お便り36 遠方から来院して下さった大動脈弁狭窄症の患者さん

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大動脈弁狭窄症は心臓弁膜症の中でも一番多い病気のひとつで、

その治療もほとんどの場合は人工弁による弁置換術となります。

この手術は心臓手術の中ではシンプルなタイプに属しますが、

大動脈弁狭窄症そのものが油断すれば突然死などを起こす病気ですし、

心臓をいったん止めて中に入って弁を治す方法ですので、

いくら成績が良くなっても油断はできません。

 

患者さんは70代の男性でかなり遠方の山間部から来院され Il004_momiji ました。

心臓弁膜症をしっかりと勉強された上で、私たちのところへ時間をかけて来て下さったことを光栄に思います。

そうした気持ちで、初めてお会いしたときから信頼関係ができていたおかげもあってか、

オペも経過もスムースで順調でした。

 

この大動脈弁狭窄症という病気は高度になりますと手術なしでは死亡することが多いことと、

心臓手術の安全性が高く、術後の心臓の回復が良いことから、

高齢者でも積極的にそれが勧められています。

私どもでは名古屋ハートセンター開院2年間の中でも80代は普通で、

最高91歳の患者さんまで、皆さんお元気に退院しておられます。

しかしそれでも心臓の手術を決意するということは大変なことです。

だからこそ普通以上に信頼関係が大切なわけです。

ご高齢になればなるほど、また他の病気をお持ちであればあるほど、

高いチーム力が威力を発揮します。

 

以下はその患者さんからのお便りです。お役に立てて本当にうれしく思いました。

 

****** 患者さんからのお便り *****

米田先生

お蔭様で今年も紅葉を愛でることができました。

大動脈弁狭窄症で先生の執刀で
9月末に生体弁交換手術をして頂いてから2ヶ月経過、

車の運転、軽い運動も良いとのことで京都に紅葉刈りに出かけて参りました。



京都の紅葉もシーズンの後半、そろそろ散り始めているところもありましたが、爽やかな秋風にその枝を靡かせながら、艷やかな彩りを見せて歓迎してくれました。

紅葉は勿論、京都は何度も訪れていますが、今年の紅葉は小生にとっては又格別の想いが致しました。

今年は無理かな・・と半分諦めた時期もありました。

  お便り36写真 しかし永観堂を起点に光明寺、真妙寺、哲学の道を経由、

法然院を見学、銀閣寺まで休み休みでしたが約19,000歩強を歩き、

その間膝はガクガクでしたが坂道でも殆ど息切れもなく、

“心臓の快調な若返り”を体で実感し、

健康、そして命の大切さ噛みしめながら、快適な一日を過ごすことができました。
(写真は青蓮院門跡にて11月29日)



思い起こせば、75歳になる今日まで、大きな病気をしたこともなく健康には自信があったのですが、

自覚症状もないのに、偶々他の検査で見つかった大動脈弁狭窄症の診断には目の前が真っ暗になりました。

高校同窓の外科医に意見をもとめたら、「自分たちがインターンのころは人工心肺の装置もなく、

心臓手術では専ら、氷等で身体を冷やして手術を行い危険率が可なり高かったが、

今は医療技術をすすんでいるので安心してよい。

ただ多くの手術実績があり手術成績のよい医師にお願いすることが重要だ」‥と言われました。



なにしろ胸を開いて、何時間も心臓を止め、心臓そのものを開いて弁を切断、交換するという大手術です、

安全率は高いといわれても少なからず最悪のケースの“死”が何時も頭をよぎります。

出来れば心臓手術などは避けたいと思いましたが、この病は決してよくなることはない、

体力の残っているうちにするのが良いことがわかりました。



また色々と調べるうちに米田先生のプログを拝見、

心エコー神戸の記事や先生が中心で纏められた「弁膜疾患の‥ガイドライン2007年」も拝見して、ぜひ先生に診て頂きたいと思いました。

ハートセンターを訪ねたのが8月31日、

印象として病院とは思えない明るく清潔な雰囲気、

そして受付や顔を合わすスタッフの皆さんの笑みを込めた会釈に接し、

正直気持ちが落ち着きました。

 

そして待たされることなく次々と検査を終え、

米田先生から、手術等について、ゆっくり時間をかけ親切丁寧にご説明を頂いた時には全ての不安がなくなり、

迷わずに全てを先生にお願いすることを決心して、

すぐに手続きをお願いいたしました。

そして手術~退院までは予めお聞きしていた通りの時間経過で全てが順調に運び今日まで経過し、

手術前に悩み苦しんだことがまるで夢のような気がする今日この頃です。

 

これも全て米田先生を始め訓練された素晴らしいスタッフの皆様のお影だと心から感謝いたしております。

本当にありがとうございました。



退院後は近所の**先生にフォロウーして頂いて居ますが、

「このような詳細な検査データー、経過資料を頂けて助かる、このようなことは今まで経験はないが、さすが米田先生ですね・・」とコメントされて安心して通院しています。

今月の24日には退院後2回目の検診を深谷先生に予約しております。

以上とりあえず、お礼かたがた近況ご報告までにて失礼いたします。

平成22年12月3日

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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