この10月18日、日本胸部外科学会の会期中に神戸にて徳洲会病院の心臓血管外科部会が開催されました。
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世話人の大橋壮樹先生によれば、以前から構想はあったものの皆さん多忙でなかなか機会が造れず今に至ってしまいましたとのことで、野崎徳洲会病院での緊急手術の多さと忙しさを実際に体験して、うなずけました。
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今回の第一回集会は我が恩師・Tirone E. David先生(トロント大学心臓血管外科)を特別講師として呼んで頂き、私にとっては二重に楽しく有難い会になりました。
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講演テーマは弁膜症治療をめぐってで、ここまで40年以上の経験をさまざまな文献的考察をまじえてお話されました。
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私にとっては留学まもない1988年ごろ、初めて見るゴアテックス糸人工腱索やバーロー症候群への複雑僧帽弁形成術、弁がぼろぼろに壊れた感染性心内膜炎IEをもとどおりきれいな弁に再建する手術などなど、忘れられない経験をもう一度プレイバックして頂けるような気持ちで拝聴しました。
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そのころ、同先生の指導にて担当した研究、硬性リングよりも軟性リングで僧帽弁形成術を行った方が、術後の運動時心機能が良いという研究成果(英語論文のページ、論文#11)も久しぶりに拝見でき、懐かしい限りでした。
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あれからまもなく30年、これほど永い時間が経ったことをしみじみ感じながら拝聴しました。
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大橋先生のご配慮で質疑応答の時間がたっぷりと取られましたが、皆さんシャイであまり質問されません。
そこで質問がない時や、あっても途切れるたびに、不肖私が弟子のひとりとして質問させて頂きました。質問といっても、サクラの質問ではなく、最近の手術の中で自分なりに疑問に思っていたことを順々にぶつけて率直なご意見を頂くという、得難い機会となりました。
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虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対しては新たな改良によって弁形成でき、かつ患者さんに大きなメリットがある、そうした状況があるのではないかという質問や、三尖弁形成術にも工夫すれば人工腱索は役に立つのではないか、あるいはループ法よりもメリットが大きいと考えられる連続式人工腱索設置法の方法の進化など、確認と勉強をさせて戴きました。
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講演のあとで若い先生方が順番にツーショットでDavid先生と記念写真を撮っておられました。大変良いこととおもいます。これをきっかけに世界の一流の手術や病院システムに関心をもち、成長して頂ければと思いました。最近の若者は昔ほど留学熱がないと聞きましたが、広い世界に師を求めて学び、活躍して欲しいと願わずにはおれませんでした。
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講演のあとは懇親会で、鈴木隆夫理事長はじめ徳洲会の先生方とゆっくり懇談でき、新参者の私にとってはありがたい機会になりました。大橋先生、東上先生、樋上先生、曾根田先生、吉田先生はじめおなじみの心臓外科医の先生方とも楽しく歓談させて頂きました。
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若い先生方は私などにも熱心にご質問下さり、これから新しい術式や治療法を軸に共同研修や共同研究をやろうと盛り上がりました。かつての京大同門会での熱く楽しい想い出を彷彿とさせる、躍動感を感じるひとときでした。
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若い先生方に背中を押してもらえるというのは幸運なこととあらためて知りました。皆さんに大きく成長して頂けるよう、自分も頑張らねばと襟を正しました。
世話人の労をお取りくださった大橋先生、関係の皆様、ありがとうございました。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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