最終更新日 2020年3月11日
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◾️川崎病とは
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川崎病はかつて赤ちゃんが発熱のあと原因不明の突然死をおこす恐ろしい病気として医学界でも大きな話題になりました。
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患者さんの傍らで治療しながら症状や経過を詳細に観察されるなかから
この病気の存在と姿が次第に明らかとなりました。
患者さん本位の、臨床家ならではの研究でした。
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その後詳細が解明され冠動脈がこぶのように拡張して瘤をつくり、血栓ができてその下流に心筋梗塞を作るのがわかりました。
その多大な功績のため、川崎先生に敬意を表してこの病気を川崎病と呼ぶようになりました。
日本人の名前が、世界で通用する病名としてついているのはいくつかありますが
(たとえばこの川崎病のほかに橋本病、高安病などなど)、誇らしく思います。
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私は数年前、世話人を務めさせていただいている近畿川崎病研究会で川崎先生とゆっくり歓談する機会をいただき、
その真摯かつ熱いご姿勢に感銘を受けたのを今も覚えています。
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◾️川崎病、現在は
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現在は診断法が進歩し、
かつガンマグロブリン療法そして抗血小板療法はじめ効果的な治療が確立し、
こども時代に命を落とすことは少なくなりました。
こどもでもときに冠動脈バイパス手術などが行われることがあり結果は良好です。
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しかし冠動脈が瘤破裂や心筋梗塞まで重症化しなくても
血管内膜細胞つまりこの動脈の内側の表面をおおう細胞が川崎病の感染や炎症でダメージを受けると、
長年月のうちにこの動脈が本来の機能を失い、
川崎病の既往のない方よりかなり高度な動脈硬化が起こることが心配されています。
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◾️川崎病、これからの課題
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油や血栓などをみずから掃除し、
小さい傷は修復する働きをもった立派な臓器なのです。
人体の中で最大の臓器と呼ぶ研究者もおられるほどです。
だからこそ血液という栄養つまり脂肪や糖分をたっぷり含み、
血球をたくさん載せたどろどろの液体が何十年も流れても
まずまずきれいな表面を維持できるのです。
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あのきれいでさらさらで透明な水道水でも
10-20年も流れれば水道管には水垢が貯まってさまざまな問題が起こることを思えば、
血液のようなどろどろの液体を何十年も流せる動脈はまさに驚異的な機能する管なのです。
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ところが川崎病で冠状動脈の内側表面の細胞つまり内膜細胞が傷つくと、
その掃除や修復が十分にはできなくなり冠動脈疾患が起こりやすくなるのです。
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いったん冠動脈疾患が発生したら、その硬化が高度なため、
その壊れたところを金属で押し広げて血液を流すステント(PCI)よりも、
動脈硬化に強い、血管年齢の若い、内胸動脈などをもちいる冠動脈バイパス手術のほうが
長持ちしやすいというのは理解できることです。
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◾️大人の川崎病の治療、ステントとバイパス手術
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ステントとくに抗がん剤を塗布した薬剤溶出性ステントでは
逆に冠動脈バイパス手術で使う内胸動脈は
NO(エヌオー、一酸化窒素)やプロスタグランディンなどの血栓や動脈硬化を抑えて血管を広げる作用のあるホルモン類を自ら作る、
高性能内膜を持っているのです。
ある意味冠状動脈よりもずっと若くて生きのよい血管といえましょう。
それを使うため冠動脈バイパス手術は冠動脈の悪い患者さんにはとくに威力を発揮するのです。
ちょうど重症糖尿病や透析患者さんにたいするバイパス手術がステントより長期成績・生存率が良いように。
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もちろんその患者さんの冠動脈病変の位置や数、つまり病変の進行度を多角的に検討し、
血管の内膜機能の低さもあわせて考え、
冠動脈バイパス手術が有利と判断できるときにバイパス手術を行うようにしています。(手術事例)
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◾️元・川崎病の大人の方々に
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小さいころに川崎病を患われた方、
とくに冠動脈瘤などを指摘されたり治療を受けられた方は、
成人されたあとも、定期健診を受けられることをお勧めします。
川崎病による内膜障害に成人期の動脈硬化が加わると、ダブル障害で病気が発生する心配があります。
専門医による定期健診で安全と安心が得られるでしょう。
最近のCT(MDCTと呼びます)で冠動脈はかなり詳細まで短時間で調べることができますし、
この動脈の一番根本の部分は心エコーでもある程度以上わかります。
それらで異常があればカテーテルを考慮し、
正確で安全な治療へと進むことができます。
MDCTで異常なければ、定期健診で行けるでしょう。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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