最終更新日 2020年3月4日
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◾️慢性腎不全・血液透析での注意点は
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慢性腎不全・血液透析は今なお課題が多い難しい病気・状況です。
とくに慢性腎不全の原因が糖尿病の場合、さまざまな注意が必要になります。
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血液透析の患者さんは血管が傷んでいる場合が多く、かつその血管病変(動脈硬化)は進むため注意が 必要です。
心臓血管外科関係の病気としては心臓の冠動脈がやられて起こる狭心症や心筋梗塞、
あるいは心臓の弁が硬化して起こる弁膜症、
下肢の動脈がやられる閉塞性動脈硬化症 (ASO)などがあり、
また大動脈瘤も動脈硬化の現れです。
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そもそも慢性腎不全・血液透析の患者さんの寿命を短くしていた大きな原因は心臓や血管の病気でした。
つまり心臓や血管をしっかり守れば、透析の患者さんはもっと長生きしやすくなるわけです。
そのため、いかにして透析患者さんの心臓や血管の手術を安全に行うかが焦点になって来ました。
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◾️慢性腎不全・血液透析での冠動脈疾患をどう直すか
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上記の狭心症の場合、冠動脈バイパス手術は、内胸動脈グラフト等が動脈硬化を防ぐホルモンを自ら出し長期間安定する特長を持っているため、慢性腎不全・透析の患者さんには非常に好適です。
カテーテル治療(PCI)より優れた長期成績が多くの検討で発表されています。
そのバイパス術を安全に行うために、人工心肺を使わないオフポンプバイパス手術を大動脈への操作を最小限にして行い、成果が上がっています。
オフポンプなら大動脈に太い管を入れずにすむため、その部位から硬化した血管の破片が飛ばずにすみ、また自然な血液の流れのおかげで体への影響も少ないからです。
◾️慢性腎不全での心臓弁膜症対策
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慢性腎不全・血液透析で心臓弁膜症をお持ちの患者さんの場合は人工心肺は必須ですが、上行大動脈の良い部位をうまく使い、良い部位が全然ないときはそこを人工血管に代えるなどして破片が飛ばないように(つまり脳梗塞が起こりにくいように)工夫します。
通常以上の確実な止血をすることで、必要あらば手術直後でも出血なしに透析できるようにしています。
もちろんオペ中に人工心肺を使っているのを活かしてしっかり透析し、通常は手術翌朝までは透析なしで行けるようにしています。
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◾️慢性腎不全・血液透析患者さんの心臓血管が治ると、、、
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慢性腎不全・血液透析の患者さんの心臓や血管の手術ではこのように病気のある血管をうまく使って手術する必要があり、少し手間はかかりますが、意義は大変大きい です。
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というのは心臓が悪い患者さんでは、オペ前には血液透析が思うようにできないことが多く、たとえば透析で水を引こうとすると血圧が下がったり胸が痛くなり、透析そのものが成り立たなくなるため、手術の後の改善がはっきりとわかりやすいからです。
手術のあと、しばし持続透析で安全に回復を図り、まもなく週3回の維持透析に戻りますが、その第一回目の透析のあと、患者さんが「こんな楽な透析は久しぶりでした」とよく言って頂けます。
お互い、努力は報われるとそのたびに思います。
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このように、慢性腎不全・血液透析の患者さんの長期生存率向上のキーの一つは心臓や血管をしっかり守るあるいは治療することで、前向きに取り組むことが大切です。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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