④三尖弁置換術について―弁形成を成功させることが患者さんのために

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三尖弁置換術、つまり人工弁で三尖弁を取り換える手術は現代もやむをえない場合の選択肢という位置づけです。

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機械弁の一例です。ある種のカーボンでできていて血栓がなるべくできない構造になっています

 

それは人工弁が機械弁の場合、三尖弁の血流は右心系のためか左心系の僧帽弁よりも緩 慢で血栓ができやすく、

その分、ワーファリンもより強く効かせる必要が生じるからです。

 

その結果としてワーファリンの副作用たとえば脳出血などが起こりやすくなるという報告が多いです。

 

tissue_valveその一方、生体弁も三尖弁の位置に入れると、僧帽弁の生体弁よりも必ずしも長持ちしないという報告もあり

三尖弁弁置換術は長期の成績に安定感が乏しいと言われています。

 

そこで私どもはこれまでの三尖弁形成術では形成しきれないケースに対しても極力、三尖弁置換術を回避し、形成術が成り立つよう工夫を重ねています。

というのは重症の三尖弁閉鎖不全症ではうっ血性肝硬変や肝機能障害のケースが多く、この弁を何とかしないと肝不全で亡くなることが多いからです。

三尖弁置換術には僧帽弁形成術での経験やノウハウが役立っていますが、同時にこの弁特有の状況を勘案して心臓手術を行うようにしています。

 

なお私たちは三尖弁手術にあたっては原則として心拍動下に、つまり心臓を止めずに行います。

これはやむなく三尖弁置換術になる場合も同様です(事例: 肝硬変で三尖弁置換術へ)。

それが完全房室ブロック(脈が遅くなりペースメーカーが必要となります)や脳梗塞を含めた合併症の予防にも役立つからです。

 

あらゆる方法や経験、技術を駆使しても形成術が成り立たないときに限定して、三尖弁置換術を行います。

弁置換が不可避な場合、現在の方針ではできるだけ生体弁をもちいています。

生体弁の中でも背丈の低いデザインで、右室の壁に人工弁が当たらないようにします。

将来、カテーテル人工弁(TAVI)で三尖弁置換術ができるようになれば、再手術は回避あるいは回数を減らすことが可能となるでしょう。

やはり、どんな場合でもあきらめてはいけないのです。


◆患者さんの想い出:

Aさんは20代後半の男性です。こどものころ、感染性心内膜炎(IE)のため他病院で三尖弁置換術を受けておられます。その後その生体弁が壊れたため再手術で三尖弁置換術を受けられました。

その後また弁は壊れたのですが、Aさんはもう心臓手術は嫌だとお薬で無理をして何とかだましだましで生活して来られました。

しかしいよいよそれも限界に達し、肝臓も弱りだしたころに私の外来へ来られました。
さすがに20年も経っているため人工弁(生体弁)はもう全然作動せず、思い切り逆流していました。

手術では古い人工弁を切除し、新型の生体弁を縫い付けました。

せっかく生体弁を入れる、しかも20代の若い患者さんですから、ぜひ心房細動は取ってあげたいと考えました。そこで左房も開けて右房ともども完全メイズ手術を行いました。

巨大化していた右房は私たちの心房縮小メイズ手術の方法でうんと小さく形成しました。

3度目の三尖弁置換術でしたが、術後経過は順調で、正常リズムで元気に退院して行かれました。

外来でご家族とともにお話しする機会が何度かあり、ここまでの患者さんへのサポートに感謝するとともに、明るさを取り戻された患者さんの笑顔を大変うれしく思います。

Aさん、次のオペはたぶんTAVIのカテーテルで入れて、切らずにできるようになるでしょう。乞うご期待です。

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