心臓粘液腫とは?―良性でも危険なことがある心臓腫瘍【2025年最新版】

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更新日:2025年9月29日
執筆:福田総合病院 心臓血管外科専門医 米田正始

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◆心臓粘液腫とは?myxoma

心臓粘液腫(myxoma)は、心臓に発生する腫瘍の中で最も多く、全体の約半数を占めます。
多くは良性腫瘍
ですが、油断できない病気です。(腫瘍説

  • 75%は左心房に発生

  • 20%は右心房

  • 残りは心室に発生

見た目はゼラチン状でやわらかく、色は黄色や灰白色、ときに緑色を帯びることもあります。

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◆粘液腫の症状

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粘液腫は心房中隔にできることが多く、成長すると僧帽弁をふさぐようになり、以下の症状を引き起こします。

  • 息切れ・動悸(心不全や不整脈による)

  • 失神発作

  • 突然死のリスク

  • 血流に腫瘍の一部が流れてしまい、脳梗塞や塞栓症を起こす

その他、発熱・体重減少・レイノー現象(手足の指が冷たく痛む)などもみられることがあります。

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◆なぜ危険なのか?Cwfa030-s

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粘液腫は柔らかくもろいため、腫瘍の一部がちぎれて血流に乗ることがあります。

これが脳に達すると脳梗塞を起こし、命に関わる事態や後遺症(半身まひなど)につながることがあります。

「良性だから安心」とは言えない理由がここにあります。

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◆遺伝との関係

  • 遺伝性粘液腫:20代男性に多く、心房以外の心室などにも発生しやすい。再発率や悪性度が高い。

  • 非遺伝性粘液腫:40〜60歳女性に多く、左心房に発生するケースが多い。

30歳以下、特に20歳以下の患者さんで発見された場合は、遺伝性の可能性も考慮して注意深い診療が必要です。

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SANY0004◆診断方法

  • 心エコー検査:第一選択であり、確定診断に有効

  • CT・MRI:腫瘍の大きさや位置を詳細に確認

  • 心臓カテーテル検査:造影で血流の状態を確認

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◆治療は早期の心臓手術

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粘液腫は診断がついたらできるだけ早く手術することが勧められます。
特に危険なタイプでは、当院では診断から1週間以内に手術を行う方針です。

待機中に脳梗塞などの合併症を起こす例もあり、「善は急げ」の病気といえます。

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◆手術のポイント

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  • 完全切除が原則

  • 再発は取り残しや悪性度の高さによって起こる

  • 心房中隔だけでなく、必要に応じて僧帽弁や大動脈弁近く(お便り43をご参照)まで切除・再建することもある

  • 粘液腫による弁輪拡張で僧帽弁閉鎖不全症を合併している場合は、僧帽弁形成術を併用することもある(お便り11をご参照)

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◆経験豊富な外科医による手術が重要

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粘液腫は良性でも不完全切除や再発のリスクがあるため、経験豊かな心臓外科医による手術が望まれます。
特に、腫瘍が通常と異なる部位にある場合は難易度が高く、専門性の高い施設での治療が安心です。

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◆まとめ

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  • 心臓粘液腫は良性腫瘍ですが、脳梗塞や突然死の原因となる危険な病気です。

  • 心エコーなどで診断されれば、早期手術が推奨されます。

  • 手術は完全切除が大切で、経験豊富な外科医のいる専門施設での治療が望まれます。

👉 心臓粘液腫と診断された方は、迷わず心臓血管外科専門医にご相談ください。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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