⑦心房縮小メイズ手術―通常ではできない除細動が 【2020年最新版】

Pocket

心房縮小メイズの展開図最終更新日 2020年2月27日

.

◾️ 心房縮小メイズ手術(心房縮小Maze手術)で心臓はどれくらい良くなるの?

.

ずいぶん良くなります。

左房や右房は別人のように小さくなり、そのおかげでさまざまな合併症が回避しやすくなります。

なによりも除細動つまり心房細動が取れる可能性がかなりあります。

手術前に巨大左房であったケースでは通常のメイズ手術では除細動などあり得ないことと言われます。

.

しかし心房縮小メイズ手術のあとは除細動することがよくあります。

たとえ退院時には心房細動がぶり返していても、その後1年以上経ってから除細動するというのが、この術式のあとの特徴です。

.

また巨大左房が小さくなると、術後の心不全で入退院を繰り返すなどの事例が激減しました。巨大左房の生命予後の悪さ(要するに長生きしにくい)を考えると、この効果は理解しやすいと思います。

 .

◾️心房縮小メイズ手術の実際

.

術前XPたとえば左図は62歳女性の胸部X線写真です。

巨大な心臓です。

長年の僧帽弁狭窄症三尖弁閉鎖不全症のため

巨大左房と心不全・心房細動をきたし手術が危険と言われていました。

もはや死ぬのを待つ形で、いわゆる看取り入院しておられたところを、ひょんなことから米田正始の眼にとまり、

それから関係者で相談し、これは救命できるという判断で心臓手術をすることになりました。

.

術中は、僧帽弁置換術を行い、左房をおりたたんだ(つまり心房縮小)ところでメ心房縮小メイズ手術によって巨大左房(LA)もかなりきれいな姿になり、心房細動も治りましたイズ手術を冷凍凝固にて行いました。

さらに三尖弁形成術ののち、右房をおりたたんで小さくしてから右房のメイズ手術を施行し、オペは無事完了しました。

.

左図は術前後の心エコー図4室像です。サイズの比較がしやすいように縮尺を合わせてあります。LAは左房を示します。とくに左房が大変小さくなりました。

手術前は左房内の血液がうっ滞し「もやもやエコー」の所見を呈していましたが、術後は血液の流れもスムースとなり、もやもやエコーは消えました。これならたとえ除細動まで行かない場合でも血栓もできにくく、周囲の組織(気管支など)への圧迫も減るというメリットは残るでしょう。

術前(左側)は左房と右房の拡張が著明で、二次的三次的問題も起こり始めていました。

しかし術直後(右側)はすでにかなり小さくなり、普通の心臓にかなり近づいたものと思います。

術直後XP.

こうして

心房縮小メイズ手術僧帽弁置換術三尖弁形成手術ですっかり元気になられ、心房細動さえ治りました。

右図は術直後の胸部X線写真です。

術前のX線よりはるかに小さくなっているのがお分かり頂けますでしょうか。

通常のメイズ手術では、こうした巨大左房の患者さんは治せません。

心房が大きすぎると異常な電気信号が心房内をくるくる回り、不整脈が取れないのです。

この点、心房を正常サイズにもどすこの手術では異常な信号が止まりやすいのです。

心房縮小メイズ手術によって心機能は格段に改善し、心不全は解消しました。

 .

◾️心房縮小メイズ手術の利点と展望

 .

A302_049これまでのデータの解析からこの心房縮小メイズ手術をもちいることで左房機能はもとより左室機能にまで好影響を及ぼしていることが示されています。

(英語論文 169番、196番、215番などをご参照ください)

また除細動できることで生体弁や弁形成のメリットが十分に活かせることにもなります。

心房を正常に近づけることで心不全が起こりにくく、患者さんがのびのびと暮らしやすくなるからです。実際経験豊かな循環器内科の先生方は巨大左房をともなう弁膜症で弁だけ直しても患者さんは良くなりきれないと言われることがよくあります。その通りです。なので心房縮小メイズなのです。

.

最近はミックス(MICS、小さい皮膚切開で行う、患者さんにやさしい心臓手術です)で、この心房縮小メイズ手術を行うようにしています。

より安全で、かつ患者さんの満足度が高い手術を目指しています。

.

Heart_dRR
お問い合わせはこちらへどうぞ

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

弁膜症の扉のページへもどる

.

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。