お便り108: ポートアクセスで僧帽弁と大動脈弁の同時手術を

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弁膜症の手術・治療は他の心臓手術と同様、日々進化を遂げています。

心臓外科医である私自身がその速さに驚いているほどです。

僧帽弁置換術を上 IMG_0330 (2)回る治療としての僧帽弁形成術

大動脈弁形成術が不適当な場合にそれを上回る大動脈弁置換術プラス将来のTAVI(折りたたんだ生体弁をカテーテルでもとの弁の中に入れることで再手術を回避)、

そしてそれらを小さい創で骨も切らずに行うミックス(MICS)なかでもポートアクセス手術

10年前にできなかったことがすでに自分の中で実現していることに驚きと喜びを感じます。

国内外の仲間たちと切磋琢磨して日々勉強し検討し確認していることのおかげです。

下記の患者さんはそうした新しい弁膜症の手術を受けられた方々のお一人です。60歳前後の患者さんで関東からお越し下さいました。

少ない痛み、早い回復と仕事復帰、社会復帰、きれいな創でこころに傷をつけない、こうしたことを実現でき、かつワーファリン(血栓を予防するお薬です)の不要な手術、しかも将来の再手術が回避しやすい、長期プランを考慮した手術ができ、患者さんとともに喜べることを心臓外科医冥利と感謝しています。

以下はその患者さんからのメッセージです。

また外来で再会できるのを楽しみにしております。

 

****** 患者さんからのメッセージ******

心臓弁膜症で手術が必要と言われた方々へ

私の場合は、地元の病院で人間ドックを受けた際に、
最後の問診の時に聴診器を当てられ、「心雑音があるので、
内科で精密検査を受けてください」と言われたのが、
最初でした。

その後、半年の経過観察の後で、症状の進行が見られ
担当医の先生から、「僧帽弁の逆流が激しいので、
このまま放置しておくよりも、今の段階で手術をした方が
心不全などのリスクも解消し、術後の経過も良いですよ」
と言われました。

自覚症状も言われてみれば少し息が切れるかな、程度であったため、
「なんでそんな。しかも心臓の手術?」と愕然としたことを覚えています。
その後、「これも神様がくれた試練」と思い直し、心臓弁膜症の手術とは何か
の情報をできる限り集めました。

その結果、一般的な正中切開に加えて、MICSというダメージの少ない方法があり、
中でもロボットやポートアクセスという方法があることを知りました。

私の場合、できる限り早く社会復帰したいし、家族とのハイキングや
スポーツも楽しみたいとの願望があったため、余程の困難な手術でない限り
MICSでやっていただけるところを探しました。

最初は、自宅近くの病院に狙いを定め、受診したところ、心エコーにて
大動脈弁の方の逆流のジェットも激しいことが指摘され、その場合、
僧帽弁に加えて大動脈弁の方も手当てしなければならないくなるので、
正中切開となる可能性がありますと言われました。

その時は、「仕方がないか」と諦めかけましたが、色々と調べた中で
最も参考になった米田先生のホームページに戻り、
メールでご相談したところ、すぐに
「外来の予約を入れてください。遠方なので一日で必要な検査が済むようにしましよ
う」
との返事をいただきました。

実はドキドキしながら返事を待っていたのですが、大変丁寧で分かりやすい返事を、
しかも米田先生ご本人からいただけたことに感激し、やっと探し求めていた先生に
巡り会えたと思いました。

外来受診の日を迎え、色々な術前検査をした結果、やはり僧帽弁に加えて
大動脈弁の方も手当てが必要で、こちらは弁置換となる可能性があるとの説明を受け
ました。

一か月後には入院し、いよいよ手術となりました。

前日には、家族も含めて、米田先生からインフォームド・コンセントの説明として、
僧帽弁形成術と大動脈弁置換術をポートアクセスで行うことや、
手術に伴う合併症等のリスクについて、詳細な説明をしていただきました。

さて、もうこうなったら「俎板の鯉」です。
自分がこれだと思った方法と、先生と、病院なので、後はすべてお任せです。

ですので、手術前夜はぐっすり眠れ、普段通りに起きてトイレに行き、そうこうして
いるうちに
点滴が始まり、家族に見守られながら手術室に入りました。

手術室の印象は、最新の機器や設備、モニター群や照明、
緊張感とやさしさが感じられるスタッフやドクターの先生方です。
深い眠りだったようで、手術中のことは一切覚えていないですが、
目が覚めたらICUでした。

手術後に、米田先生から家族に対して手術が成功したことの説明があったようです。

手術から二日後には、ICUから一般病棟に移りましたが、ICUに居る時からリハビリが
始まり、
喉の管や頸の点滴も取れ、次々と身軽になっていきました。

手術の時は肺を萎ませていた影響で、最初は少し息苦しさを感じましたが、
日毎に回復するのが分かりました。

一般病棟に移ってからも、赤褐色の痰を出したり、寝返りを打った時に右胸に痛みを
感じたり
しましたが、痛み止めや睡眠導入薬を使うことで、乗り切りました。

手術後3日目にはドレインと尿管が取れ、5日目にはすべての管が取れました。

6日目のリハビリから自転車漕ぎが始まり、病院一階のローソンまでアイスを買いに
行きました。

自分でもこんなに順調でいいのかと思えるほどの回復でしたが、
日毎に気力も充実し、同室の方や看護師の方と冗談を言えるまでになりました。

自宅が遠方とのことで、少し余裕を見て、手術後13日目となる日に退院しました。

高の原中央病院の印象は、病院らしい病院で、清潔さや衛生管理も行き届いており、
スタッフの方々もプロ意識や患者目線でのホスピタリティーに溢れています。

中でもかんさいハートセンターのスタッフの方々はとても活気がありました。
また、私には病院食も大変おいしく感じられ、快適な入院生活を過ごすことができま
した。

この手記を書いている今日は、手術後25日目ですが、昨日は仕事で外出までこなせ
るまでになりました。

この手記が、これから心臓手術を受けられようとされている方々にエールを送ること
ができれば幸いです。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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