②オーバーラップ手術 状況によっては便利な術式?

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左室形成術にはそれぞれの特徴や利点があります。オーバラップ手術にも時に得難いメリットがあります。

◾️オーバーラップ手術とは?

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 左室形成術の一つで、左室前側壁を左室内に引き込み心室中隔にオーバーラップさせる方法です。

このオーバーラップ法の良いところは異物であるパッチを使用せずにすむこと、縫合線が短くすむこと、生きた心筋を切除せずにすむことなどがあります。

左室が丸くなることを自動的に防げるというメリットも大きいです。

さらに将来もし補助循環いわゆるVASが必要になる場合にパッチや異物がない分、有利かも知れません。

 

その一方で瘢痕部や障害心筋を残すため、将来のリモデリング(再拡張・増悪)の心配が理論的にはあり得ます。

また左室基部にはあまり効果が無いという弱点もあります。

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◾️他の左室形成術と比較すると?

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セーブ手術と比較すると、左室の形態を同じぐらい理想的に保ちやすく(厳密には左室基部側はセーブが有利)、

時間的なことと異物を残さない点ではやや有利で、

将来の再リモデリング予防という意味では劣る、

ということになると考えます。

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ドール手術と比較すると、左室の細長い形を維持しやすいという点ではオーバーラップ法が有利ですが、

時間的にはやや劣り、つまりやや長くかかり、かつ将来のリモデリングでもやや不利と考えられます。

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◾️オーバーラップ法の来し方・行く末

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オーバーラップ法左室形成術はフランスのギルメ先生が開発され、

日本では佐賀敏彦先生が心室中隔穿孔VSPに応用され、

拡張型心筋症には松居喜郎先生らが活用発展させられた方法です。

 

私たちも適材適所の考えで活用しています

要はそれぞれの術式の特徴をよく理解して、その長所が発揮できる使い方をすることと思います

4.虚血性心疾患の項をご参照下さい)。

現在はどの左室形成術よりも侵襲が少なく、調整もしやすい心尖部凍結型左室形成術を中心に手術し、成績のさらなる向上を図っています。

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■ 患者さんの想い出: Aさんはまだ40代の若い男性でしたが、心筋梗塞のため左室の大部分を失い、強い心不全のため入院してこられました。

左室のほとんどが動いていない、しかし一部がかろうじて残っている、という状況で、その残っている部分がフルにちからを発揮できるように左室を形成すれば救命できるかも知れないと判断し、手術になりました。

セーブ手術を行ったのですが、力はある程度はでるもののIABPという補助装置からなかなか離脱できず、結局当時の左室補助装置LVASを装着するに至りました。

その際にはセーブ手術のパッチ越しにLVASのカニューレつまり血液を吸い出す管を入れるのは安全上良くないと判断し、セーブ手術のパッチをはずしてオーバーラップ法に変換し、そこへカニュラを入れました。LVASはきれいに作動しました。

その段階でこの左室は残存心筋が少なすぎるためこれ以上回復することはできないと判断し、心移植のリストに載せて頂きました。

その後私は京大病院を去り、患者さんも移植ができるセンターへ移られました。

後日、無事心移植が行われ、Aさんは元気に退院して行かれたとの吉報を頂きました。

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