③ペースメーカーケーブルによる三尖弁閉鎖不全症―意外に知られない重病

Pocket

Q: ペースメーカーのケーブルが三尖弁閉鎖不全症をおこすことがあると聞きましたが? ペースメーカーSJM 本体

 

A: 永久ペースメーカー(写真右)のリード線がしばしば三尖弁の動きを妨げ三尖弁閉鎖不全症を引き起こすことは EBM(証拠に基づく医学)でも知られています。

じっさい、三尖弁閉鎖不全症の原因のなかで、もっとも多いもののひとつと言われています。

このように三強い三尖弁閉鎖不全症が起こると肝臓がうっ血し徐々に肝硬変になってしまいます尖弁が逆流すると心不全が起こり、さらに肝臓がうっ血して肝硬変になり危険な状態に進行することがあります。

 

単に通常の三尖弁形成手術をしただけでは逆流は十分には治らないことがよくあります。

PM-TRに対するTAP私達はこれを解決すべく検討を重ねました。

この数年はリード線の位置を移動し安定化したうえで形成して全例、弁形成で良い成績を出しています(右図)。

 

心臓手術・事例: IHSSと大動脈弁狭窄症とペースメーカー三尖弁閉鎖不全症を根治)

 

さらにリード線に三尖弁の腱索が巻きついて形成が困難な状況でも巻き込まれた腱索を切除しゴアテックス人工腱索を用いることで形成ができるようにしています。

 

実際、三尖弁置換手術しか方法がない、と言われてあちこち探し Ilm17_bc03008-s歩いた結果、私たちのところへ来られて、無事三尖弁形成術で心臓も肝臓も良くなり元気と安全を回復された患者さんが何人もおられます。

(ペースメーカー三尖弁閉鎖不全症 手術事例1)

(ペースメーカー三尖弁閉鎖不全症 手術事例2)

最近も愛知県内だけでなく鹿児島、宮崎、沖縄などからも同様の方が来られ、手術成功し無事元気に帰宅された患者さんがありました。

お便り20をご参照下さい。

 

pacemaker TR b手術を受けて元気になられた患者さんのお話でも日本心臓ペースメーカー友の会の仲間に同じ病気で肝臓が悪くなり困っている方があるとお聞きしました。

治る病気ですのでひとりで悩まず、是非ご相談戴ければと思います。

 

これらの比較的複雑な形成は、僧帽弁形成術の技術蓄積を活かして形成を完遂できるようにしています。

ほとんどの場合、三尖弁の形成は心臓が動いた状態で行い、心臓への負担を軽くするように努めています。

 

複数のリード線が三尖弁を逆流させている状態でも形成はできています。

ただし弁(葉)そのものが破壊されたり強く短縮するなどの変化をきたした場合は形成に限界が生じると考えます。

ペースメーカーを入れたあとの三尖弁逆流でお困りのときは早めにご相談されることを勧めます。ビリルビン(黄疸のときの黄色い成分)の値にご注意を

 

手術前にすでに肝臓がすっかり悪くなったケースでは肝臓が手術の負担に耐えられないため危険が高くなるからです。 

たとえば総ビリルビンが2を超えれば要注 意、3になれば急ぎます。

肝臓の力が落ちたと言われましたら早めにご相談ください。

 

CRT-Dつまり埋め込み型除細動器と両室ペーシングの両方の機能をもつ優れものペースメーカーでも同様に三尖弁閉鎖不全症が起こることがあります。

この場合も同じ手術法で対処できます。(手術事例ー準備中)

 

三尖弁位の人工弁(つまり三尖弁置換術)の長期成 三尖弁輪形成術後績は機械弁・生体弁ともまだ満足できるレベルにはなく、弁形成手術を行うことが患者さんにとってメリット大と考えられます。

写真右はペースメーカーケーブルをきれいに処置しつつ三尖弁形成術を行ったものです。

 

なおかつて弁置換を受けた方や、弁形成が不可能なほど弁が破壊された方には、年齢などに応じて生体弁を考慮することもあります。

将来はカテーテルFigure1生体弁(いわゆるTAVI)で再手術を回避できる可能性を考えてのことです。

 

左写真は代表的なTAVIの弁、サピエンです。

 

いわゆる valve in valve (バルブインバルブ)と呼ばれる、壊れた生体弁の中に新しい生体弁を入れ込んで新調する方法で、まだあまり報告はありませんが、私がヨーロッパの友人に聞いたところ、すでに10例以上やっていて結果は上々とのことでした。

IMG_0852TVP
また、肝臓などが弱っていることがよくある病気ですので、できるだけ患者さんにやさしい手術をという視点から、なるべくミックス手術とくにポートアクセス法(右写真はその傷跡です、ほとんど見えません。正中の薄い傷跡は昔の手術の傷跡です)をもちいるようにしています。

 

痛みが少ないため術後経過が良いという印象をもっています。


◆患者さんの想い出:

health_0171
前向きで熱心な、いろんな事を教えて下さる方でした。ますますお元気で!

Aさんは80代の男性です。三尖弁閉鎖不全症のため大学病院から紹介されて私の外来へ来られました。

以前に除脈のためペースメーカーを入れ、それから上記の三尖弁閉鎖不全症が発生し、肝臓のうっ血のため肝機能障害にいたり、このままでは肝硬変になって命にかかわる状態でした。

ペースメーカーのケーブルは三尖弁を通過して右室に到達するのですが、ときに三尖弁を圧迫し、弁が閉じなくなって逆流(閉鎖不全)が発生するのです。その場合、逆流は通常高度です。この場合の弁形成は難しく、かといって人工弁は良くないため難題と考えられています。そのため大学病院から紹介されたわけです。

A313_070
肝臓と三尖弁・右房は目と鼻の先で影響を受けすいのです

私たちは良い方法を持っているため手術を行いました。私たちのルーチン通り、人工心肺を用いて、心臓は動かしたまま、弁をケーブルからはがしてからそのケーブルを弁輪に埋め込み、弁がきれいに作動するのを確認してからリングで弁輪を形成しました。

逆流はほぼ消え、肝臓の腫れも急速に治りました。肝機能障害も徐々に正常化し、患者さんはお元気に退院して行かれました。

日本ペースメーカー友の会には同じような三尖弁閉鎖不全症で困っている仲間がいる、先生ぜひそういう人たちを助けてやって下さいとのことでした。

今後も啓蒙活動を地道に行って、ペースメーカー三尖弁閉鎖不全症は治せる病気であることをお知らせしながら患者さんの治療に努めたく思います。Aさん、また外来で雑談しましょう。

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

1.弁膜症 の扉のページへもどる

Pocket