最終更新日 2025年9月19日
1.虚血性心筋症とは
2.心筋梗塞後に心臓のどこが壊れる?
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心筋梗塞が起こると、左心室の一部が壊れて動かなくなります。すると心臓全体が大きく変形し、やがて 「リモデリング」と呼ばれる悪い形の変化 を起こします。
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左室が 丸く拡張 → ポンプ効率が低下
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僧帽弁が歪む → 弁がしっかり閉じず、逆流が発生
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虚血性僧帽弁閉鎖不全症 へ進行し、心不全が悪化
胸痛がなくても進行することが多いため、注意が必要です。
*左室の形態変化により発生する虚血性僧帽弁閉鎖不全症も重要な合併症です。
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3.虚血性心筋症の症状
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代表的な症状は以下です:
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運動時の 息切れ・動悸
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進行すると 胸痛・起坐呼吸(横になれない)
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下肢のむくみ
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重症では 失神や呼吸困難
この病気の怖いところは、患者さん自身が気づきにくいまま進行する 点です。
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4.虚血性心筋症の治療法
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内科的治療
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心不全治療薬(ACE阻害薬・ARB・β遮断薬・SGLT2阻害薬など)
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リハビリ・運動療法
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ASV(非侵襲的呼吸補助)
これらで心不全の症状を和らげます。
外科的治療
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僧帽弁形成術:虚血性僧帽弁閉鎖不全症を合併している場合に有効
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冠動脈バイパス手術(CABG):虚血を改善し心筋を守る
心筋そのものは再生しませんが、「残された心筋を守る・回復させる」 ことが治療の目標となります。
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5. 最新の研究と治療の展望
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左室形成術:従来の「STICHトライアル」では効果が過小評価されましたが、専門施設では良好な結果が得られています。
再生医療・血管新生治療:日本ではまだ研究段階ですが、海外(例:タイ国際心臓病院など)では臨床応用が進んでいます。
ハートチームでの治療選択:内科・外科・リハビリ科が連携して最適な治療法を選ぶことが大切です。
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6. まとめ
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虚血性心筋症は 心筋梗塞などで心臓の筋肉が壊れた状態。
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自覚症状が少ないまま進行し、心不全や僧帽弁逆流を引き起こす。
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薬・リハビリ・外科手術 を組み合わせれば改善が可能。
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左室形成術や新しい再生医療も選択肢に。
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早期発見と適切な治療 が命を救います。
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➡ 関連記事はこちら
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[心筋梗塞後の心室中隔穿孔(VSP)]
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[僧帽弁閉鎖不全症と治療法]
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患者さんの声はこちら
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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