最終更新日 2022年2月3日
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◾️MICSによる僧帽弁形成術とは?
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僧帽弁の修復手術を、骨も切らない傷跡も小さく目立たない形で行う、患者さんの体に優しい心臓手術です。
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僧帽弁形成術は僧帽弁閉鎖不全症に対するベスト治療であることはよく知られています。
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(右図はその術中写真です。すでに弁がきれいにかみ合い、逆流は消えています。)
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このことはほぼすべての患者さんにあてはまりますが、
とくに60歳以下の若い患者さん、なかでも10代から40代の患者さんで大切です。
もちろん弁形成がきちんと完遂できる場合のお話しです。
それは術後、永い年月にわたってスポーツその他の自然な活動ができ
病院通いや定期血液検査などがかなり軽減され、
長期の安全性と生活の質の両方を高めるからです。
そう考えますと、ミックス(小切開低侵襲手術)法(その代表格がポートアクセスです)をもちいた僧帽弁形成術は一層、
形成術の良さを引き出せ、
患者さんへのメリットは大きなものがあると言えましょう。お便り54をご参照ください。
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◾️その実際は?
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写真右はミックス(MICS)での僧帽弁形成術の術後1年の写真です。
すばやい社会復帰を支援する小さな創です。
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乳腺の右側、向かって左側にある小さな線が創部で、
あとは皮膚のふつうのしわです
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私たちのLSH法(副次創を最少限にするミックス)ではメインの傷跡以外には1つしか小さい傷がつかないため、いっそうきれいになるのです。
他のどんな方法よりもきれいとよく言われます。安全な保険診療内での治療ですから自己負担増はありません。
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ミックスの代表格ともいえる、ポートアクセス法による僧帽弁形成術の標準的手術事例をしめします。
視野出しがちょっと難しいポートアクセスの僧帽弁形成術での事例はこちらです。
やや複雑な弁形成の事例もご参照ください。
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◾️ミックスの僧帽弁形成術は具体的にどう喜ばれているの?
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若いからこそ仕事、生活やスポーツ、楽しみに忙しく集中したいというニーズがあり、
骨を切らないミックスでは治りが速いため、
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また夏の海などへ行っても創がわかりにくいためあまりいろいろ聞かれずにすみ、
自然に楽しめるのです。
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ゴルフひとつを例にあげても、
ラウンドのあとお風呂でもくつろぎやすいと言われます。
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女性の場合はビーチでビキニなってもほとんどわからないため精神的苦痛も軽減します。
写真右はミックスによる僧帽弁形成術を受けた患者さんの術後6か月の写真です。
痛みも少なく、術後1か月で仕事復帰しておられます。
普通の姿勢では乳腺のしわの中に隠れて傷跡はますます見えにくくなります。
こころの傷もつきにくいと言われることさえあります。
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◾️ミックスでの僧帽弁形成術、注意点は?
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そうしたメリットの多いミックス手術(MICS)の僧帽弁形成術ですが、
良いことばかりではありません。
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限られた視野で、助手の力も借りにくいため、
手術の難易度は上がります。
普通の僧帽弁形成術ならほぼ100%成功させるという実績をもつチームでも、
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(写真はミックスでの僧帽弁形成術の術中写真です。
患者さんの体型その他の条件によってはこうした狭い術野でも工夫して、
わずか6㎝の皮膚切開の隙間から、
所定時間内に安全手術を貫徹することが必要です)
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◾️私見ですが、、
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私見ですが、ミックスで治療の質を下げることはあってはならないと考えてオペしています。
しかし上記のように通常より難しい条件下で仕事をするため、時間は多少長くかかります。
妥協するのは手術の質ではなく、時間と考えているわけです。
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心臓手術とくに心臓内での操作はあまり長時間かかるとあとの立ち上がりに影響し好ましくありません。
そのため長時間かかる複雑なオペではミックスよりも通常の正中切開で確実に治すこともあります。
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また同じ理由で、僧帽弁形成術の簡単なものがなんとかできるという程度の力量と実績の心臓外科医はミックスをやるべきでないと思います。
ひとつ間違えば患者さんだけでなく、
その心臓外科医にとっても命取りになりかねないからです。
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ダビンチ・ロボットの導入もミックスの一つの方向として検討していますが、
ロボットでは健康保険適応といっても保険カバーされない高価な機械部品代などを様々な形(差額室料その他で)で患者さんに求められ、
治療費が原則保険でカバーされるロボット無しのミックス手術のほうが費用面でも有利です。傷跡のきれいさでも遜色ないと言われます。またダビンチ・ロボットでの医療事故も少なくないのです。
こうした慎重な姿勢で、ミックス(MICS)による僧帽弁形成術という、
患者さんに大きなメリットのある治療法を育てて行きたいと考えています。
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お問い合わせはこちらへどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
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参考ページのIndex:
とくにポートアクセス手術とは
その位置づけは
それが前向きに安全な場合
美しいLSH法とは?
かかる費用は?
ハートポートとは
危険なの?
その術後の痛み軽減について
社会復帰が早いわけは?
美容について
胸骨「下部」部分切開法とは
ビデオ ポートアクセス法による僧帽弁形成術
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
僧帽弁
ミックスによる弁置換
同、メイズ手術
ポートアクセスによる弁形成
患者さんやご家族からのお便り
お便り54: ポートアクセス法で弁形成を受けた若者患者さん
お便り59: 被災地支援へ!同法の弁形成術を受けられた患者さん
お便り62: ミックスの弁形成と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん
お便り63: ポートの複雑僧帽弁形成術を受けられた患者さん
お便り65: 同法による弁形成術で元気になられた患者さん
お便り68: 同法の弁形成を受けたバーロー症候群患者さん
お便り72: 二弁置換とメイズ手術をミックスで受けた患者さん
お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動を同法手術で克服
お便り74: ポートアクセス法で弁形成とメイズ手術を受けた患者さん
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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