二尖大動脈弁のガイドライン

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米国ACC学会とAHA学会の合同でつくられた2014年度版ガイドラインが発表されました。

二尖弁での治療適応について、簡略にまとめられています。

以下にそのガイドライン概要と、日本語訳を示します。

 

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クラスI 1.二尖弁患者でバルサルバ 図 ルート解剖洞か上行大動脈の径が5.5㎝を超えるときバルサルバ洞の形成か上行大動脈の置換が適応となる

クラスIIa 1.二尖弁患者でバルサルバ洞か上行大動脈の径が5㎝を超えて解離の危険性がある場合、つまり大動脈解離の家族歴があるか大動脈径が年間0.5㎝以上のスピードで拡大するときもバルサルバ洞の修復か上行大動脈の置換は理に適っている

2.ASかARのため二尖大動脈弁の手術を受ける患者が上行大動脈径4.5cm以上あれば上行置換をするのが理に適っている。

 

ここでクラスI とは手術が必須であるという意味で、

クラスIIa は手術が勧められるという意味です。

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以前から二尖弁の患者さんの大動脈基部から近位弓部大動脈にかけてはマルファン症候群の患者さんたちと同様、結合組織が弱く一歩早めに治しておくのが安全と安心に直結すると考えられてきました。

この新しいガイドラインでもそれがしっかりと盛り込まれ、今後二尖弁の患者さんたちの手術タイミングが適正なものになり、手遅れでいのちを落とすなどの悲劇が起こらなくなることが期待されます。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り81: 大動脈二尖弁と上行大動脈、僧帽弁の患者さん

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大動脈二尖弁はそれ自体では必ずしも病気とは言えないのですが、大動脈弁の弁膜症を起こしやすいため、注意深いフォローアップが必要です。

同時に大動脈基部つまり大動脈の根っこの部分から上行大動脈にilm17_da05003-sかけて、大動脈の壁が弱く瘤になりやすいため、マルファン症候群のような結合組織疾患に準じたフォローアップが必要です。

これによって長期の安全性が確保しやすくなるのです。

下記の患者さんは大動脈二尖弁のため、お若い年齢でも大動脈弁閉鎖不全症と上行大動脈瘤を発症し、

さらにIEつまり感染性心内膜炎を合併したため僧帽弁閉鎖不全症も発生し、

このままでは心不全悪化や大動脈破裂などの懸念が強まるため来院されました。

この病気をきちんと治してくれる病院をもとめて、九州から来て下さいました。

詳しく調べますと、大動脈弁と僧帽弁の両方と、上行大動脈から弓部大動脈の一部までを治す必要があることがわかりました。

時間がゆるせば弁は両方とも形成か再建とし、上行大動脈は人工血管で置換したかったのですが、僧帽弁は前尖つまり主要パーツが全体に壊れているためその形成術も比較的複雑で、上行大動脈も弓部大動脈の一部まで治す必要があり、大動脈弁は破壊が高度であることもあって短時間で確実に生体弁で治しました。

とくに僧帽弁形成術では穴をパッチで治し、ゴアテックス人工腱索を8本立てて逸脱を修復しました。

以上をミックス手術で、小さい創で行いました。若い患者さんが創を気にせず楽しく暮らして欲しいからです。

術後経過は良好でまもなく元気に退院されました。九州から外来へ定期健診に来て下さいますが、元気いっぱいのお姿をみてうれしく思っています。

大動脈弁が将来壊れたら、TAVIという折りたたんだ生体弁をカテーテルでもとの弁の中に装着することで再手術が回避できるよう、極力大きな生体弁を植え込みました。

以下はその患者さんとそのお父さんからのメールです。とくに患者さんのお便りは他の患者さんたちのお役に立つようにという気持ちで書いて下さいました。

*******患者さんからのお便り*******

私は38歳の男です。

お便り81です生まれつき二尖弁と診断され、定期的に地元や他県の病院で診察を受けてきました。

 
将来的に手術も必要だと言われてましたが、自覚症状もなく、元気でしたし、運動も普通にしてきました。

歳をとるにつれ、大動脈弁の逆流もひどくなるし、大動脈も太くなってきてて、早めに手術したほうがいいと言われましたが、手術するのも怖くて、自分の病気にも向きあう事ができませんでした。

 
やはり手術するなら心臓専門の病院がいいと思い、パソコンから米田先生のホームページを見て、私の病気の事を米田先生にメールしたところ、返事をいただき、平成24年7月に診察をしました。

1日の検査で、治療方針を決めていただき、病気の症状など、丁寧に詳しく説明してもらって、その時はじめて米田先生に全てを任せようと決心する事ができました。

検査の結果は、大動脈弁閉鎖不全症、僧房弁閉鎖不全症、大動脈瘤です。大動脈瘤の太さは5センチでした。

手術は平成24年8月21日に決まり、大動脈弁置換術、僧房弁形成術、人工血管置換術をして、無事に手術は終わりました。

術後は、思っていたほど痛みもなく、2日目には歩いたり、食事も普通にできました。名古屋ハートセンターの看護師さんやドクターの方も親切な方ばかりで、入院中も不安なく過ごせました。

退院は8月31日で、入院から12日で退院する事ができました。

一度の手術で、三箇所を治す難しい手術みたいでしたが、現在の経過も順調です。

手術して約半年になりますが、仕事や運動などしたり、手術前よりあきらかに元気に過ごしています。

傷口も小さく綺麗なので、米田先生に手術していただいて本当に良かったと思います。心から感謝しています。

先生には新しい命をいただきました。

 

*******患者さんのお父さんからのメールです********

熊本・**市の****です。

ご無沙汰致しております。
次男の経過が良好なのも、先生ならびにスタッフ皆様の御蔭と感謝申し上げております。

病気発覚時に、開業医病院では処置できずに総合病院に転院した訳ですが、経過観察だけが続くだけで
ムンムンとした日々を過ごしていました。

私の二十五年前の経験から病院と先生は、自分の納得した上でお願いしたが良いと思っておりましたので、
ネットで全国の病院と先生を調べました。

こういう事を言えば言葉は悪いかも知れませんが、「医者と病院は、選ばなければ・・・・・」

米田先生のホームページを拝見しました時に、病の説明を細目に書き込みされている事に感銘致しました。
また、開業医の先生への項目に早めの紹介をと、書かれていたのに・・・・自分も同感致した次第です。

初めて、先生にメールで病気の問い合わせ致しました時も、ビックリするほど返信が早かったのを覚えています。
返信の内容で、不安が一掃したのも言うまでもありません。

九州・熊本から受診した時も、日帰り出来る様に手配頂いて、感謝申し上げます。
スタッフの皆様も暖かく親切でしたので、田舎者も安心して帰路についた次第です。
重ね重ね、今回の診察から手術までと、経過治療につきまして御礼申し上げます。

有り難う御座いました

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り15 大動脈弁二尖弁を形成した患者さん

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患者さんは19歳の男性です。

Hana_10東京の大学に通っておられる中で、検診で大動脈弁の二尖弁と逆流(大動脈弁閉鎖不全症と呼びます)を発見・診断されました。

心臓に負担がかかって来ており、危険な症状も出ているため手術を勧められ、

それから患者さんは自分の理想の病院を調べられたそうです。 

大動脈弁形成術を求めて探す中で、私のホームページ心臓血管外科情報WEB(註:現在の名称は心臓外科手術情報WEBです)を見つけられ、メールを送ってこられました。

 

ご本人さまはもちろん、ご両親はじめご家族と十分な相談のうえ、ハートセンターにて大動脈弁形成術を行い、うまく行きました。

 二尖弁は経験豊かなチームなら弁形成ができるため、さまざまな方法の中から最も適したものを選んで形成しました。

二尖弁のかみ合わせがきれいになった結果、手術前には高度だった逆流も術後は無視できるほどに治りました。

大動脈はかなり小さかったのですが、弁形成術のおかげで狭窄症(狭くなること)も起こりませんでした。

もしも弁置換なら不十分なサイズのものしか入らなかった状況でした。

 

大動脈弁形成によって普通の生活を取り戻して頂けたことはうれしい限りです良好な予後が期待されますが、二尖弁の常として、弁と大動脈の両方を注意深く定期健診することが大切と、ともに決意しました。

こうして患者さんの青春時代をワーファリンなしで過ごせるお手伝いができるのは大変うれしいことです。

 

術後経過も良好で術後9日目に元気に退院されました。

米田はその日はタイ国へ手術に出張しており、お祝いを言えなかったため、

お詫びとお祝いのメールをお送りしたところご両親からお返事が来ました。

それが下記のメールです。

 

**********************************

米田先生

メールをいただきありがとうございます。


本来なら、こちらからお送りせねばならぬところ


先生よりいただき大変失礼いたしました。

 

術後の回復も順調で、先生のお帰りを待つことなく
退院させていただくことになりました。

 

自宅に帰り、ベースギターを少し弾いたりして
通常の生活に少しずつ戻しつつあります。


本人は一刻も早く関東に戻りたいようです。


とはいえ、まだ疲れやすく無理もできないので
こちらに居る間は、ゆっくりさせたいと思っております。

 

大学の検診で、この疾病が発見されたとき、
治療は弁置換(機械弁)だというという説明を受けましたが、
本人として、その治療を理解するということ以外に
他の治療をも模索し、米田先生にめぐり会えたことは、
本当に幸運であったと思います。

 

弁形成という希望通りになったことはもちろんですが、
たとえ、人工弁の選択になっていたとしても
納得いく治療を受けることができたという気持ちは
今後の人生においてとても重要なことであるからです。

 

なぜならば、心臓との付き合いは一生であり、
ここで自分自身がしっかり受け入れられる結果でないと
ずっと疑問を持って生きていかねばなりませんから。

 

米田先生とのメールのやり取りや
診察時のわかりやすい表現でご説明いただいたことで
彼のみならず、家族も安心して手術に臨めました。


お恥ずかしい話ですが、毎日泣いていた母は、
先生にお会いしてからはやっと現状を受け入れることが
でき、それ以来、前向きに考えるようになりました。

 

(中略)

今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

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