虚血性僧帽弁閉鎖不全症、患者さんの想い出

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Aさんは40代の男性です。今から9年前、当時私が勤務していました京大病院へ来られました。

来院12年前に心カテーテルによるPCI治療を受けられました。その後比較的安定していましたが2年前から心房細動が起こるようになり心不全が進行するようになりました。

来院時の検査では左室はかなり壊れて、駆出率は正常の半分以下である30%まで落ち、左室の形が崩れた結果、虚血性僧帽弁閉鎖不全症も合併していました。

仕事にも支障がでるようになっていましたので心臓手術することになりました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症ですから、まず左室形成術で左室を治し、僧帽弁形成術も普通の方法では効果がないため、私たちが開発した腱索移植術(chordal translocation)という方法で、乳頭筋を前へ吊り上げました。詳細はこちらをご参照ください。

患者さんの左室駆出率は40%まで改善し、僧帽弁閉鎖不全症も消失しました。

患者さんは元気な生活を取戻し、仕事復帰されました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症はそのメカニズムが通常の僧帽弁閉鎖不全症とは違いますので、それを踏まえた形成術が求められます。これまではそのメカニズムが詳細までわからなかったため手術が難しかったのです。たとえば一般によく行われる僧帽弁輪形成術(リングをもちいて弁輪を小さくする)では治しきれないのです。

上記の方法はその新しいコンセプトに沿ったものです。かつて人工弁による僧帽弁置換術に頼っていた治療が年々、弁形成で行けるようになってきています。

その後、この方法はさらに進化を遂げ、現在は乳頭筋最適化術(略称PHO法)として成果を伸ばしています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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