【第三十号】 天皇陛下のご全快を祈ります

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 【第三十号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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寒い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。

心臓血管外科情報WEBの情報が冬の健康生活に多少でもお役にたてば幸い
です。

患者さんへのお知らせのページをごらん下さい。

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2008/11/post-4fa5.html

です。

さて天皇陛下がこの2月18日に狭心症のため冠動脈バイパス手術を受けら
れることになりました。

狭心症の治療にはその重症度におうじて、お薬やカテーテル治療(PCIや
ステント)さらに外科手術(冠動脈バイパス手術)などがあります。

その患者さんの状態に一番適した治療法を選ぶことが欧米では常識となって
いますし、日米欧のガイドラインでも示されています。

天皇陛下が治療を受けられる東京大学の先生方が的確な治療方針を立てられた
ことに敬意を表したく思います。執刀予定のA先生にも激励のメールをお送り
しました。友人・仲間として大変うれしいことです。

皆様のお役に立てるよう、関連記事を心臓血管外科情報WEBとオール
アバウトに載せました。ご参照ください

心臓血管外科情報WEBでは

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2012/02/emperorcabg.html

オールアバウトでは
http://allabout.co.jp/gm/gc/390317/

です。

春はもうすぐそこまで来ています。皆さん、ご自愛のうえ、お元気で
お過ごしください。

平成24年2月15日

米田正始 拝

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Copyright (c) 2009 心臓血管情報WEB
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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天皇陛下が冠動脈バイパス手術を受けられるわけは?

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朝日新聞などの各種報道によれば天皇陛下が2月18日に冠動脈バイパス手術を受けられることになったとのことです。天皇陛下の一日も早いご全快を祈るものです。

 

私のこの心臓血管外科情報WEBにも多数の閲覧があり、報道当日は通常の3倍近い、5700もの閲覧がありました。

また直接、なぜ天皇陛下は冠動脈バイパス手術を受けられるのですか?なぜカテーテル治療(PCI)じゃだめなんですか?とのご質問を戴きました。

 

天皇皇后両陛下。いいお写真ですね。もちろん私は主治医団の一員ではありませんので、周辺状況から推測するだけなのですが、

主治医の先生方はかなり多角的に、陛下の冠動脈や心臓だけでなく、長期間の健康や、以前に受けられた前立腺がんの治療なども総合的に考えられたからではないかと愚考します。

 

カテーテルによる冠動脈形成術(PCI)はメスを使うことなく、冠動脈の狭いところにステントと呼ばれる金属の網の筒を入れるため、患者さんにやさしい治療として広く使われています。

優れた治療法と思います。

 

しかしステントは、現在その多くが薬剤溶出性ステントという、抗がん剤などを表面に塗ったものが多く、患者さんの細胞を寄せ付けない傾向があり、金属がむき出しの状態のままになることがよくあります。

そこでは血栓ができやすく、いったん血栓ができると、冠動脈は血栓で詰まって、患者さんは心筋こうそくとなって死亡します。

こうしたことを防ぐため、強力な血栓予防のお薬、抗血小板剤を長期間にわたって飲む必要があります。

 

その抗血小板剤のため、他臓器の手術や出血しやすい検査がやりにくくなるのです。

Ilm09_dd04001-sたとえば大腸にポリープと呼ばれるきのこ状のできものができると、いずれがんになる可能性があるため内視鏡で切除するのですが、抗血小板剤が入っていると切除は出血の危険性のため消化器内科の先生も二の足を踏むことがしばしばなのです。

あるいはせっかく早期胃がんがみつかっても、あるいは歩けなくなるような背骨の病気が手術で治せるときでも、抗血小板剤が入っていると手術しづらくなるのです。

 

こうしたPCI・ステントの影の部分が最近指摘されることが増えました。

冠動脈バイパス手術のあとなら、こうした問題はほとんどありません。

 

ここで大切なこと、それはPCI・ステントと冠動脈バイパスのどちらが良いかという偏狭な議論をしているのではないということです。

それぞれの特長を活かし、患者さんの状態や年齢・生活・仕事などを勘案してベストのものを選ぶのが良いという意味です。

 

欧米の大規模臨床試験であるSYNTAXトライアル(シンタックストライアル)では冠動脈の病変が複雑な場合、冠動脈バイパス手術のほうが患者さんは長生きできるという結果がでています。

そのため複雑な冠動脈病変の患者さんには欧米では公式ガイドラインでバイパス手術を第一選択として推奨されているのです。

天皇陛下の場合は今後のがん治療のことも考慮して冠動脈バイパスを選択されたものと考えます。

もちろん抗血小板剤が不要で、長期安定性も良いため、公務やスポーツなどものびのびやれるため、というのも理由のひとつでしょう。

■追補: 手術の後の経過が良好で陛下はお元気に公務に戻られたのは皆さんご存じのとおりです。強いお薬や冠動脈血栓症などの心肺なく仕事に打ち込めるのがバイパス手術の特長です。詳細はこちらをどうぞ。

 

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天皇陛下の冠動脈バイパス手術の成功を慶ぶ」のページへ

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All Aboutのページ「天皇陛下が受けられる冠動脈バイパス手術とは」はこちら

 

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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