最終更新日 2020年3月2日
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心臓手術はこの数十年間、長足の進歩をとげて来ました。
より重症の患者さんをより安全に救命する努力と、同じ手術でもより苦痛の少ないものとする努力がなされて来ました。
とくに小さい創で心臓手術を行うミックス手術なかでも創が一番小さく、しかも骨を切らないポートアクセスは患者さんに大きな福音になっています。
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しかしこうした低侵襲心臓手術は熟練したエキスパートしかできないというのが一般的な見解です。
というのは視野が比較的狭く、一方向からのアプローチしかできず、しかも助手の手を借りないでソロで行う心臓手術であるためです。
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なかでも僧帽弁形成術は、それ自体が経験豊富な心臓外科医がやるべき手術として広く認識されているものですが、これをポートアクセス法などのミックスでやるのはさらにハードルが高くなり、ふつうの弁形成なら目をつぶってでもできる、というレベルの熟練外科医がやるべきものです。
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あるいは大動脈弁手術は僧帽弁手術以上にミックスでの難易度が上がり、それをルーチンに安全にこなしている病院はさらに少数となります。
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一般医療は私の町の病院・私の町のクリニックという優れたアクセスが重要ですが、こうした熟練が求められるタイプの心臓手術は全国の無数の病院で、それぞれ少数ずつ行われると、熟練度が下がり成績が低下し、患者さんが犠牲になることが内外の学会などでも警告されています。
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医者を束ね、指導するはずの学会は、すべての会員つまりすべての医師を守る義務があるという建前から、一部のエキスパートだけにこうした難しい心臓手術をやらせるような指導はできず、皆でやりましょうという空気に流されがちなのです。つまり学会にはこの問題を解決する力は残念ながら少ないのです。さまざまな努力がなされていますが構造的に思い切った改革がしづらいのです。
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患者さんの側からも積極的に情報を集め、セカンドオピニオンなどで専門家の意見を聴くなど、慎重に対応されることが望まれます。要は実績や評価の高い施設や医師を選べばよいわけです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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