患者さんは19歳の男性です。
東京の大学に通っておられる中で、検診で大動脈弁の二尖弁と逆流(大動脈弁閉鎖不全症と呼びます)を発見・診断されました。
心臓に負担がかかって来ており、危険な症状も出ているため手術を勧められ、
それから患者さんは自分の理想の病院を調べられたそうです。
大動脈弁形成術を求めて探す中で、私のホームページ心臓血管外科情報WEB(註:現在の名称は心臓外科手術情報WEBです)を見つけられ、メールを送ってこられました。
ご本人さまはもちろん、ご両親はじめご家族と十分な相談のうえ、ハートセンターにて大動脈弁形成術を行い、うまく行きました。
二尖弁は経験豊かなチームなら弁形成ができるため、さまざまな方法の中から最も適したものを選んで形成しました。
二尖弁のかみ合わせがきれいになった結果、手術前には高度だった逆流も術後は無視できるほどに治りました。
大動脈はかなり小さかったのですが、弁形成術のおかげで狭窄症(狭くなること)も起こりませんでした。
もしも弁置換なら不十分なサイズのものしか入らなかった状況でした。
良好な予後が期待されますが、二尖弁の常として、弁と大動脈の両方を注意深く定期健診することが大切と、ともに決意しました。
こうして患者さんの青春時代をワーファリンなしで過ごせるお手伝いができるのは大変うれしいことです。
術後経過も良好で術後9日目に元気に退院されました。
米田はその日はタイ国へ手術に出張しており、お祝いを言えなかったため、
お詫びとお祝いのメールをお送りしたところご両親からお返事が来ました。
それが下記のメールです。
**********************************
米田先生
メールをいただきありがとうございます。
本来なら、こちらからお送りせねばならぬところ
先生よりいただき大変失礼いたしました。
術後の回復も順調で、先生のお帰りを待つことなく
退院させていただくことになりました。
自宅に帰り、ベースギターを少し弾いたりして
通常の生活に少しずつ戻しつつあります。
本人は一刻も早く関東に戻りたいようです。
とはいえ、まだ疲れやすく無理もできないので
こちらに居る間は、ゆっくりさせたいと思っております。
大学の検診で、この疾病が発見されたとき、
治療は弁置換(機械弁)だというという説明を受けましたが、
本人として、その治療を理解するということ以外に
他の治療をも模索し、米田先生にめぐり会えたことは、
本当に幸運であったと思います。
弁形成という希望通りになったことはもちろんですが、
たとえ、人工弁の選択になっていたとしても
納得いく治療を受けることができたという気持ちは
今後の人生においてとても重要なことであるからです。
なぜならば、心臓との付き合いは一生であり、
ここで自分自身がしっかり受け入れられる結果でないと
ずっと疑問を持って生きていかねばなりませんから。
米田先生とのメールのやり取りや
診察時のわかりやすい表現でご説明いただいたことで
彼のみならず、家族も安心して手術に臨めました。
お恥ずかしい話ですが、毎日泣いていた母は、
先生にお会いしてからはやっと現状を受け入れることが
でき、それ以来、前向きに考えるようになりました。
(中略)
今後ともよろしくお願い申し上げます。
患者さんからのお便り・メールへもどる
心臓手術のお問い合わせはこちらへ
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。