応があれば(つまりやった方が患者さんに役立つ時に)左室形成術(ドール手術セーブ手術あるいはバチスタ手術など)を行います。

今ひとつ重要なのは、心不全になると僧帽弁閉鎖不全症がよく起こるため、それが強ければ僧帽弁形成術で治すことです。ここではとくに私たちのPHO法が活躍します。

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心不全が弁膜症によって起こった場合:まずその原因になった弁を修復(弁形成術で)または人工弁に取り換え(弁置換術で)します。

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しかし左心室の心筋がすでに壊れていて戻らない場合は左室形成術によって修復することも時にあります。重症心不全の中には外科手術で改善できるものがあります

心不全が心筋症によって起こった場合: 左室の壊れた部分を左室形成術で修復したり、左室全体が大きくなりすぎて心不全になったタイプでは左室形成術でその大きさと形を整えます。

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また心不全のためにしばしば僧帽弁閉鎖不全症が起こるため、それが強ければ僧帽弁形成術を行います。

場合によっては僧帽弁形成術のみ行うこともあり、それは患者さんの状態を詳しく調べてケースバイケースで行います。

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しかし上記の外科(心臓手術)・内科治療でどうにもならないほど心臓が壊れている心不全の場合は、補助循環(人工心臓)さらには心移植が必要となります。

これは移植センターや大学と相談しながら、場合によっては転院して頂いて治療を受けていただけるよう進めます。

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◾️まとめ

こうして全体を見ますと、

心不全の治療の中で、内科的治療(お薬や点滴その他)ではカバーできないところを外科的治療(心臓手術)がになっており、

うまく組み合わせてチーム医療として考えるのが患者さんを救うために大切であると言えると思います。

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◆患者さんの想い出:

Aさんは60代の男性です。長年のタバコのためもあって、肺が悪く、しかも心筋梗塞を起こして心臓とくに左室がうんと弱り、心不全のため来院されました。

このままでは永く生きられない、そういう状態でした。左室が壊れて大きくなり、かつ形がくずれたため虚血性僧帽弁閉鎖不全症という弁逆流まで合併し、心不全は一層重症化しておられました。

こうした問題を解決する心臓手術にこれまで取り組み、新しい手術法を開発して来ました。それをもちいてぜひAさんに元気になって頂こうと考えたのですが、肺が悪く、一秒率が40%と、手術できないレベルでした。

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しかしこのままではダメという状態になったため手術に踏み切りました。

手術では壊れた左室を左室形成術で治すことも考えたのですが、まだ壊れた部分にもまだ生きている心筋が結構あり、これは切除したり左室形成術を行うのは不利と判断できました。

そこで僧帽弁を私たちが開発した乳頭筋適正化手術(PHO法)で手直しつまり僧帽弁形成術しました。それから冠動脈バイパスを3本つけ、まだ生きている心筋がもっとパワーを回復できるようにしました。

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手術はスムースに終わりましたが、肺が悪いため、人工呼吸器からなかなか外れず、苦労しました。

せっかく人工呼吸器からはずれても、すぐ痰がつまり肺がひしゃげて無気肺になるためマスクで陽圧をかけようとしたのですが、患者さんがそんなのは要らないと受け容れてくれないため困りました。結局、気管切開を行うことで合意に達し、それで安定化を図り結局元気になられました。

その間は、肺が急に悪くなって酸素が不足し、血圧が低下するというエピソードが何度かあり、苦労しました。肺が良くなってからは問題なく元気になられました。

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Aさんは元気に退院して行かれました。その後しばらくは外来に通院しておられました。

しかし外来に来られなくなりしばらく時間が経ちました。Aさんがどうしておられるか、心配になり電話してみたところ、ご本人さまが出られ、しらばくは近くの病院に通院していたが、その担当の先生が異動され、どうしようかと思っていましたとのことでした。

さっそく私の外来に来ていただきました。Aさんの心臓はその後も回復を続け、心機能もまずまず良好、僧帽弁も逆流なしで良い状態でした。

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Aさんのようにベストとは言えない環境で暮らしている方は少なくありません。そうした方々にも治療の恩恵が届くよう、これから努力して行きたく思いました。

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