虚血性僧帽弁閉鎖不全症とは

Pocket

◾️虚血性僧帽弁閉鎖不全症とは

.

これは心筋梗塞のあとなどに起こる僧帽弁の逆流です。特に虚血性心筋症つまり左室が壊れてあまり動かなくなる時によく起こります。

.

<僧帽弁が逆流しているという意味では一見、弁膜症です。

しかしその本質は心室(ポンプ室のことです)とくに左室の病気です。

.

つまり弁そのもの(弁尖や腱索など)には問題なく、

心筋梗塞や虚血のために左室の動きや形に異常をきたし、

弁をささえる糸(腱索)が横方向に引っ張られて弁が閉じなくなるのです。

この引っ張られる現象をテザリングと呼んで、私たちはこれを治すべくスタンフォード留学時代から長年研究を重ねて参りました。

.

虚血性僧帽弁閉鎖不全症は機能性僧帽弁閉鎖不全症のひとつとして位置づけられ、原因が上記のように心筋梗塞などのような虚血によるタイプを指します。

.

◾️虚血性僧帽弁閉鎖不全症の症状は

.

症状は運動時の息切れや動悸などが多いのですが、病気が進むと安静時や横になる時などにも息苦しくなります。これは起座呼吸と呼ばれ、危険な症状です。また虚血がある場合は胸痛なども起こります。

.

◾️虚血性僧帽弁閉鎖不全症の治療は?

.

治療はまずお薬や心臓リハビリなどの内科的治療が行われます。ASVと呼ばれる加圧マスクも役立つことがあります。近年はMクリップというカテーテル治療が試みられることもあります。

これらでは治せなくなれば外科手術が役立つことがあります。

.

虚血性僧帽弁閉鎖不全症はかつては難病と言われましたが現在はエキスパートチームならかなり治せる病気になりました。

その治療の詳細は虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術のページをご覧ください。

.

メモ1: この病気は永い間、不思議な病気と思われて来ました。

研修医時代の私には中国西部、シルクロードの幻の湖と言わ IMRとロプノール湖れたロプノール湖のように、消えては現れる不思議なものに思えました。

.

たとえば心筋梗塞後の患者さんが強い僧帽弁の逆流があるというので入院していただくとします。

すると入院して減塩食(一日6g!です)や温度変化の少ない快適な環境で、仕事などのストレスからも解放され、もちろん薬や点滴などの効果もあり、患者さんは次第にお元気になられます。

それは良かった、じゃ退院してください、ということで自宅に戻られます。

しばらくするとまた心不全が悪化し、息苦しくなり下肢がむくんだりして外来へ。

調べてみると強い弁逆流が再発している。

やむなく入院、治療へ。

この経過を繰り返すのです。

.

その不思議な状態を説明してくれたのが上記のテザリングつまり弁尖を引っ張る現象だったのです。

要するにテザリングがあると、左室がちょっと張った時には弁逆流が一気に増えるわけです。

テザリングと弁逆流.

右図で真ん中の状態が右端の状態になるときですね。

.

そのため私たちは心臓手術を行うときにはこのテザリングをきれいに解消するようにしています。それは前尖はもちろんですが後尖も治すことが大切なのです。

前尖だけ治す従来法では再発率が高くなります。

 

この詳細はPHO(乳頭筋最適化術)のページをごらんください。また開発の歴史もご参照ください。

.


メモ2: 虚血性僧帽弁閉鎖不全症 Fotosearch_CCP02022における心カテーテル検査の盲点。

.

どんな優れた方法にも盲点や弱点はあります。

カテーテル(右図)はかつては心臓の最終検査として存在していました。

心エコーはそのための準備検査という位置づけでした。

.

しかしエコー(左下図)の精度があがり、かつ病気の本態 Fotosearch_CCP03019が次第に解明されるにつれて次第にこの疾患の検査の中心はエコーに移っていきました。

.

カテでは圧と造影時の影絵情報しか得られず、精密なジオメトリーや血流、生理学的データはむしろエコーより劣ることが知られるようになったからです。

.

さらに心エコーはいつでもどこでも何度でも撮れるため、外来その他で患者さんが一番苦しいときにすぐ検査できます。だから僧帽弁閉鎖不全症が強い状態をキャッチできるのです。

一方、カテーテルはしばしば入院し少し落ち着いてから検査となることも多く、その時にはすでに僧帽弁閉鎖不全症が軽くなっていることもあるのです。

.

医学の進歩、時代の進歩を常に念頭におき、その時代における患者さんへのベスト治療を行う、これが大切です。

.

この意味で関係する仲間全体のちからで患者さんの治療にあたるハートチームはもっとも理想のかたちと思います。

 

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

.

.

Pocket

-----------------------------------------------------------------------
米田正始   医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
-----------------------------------------------------------------------