心臓手術・事例: 共通房室弁口の僧帽弁閉鎖不全症を弁形成

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共通房室弁口(部分型心内膜床欠損症)にともなう僧帽弁閉鎖不全症は成人以後には弁の二次的変化などが加わり弁形成に際しては相応の注意が必要です。
私たちは先天性心疾患(こども)の専門の先生とチームを組んでこどもと大人の両方の観点から手術を行うようにしています。
患者さんは30歳前後の女性です。
3歳時に共通房室弁口の手術を受けておられます。
無症状のため高校以後はフォロー受けず
第一子の妊娠中に心雑音・弁逆流を指摘されました。
その後、僧帽弁閉鎖不全症が悪化しましたが地元の総合病院で弁形成術は無理と言われ、
しかし第二子が欲しいため弁形成術をもとめて来院されました。
来院時は労作時に軽い息切れがあり、夜間に動悸発作が多くなっていました。
手術前の心エコーでは
僧帽弁前尖にクレフト(裂隙、さけめ)があり、そこから多量に血液が漏れて逆流していました。
弁尖とくに前尖の肥厚と硬化所見が著明でした。
生まれたときからの病変ですから、30年以上の時間が経っており、弁の変化、破壊が進んでいるようすでした。
手術時は前回手術のために心臓と周囲組織の間が癒着していたため、これを丁寧にはがしました。
左房を開けて僧帽弁を見ますと、深いクレフトがありその周囲を中心に前尖の大半が強く肥厚していました。
そこでまず前尖の肥厚した二次腱索を切除し、クレフトを縫合閉鎖しました。
逆流はかなり減りましたがまだ弁が硬く、完全には取れない状態です。
そこで前尖の中ほど部分を大きく切除し、心膜パッチでこれを置き換えました。
さらに弁を微調整し、逆流試験でほぼ逆流ゼロとなりました。リングをつけて僧帽弁形成術を完了しました。
術後経過は良好で術後10日で元気に退院されました。
退院前の心エコーで、僧帽弁閉鎖不全症は治り、心臓のサイズ機能とも改善していました。
外来でもお元気なお顔を見せて下さっています。
あとは近い将来、健康な赤ちゃんが誕生されるのを楽しみにまつばかりです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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