最終更新日 2019年2月15日
.
◾️先天性僧帽弁疾患とは?
.
生まれた時から僧帽弁に狭窄症(弁が狭くなること)や閉鎖不全症(弁が逆流すること)がある状態です。
成人の先天性僧帽弁疾患(先天性僧帽弁膜症)にもさまざまなタイプがあります。
単なる心室中隔欠損症VSDあるいは心房中隔欠損症ASDを伴うもの、
あるいは弁尖に裂け目(クレフト cleft)があるタイプのもの、
広い意味では扁平胸に伴うもの、
その他があります(事例 先天性僧帽弁閉鎖不全症)(事例:クレフトのある僧帽弁閉鎖不全症)。
.
◾️先天性僧帽弁疾患の治療は?
.
弁の壊れ方が強いと手術が必要となります。
手術では僧帽弁の逆流を治すことはもちろん、合併病変も同時に治す必要があります。
弁は極力、弁形成術を行い、やむを得ない場合のみに弁置換術を行います。
若い患者さんであればあるほど、弁形成術のメリットが大きくなります。というのは人工弁では若い方には不利な側面が多いからです。たとえば機械弁では何十年もワーファリンを飲み続けるつらさがあり、生体弁では10年も持たない恐れがあります。弁形成なら、ワーファリンも不要で長持ちし、再手術を回避できる可能性が高くなります。
.
とくに将来の妊娠・出産を考えておられる女性患者さ んには弁形成術は重要です。
人工弁(機械弁)(右図)をつけるとその方はワーファリンが一生必要になるからです。
ワーファリンを飲んでいると妊娠出産は危険です。胎児の奇形や流産なども増加してしまいます。母体への命の危険性さえあります。
.
ここで僧帽弁形成術とこどもの心臓手術の経験とノウハウが活躍します。
現代は先天性心疾患の手術と後天性心疾患の手術を同じチームが行うことは少ないため、後天性の専門家である私たちは、先天性の専門家の協力を得て、高いバランスで手術をしています。
また私自身が、かつてこどもの先天性心疾患の研修を長い間受けた経験が役に立っています。
.
成人期ともなれば長期間の心臓への負荷のために心房細動が発生していることも多くあり、それに対してはメイズ手術や心房縮小メイズ手術で正常リズムを回復できるようにします。
それによってワーファリンなしで暮らせるようになり、安全性・快適性とも上昇するからです。
つまりしっかりとした不整脈手術の裏付けがあってこそ弁形成術が意義あるものになるわけです。
.
◾️ミックス–––さらに進んだ先天性僧帽弁疾患への手術
先天性の僧帽弁閉鎖不全症では30歳前後で心臓に無理がかかり手術を受けられる患者さんが少なくないため、
安全性を確保しつつ、なるべく早い仕事復帰・社会復帰や精神的な苦痛の軽減をはかるため、
ミックス手術(MICS法)あるいはポートアクセスという小さい皮膚切開での手術を行うようにしています。
それが難しいような複雑な手術の場合でもポートアクセスでのMICSに準じた創が目立たない方法を取っています。
右図の右端が僧帽弁形成術のミックス手術、左端がやや複雑形成や同時手術がある場合のミックス手術です。
僧帽弁疾患では必ずしも先天性であるかどうか最初はわかりにくい時があります。
僧帽弁膜症の診断を受けられた段階でご相談されれば、その詳細は心エコーなどの精密検査の段階で明らかとなり、それはそのまま治療・手術にも役立ちます。
お若い患者さんが多いため、ミックスでの手術は心の傷も小さくなると喜ばれています。
.
お問い合わせはこちらへどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
弁膜症のトップページへ
6. 先天性心疾患にもどる
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。