③ドール手術―古典的な手術、改良により効果が上がった

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◾️ドール手術とは?

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左室形成術の一つで、かなり早い時期に発表された、古典的な方法です。

左室の病気の場所や程度に応じてさまざまな左室形成術を使い分けます。この図の方法以外にバチスタ手術が活躍することもあります

モナコの大御所(当時) Vincent Dor先生(写真右下)が考案された左室形成術です。

 

ドール手術は比較的簡便な良い方法で、慣れた術者なら短時間ででき、

病気の場所ややり方によっては有用なことがよくあります。

とくに心尖部に近いところに病変がある場合、ドール手術は良い選択になります。 Dr. V Dor

心筋梗塞部と健常部の境目に糸(フォンタン糸、Fontan suture)をかけ、梗塞部を縮め、あるいはそれ以上広がらないようにしたうえでパッチで梗塞部を守る、実に理にかなった素晴らしいアイデアと今なお感嘆と敬意をもってDor先生の見識を振り返っています。

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◾️ドール手術の限界は

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しかしそれほど優れたドール手術にもやはり限界が見えます。

心室中隔の基部まで病変部が及ぶようなケースでは普通にドール手術を行うと左室が丸くなり(球状化)、心機能とくに拡張機能が悪くなり、患者さんは元気になれません。

重症例ではいのちの危険があることさえあります。

一部でパッチを楕円形にすれば良いという議論も聞かれましたが通常はそれでは不十分と考えます。というのはパッチを縫着するまでに、つまりフォンタン糸を結んだ段階で左室はすでに丸くなっているからです。

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◾️そこで次の段階へ

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私たちはこのドール手術の簡便さつまり短時間でできて患者さんの負担が少ない利点と、セーブ手術のジオメトリー温存・心尖部温存できる特長を活かした新しいドール手術を用いています。

方向性Dor手術などと呼んでおり、くわしく検討中ですが、

これまで13例すべて順調で、その中には超重症も含まれており、新しいドール手術は心筋症・心不全の治療成績をさらに改善するかも知れません。(事例1)(事例2

これまで国内外の学会で発表し、より改良を図って参りました。

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こうしてドール手術は完成度の高いものに育ちましたが、この数年間はさらに改良を加えた心尖部凍結型左室形成術を中心に左室形成を行うようになり、その低侵襲性(つまり体への負担が少ない)ゆえ治療成績の一層の向上が見られています。

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◆患者さんの想い出:

Aさんは私が京大病院に勤務していたころ、つまり今から10年以上前に滋賀県から来られた患者さんです。カテーテル治療(PCI)を17回も受け、それでも心不全が改善しないということで来られました。心不全のため在宅酸素療法まで受けておられました。

といってもカテーテルの先生の批判をしているのではなく(昨今はPCIのやり過ぎを戒める空気が強くなりました)、むしろ逆で、粘り強いPCIのおかげでここまで生きることができ、私の外来に来ることができた、とも解釈できます。

さてAさんの心臓はそうした状況でひどく弱っていました。左室は大きく拡張し、駆出率も20%まで低下していました。左室形成術とくにドール手術の良い適応でした。

手術ではドール手術と僧帽弁形成術などを行い、術前の状態とはうってかわってお元気な状態で退院して行かれました。タバコが大好きで、一本でもいいから減らして下さいねとお願いしておきましたが、それ以外は良い状態でその後外来に通院しておられました。在宅酸素も不要になったと聞きました。

現在ならさらに進んだドール手術の改良型と乳頭筋最適化手術(PHO手術)でより心機能の改善を図るところですが、10年前の当時でもお役に立てたことをうれしく思っています。

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