事例 大動脈弁形成術

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患者さんは17歳男性。

大動脈弁閉鎖不全症 III-IV度、二尖弁です。

患者さんの年齢や希望を考慮して大動脈弁形成術を施行しました。

8年後も健康な日常生活を送っています。

 

81_21.III度以上の大動脈弁閉鎖不全症が認められます。

高校生で機械弁の大動脈弁置換術AVRは毎月病院通いとなるのはかわいそうですし、

生体弁は成長期でカルシウムの代謝が盛んなため長持ちしません。

 

ロス手術では肺動脈弁のホモグラフトが日本では入手困難という問題と長期成績に疑問のデータもあるため選択肢からはずしました。

大動脈弁形成手術がこの患者さんに最も適切な術式との判断に至りました。

 

822.大動脈弁尖の余剰部分を形成するため評価とデザインをしているところです。

弁の形を直すことは難しくないのですが、それが長持ちするように、耐久性のあるものにすることは、必ずしも簡単ではありません。

組織そのものが弱い、あるいは病気で壊れていることがしばしばあり、肉眼では見えないレベルの病変も少なくないからです。

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83_33.交連部の形成中です。

この患者では交連部に小穴があいていたため、

弁中央部ではなく交連部で形成し、

穴の部分を補強しました。

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844.問題にならない程度の軽微な逆流のみ残し大動脈弁形成は完了しました。

もうすぐ術後10年になり、この大動脈弁形成術は患者さんに役立ったと言えるかもしれません。

青春時代をワーファリンなしで行けるというのは様々な点で患者さんに大きなメリットがあります。

 

現在ゴアテックス糸を用いた弁の形成・補強や自己心膜・ゴアテックスをもちいた弁の補充その他の工夫が報告されています。

まだ僧帽弁形成術ほどの完成度には至っていませんが、わたしたちも海外の仲間たちの経験と私たちのこれまでの大動脈弁形成術のデータを突き合わせ、より安定度の良い自己心膜による弁形成術を進めています。


それと並行して、ポートアクセス法(創が小さく仕事復帰も早いです)をもちいて大動脈弁形成術や大動脈弁置換術を行うことも推進しています。患者さんはご自身の仕事や生活にもっとも適したものを選べるわけです。

今後さらなる進展が望まれる領域です。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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