最終変更日 2025年9月16日
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◆ 心房縮小メイズ手術とは?
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心房縮小メイズ手術とは、拡大した心房を外科的に縮小したうえでメイズ手術を行う方法です。
通常のメイズ手術やカテーテルアブレーションでは治療が難しい 巨大左房や長期持続性心房細動(10~20年以上) の患者さんでも、高い除細動率を得られることが特徴です。
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私たちが2006年に国際誌(JTCVS)で報告したオリジナル手術法であり(英語論文 169番 2006年JTCVS をご参照ください)、従来適応外とされていた重症例でも心房細動を治すことが可能になってきました。
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◆ 開発の背景と改良点
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この手術は以下の技術を融合して開発しました:
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Farnsworth先生の心房縮小法
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川副浩平先生の心房縫縮法
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Cox先生のメイズIII手術
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左心房を「折りたたむ」ように縮小し、その折りたたみ部分を冷凍凝固アブレーションで処理することで、異常な電気信号が通れないようにします。
この方法は出血が少なく、手術時間も短縮でき、患者さんの負担を軽減します。
発表から20年以上が経過し、細部の改良を重ねた現在では、より安全かつ確実な術式へと進化しています。
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参考:いい心臓・いい人生 【第九十七号】江東豊洲心臓血管外科カンファランス
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僧帽弁の複雑形成術と心房縮小メイズ手術を施行した事例
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◆ 心房縮小メイズが効果的な理由
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心房が大きいほど、心房細動は持続しやすく治療が難しくなります。
拡大した心房内では、異常な電気信号がぐるぐると回りやすくなるためです。
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心房を縮小することでこの「悪循環の回路」を断ち切り、正常な電気信号の流れを回復させることができます。
まさに自然の摂理に沿った治療といえるでしょう。
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さらに、**フルメイズ手術のコンセプト(肺静脈隔離+僧帽弁峡部+右房峡部の処理)**を踏襲することで、治療成績をより安定化させています。
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◆ 心房縮小メイズ手術のメリット
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- 心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症の治療でもこの心房縮小メイズが注目されています。
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MICS(低侵襲小切開手術)にも対応可能
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ポートアクセス法で胸骨を切らずに施行可能
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傷跡が小さく、社会復帰も早い
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再手術や合併症のリスク軽減
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出血が少なく、術後回復も早い
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心不全や脳梗塞リスクの低下
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心房を縮小することで予後が改善
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左心耳閉鎖を同時に行うことで脳梗塞予防にも貢献
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巨大左房や長期持続例でも除細動率が高い
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- 心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症にも有効
- 心房細動のため左房が拡張して起こる病気ですから、左房を小さくする意義は大きいのです。
- さらに左心耳閉鎖も同時に行えるため、脳梗塞の一層の減少に貢献します。
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◆ 世界での評価と普及
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欧米の主要ジャーナルで3度発表され、米国に「逆輸入」された術式
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アジア諸国(タイ・フィリピン・カンボジアなど)でも導入が進み、国際的に注目される標準治療へと発展
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弁形成術と併用することで、心臓全体の機能を大きく改善
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◆ まとめ
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心房縮小メイズ手術は、巨大左房や長期持続性心房細動といった難治例に特に有効
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心房を縮小することで、心房細動そのものを治すだけでなく、予後や寿命の改善につながる
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MICS(低侵襲手術)にも対応し、より多くの患者さんに恩恵を届けられる段階に進化
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他の治療で「もう治せない」と言われた患者さんでも、手術で改善する可能性があります
心房細動や巨大左房でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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