お便り113: 5回目の心臓手術と2つのハンディを乗り越えて

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弁膜症を長年お持ちの患者さんの場合、何十年という間には何度も心臓手術が必要になることがあります。

とくに感染性心内膜炎や組織が弱くて切れる場合などに、見られます。

私の病院へは3度目、4度目、5度目などの再手術を求めて患者さんがよく来られます。

地元の病院で危険、ダメと断られてこられるのです。

沖縄、九州や北海道、東京などからも来 184741739られます。できるだけご期待に沿えるよう、頑張っています。

つぎの患者さんは三重県から来られました。

それまで4回手術をうけて取り付けた人工弁がまた外れて逆流しているというのです。5回目の手術が必要となり、心臓のちからも肺のちからも正常の半分にまで低下し、極めて危険な状態でした。大学病院でもこれは無理と匙を投げられた状態でした。

高の原中央病院かんさいハートセンターの私の外来へ来られ、確かに危険性が高く、また薬などで当面は持ちそうなため経過を見ていました。

その間、心不全が次第に進み、苦しくなって、患者さんは何度もお手紙を下さいました。

もとの大学病院の先生方とも協力し、苦しさの原因が心臓にあるのか、肺にあるのかを含めて何度も検討し、やはり弁を治すしか生きる道はない、という結論になりました。

入念に準備を進め、MICSの方法を駆使して小さい切開でほとんど剥離が要らない形で弁の裂けたところをピンポイントで直しました。

患者さんは順調に回復され、元気に退院して行かれました。

是非とも生きたい、そのために何としても病気を克服する、5回目の手術でも頑張る、自分と自分の主治医を信じて頑張る、そうした覚悟と決意の賜物だったと思います。

まさに命を預けて戴いた、心臓外科医としてこれほど光栄なことはありません。そしてご期待に応えることができ、これほどうれしいことはありません。

また外来でお元気なお姿を拝見させてください!

以下はその患者さんが他の患者さんたちのお役に立てるようにと書いて下さったお便りです。

 

****** 患者さんからのお便り ******

米田先生へ IMG_0806b

病との戦い

私は69歳の男性です。

私の今までの病歴を紹介しますと、

子供の時、リュウマチ熱から心内膜炎を併発して、

31歳の時、1回目の僧帽弁開腹術を受け、その時血栓肝炎(ノンA・ノンB型)になり、(この時はまだC型ウイルスが見つかっていなかった)

その後、慢性化して40歳になった頃、ウイルスが活動し出して、大動脈閉鎖不全症とあわせてものすごいしんどい日が続きました。

当時は、C型肝炎は不治の病と言われていたので、大動脈閉鎖不全をとりあえず良くなりたい気持ちから2回目の心臓手術を受けました。

少し楽になったが、C型肝炎がますます悪くなり、仕事に耐え切れず44歳に大型スーパーを退職しました。

45歳の時、インターフェロンが保険適用になり、治療して快復しました。

それから10年間コンビニを経営して、その後56歳から子供の時からの夢であったラーメン店を経営しました。ラーメン店が軌道に乗りだした59歳の時に31歳の手術をした僧帽弁がまた狭くなり、人工弁を移植しました。(3回目の心臓手術)

ところが、術後10カ月頃、人工僧帽弁に黄色ブドウ球菌がついて6か月入院して治しました。しかし、かなり息苦しくなったが我慢してラーメン店を続けました。また、同時期、ワーファリンの飲む量を調整するために減らしていた時、脳梗塞になり救急車で病院に運ばれました。気付くのが早かったため少し障害は残りましたがまた仕事を続けました。

63歳頃から顔色が土色になり、浮腫みがひどくなり、64歳にギブアップして仕事を辞め、治療に専念しましたが、徐々に悪くなり、不整脈の治療のためペースメーカーを入れてもらったりしたが、59歳の時の人工弁の縫目からの逆流(人工弁感○○症の影響)がひどくなって、67歳の時4回目の手術を受けましたが、私はどうも体質がくっつきにくいためか、だんだん心不全が進行して色々病院にあたり、断られました。

そんな時、3年前にテレビで放映されていた心臓手術の様子を思い出し、名古屋のハートセンターの米田先生を尋ねましたが、1年前にかんさいハートセンターを高の原中央病院内に設置されたとのことで、半年位通院して5回目の手術を23日前に受けました。

おかげで、縫目の逆流を治すことができました。心臓の機能がしっかりして、腎機能も利尿剤を飲まなくても済むようになりました。

術前は心臓が普通の人の50%、肺の機能も50%でしたが、心臓機能はもっと良くなると思っています。肺の機能も時間はかかると思いますが、それにつれて良くなるよう呼吸を訓練したり、リハビリを積極的に行っています。

人生は一度限りです。良くなりたいという強い気持ちが大切です。

それには、なんとか良くしてやろうと事前検査の徹底、丁寧で心臓手術の豊富な医師を探して手助けをしてもらい、良くならないと損だという強い意志が必要です。

なんとかなりますので、最後まで頑張りましょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り112: ポートMICSの僧帽弁形成術でゴルフ復帰へ

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僧帽弁閉鎖不全症の治療として僧帽弁形成術がベスト!というのはかなりの患者さんたちの間で常識になりつつあるようです。

近くの病院で弁置換を勧められてからこれはおかしい P1120179bとご自分で調べ、形成を確実にやってくれる病院を訪ねる患者さんも増えました。

同様におなじ弁形成なら早く仕事やスポーツに復帰したい、そのためにミックス手術ポートアクセス手術だ!と考える方々が増えました。

そして自分が納得できる治療や方針を立ててくれる医師を求めて飛行機ででも移動するという方が増えました。

下記の患者さんもそのひとりで、みずからしっかりと病気に立ち向かい、勉強し、そして連絡を取って来られました。

手術では僧帽弁前尖の広範囲が逸脱し、形成術としてはやや複雑でしたが、これをポートのMICSできれいに仕上げることができました。

せっかく九州・宮崎からお越し下さっただけに、十分な治療と、遠方がハンディにならないような配慮をし、余裕ができるまで院内で心臓リハビリもこなして頂くようにしました。

まもなく春がやってきます。ゴルフやスポーツなども楽しんでいただければうれしいことです。

東京オリンピックの観戦は余裕でお楽しみ頂けるものと存じます。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

****** 患者さんからのお便り **********


特任院長 米田正始 様
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いつも医療に献身的に取り組んでおられる米田正始先生をはじめ、増山慎二先生、
小澤達也先生、村西菜苗先生そして麻酔科の先生、看護師の方々等改めて敬意を
表します。

入院から退院まで約29日間、不快な気持ちもなく治療に専念できたこと心より感
謝申し上げます。

ありがとうございました。

神の手に委ねたこの体、お陰様で東京オリンピックまではしっかりと見届けられ
るのではないかと密かに喜んでいます。

また、諦めかけていたゴルフも来年いや今秋にも本格的にできるのではないかと期待をふくらませています。

お会いできそうもありませんのでお手紙でお礼申し上げます。

本当にありがとうございました。

医療充実・発展のため、益々ご活躍されることでしょう。

どうか体だけはご自愛ください

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傷跡が目立たない心臓手術【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月24日

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◾️昔は大きな傷跡は良い事だと

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心臓手術はかつては MedianSternotomy傷跡が大きいもの、というのが常識でした。

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40-50年ほど昔、なにしろ生き残ることができれば良しとしよう!というレベルからのスタートだったからです。

胸骨正中切開といって約25センチ長の傷跡が胸の真ん中に残りました(右図)。

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◾️傷跡が小さいミックスの時代に

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その後心臓手術は日進月歩、安全IMG_0229b2性が高くなり、術後のQOLつまり生活の質が問われるようになって傷跡が目立たない手術つまりミックス手 PostAccess3術(MICS)が脚光をあびるようになりました(左図)。

 

左写真はMICS心臓手術後の傷跡です。

女性の場合は乳腺の下にあるしわのところで皮膚を切開するようにしているためほとんど見えません。

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その詳細はこちらのページをご参照ください。

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◾️傷跡が小さい手術の盲点・注意点

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ここで大切なこと、それは十分な安全性の確保のうえのミックス手術でなければならないということです。

言い換えれば、高い技術と熟練度が確保されていることが大切です。

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私たちは高々4年あまりの間にポートアクセスの本格的ミックス手術を160例近くこなした、熟練チームです。現在は毎週行っています。

たとえば写真右は僧帽弁形成術と大動脈弁形成術を同時にミックスで行った患者さんの傷跡です。

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僧帽弁形成術を例にとってみれば、ミックス手術をやっていると言ってもごく簡単な形IMG_0365DVPb成だけしかやっておらず、それ以上の手術では通常の大きな傷跡でやっている病院もあります。

これは心配です。術中に何か小さいトラブルでもあれば対処できないという恐れが多分にあるからです。

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私はかつて修練時代に恩師からこう教えられました。一段上の手術ができるようになって初めて普通の手術ができるのだ、と。つまり何か想定外のことがあっても、余裕をもって対処できる、ということです。

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◾️美容目的だけでないミックスも

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美容目的や早期の仕事復帰、スポーツ復帰、クルマ運転再開などのために骨を切らず傷跡が目立たないミックス手術を行うことが多々あります。

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しかし私たちは純粋に安全性を高めるためのミックスもやっています。

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たとえば5回目の心臓手術でアプローチできないほど強い癒着があるときに、それを避けるルートとしてのミックスですね。こうした重症患者さんを救命するためのノウハウの蓄積が普通の患者さんの安全向上に役立つと思うのです。

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患者さんにおかれましてはこうしたことも考えて病院を選ばれることをお勧めします。

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お便り109 巨大な心房中隔欠損症などのためMICS手術を

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心房中隔欠損症(略称ASD)はそう怖くない心臓病と思われている 142991182ふしがあります。

しかしその穴が大きく、多量の血液が漏れたり、心臓や肺が壊れてくると危険なことさえあるのです。

つぎの患者さんは50代の男性で働き盛りの中、心房中隔欠損症のため心不全が発生し苦しくなって遠方から米田正始の外来へ来られました。

穴は巨大で、もれる血液が多いことから右心房や右心室も巨大、そのため三尖弁も付け根が広がり強い逆流つまり三尖弁閉鎖不全症を合併していました。心房細動などの不整脈も併発していました。

患者さんが安全に確実にお元気になれるMICSの皮膚切開よう、そして早い時期に仕事復帰ができるよう、ミックス(ポートアクセス)で手術を行いました。

巨大な穴を患者さんの自己心膜で閉鎖し、三尖弁を形成し、右心房のメイズ手術を行いました。

術後経過は不整脈などのため少し時間を要しましたが、おおむね良好で日一日と回復され、お元気に退院されました。

外来でも体力がついてきておられることがわかり、喜んでいます。

以下はその患者さんからのお便りです。これから楽しく活発に仕事や楽しみに熱中してください。

***** 患者さんからのお便り*****

 前略 IMG_0626

朝夕はずいぶんと涼しくなりました。米田先生はじめハートセンターの皆様にお

かれましては、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。

この度は私の心臓手術に関しまして本当にお世話になりありがとうございました。

当初はあまり自覚症状も無く病気に対してただ漠然と考えているだけで月日が経
つばかりでした。

しかし、二年ぐらい前から動悸、息切れなどを感じるようになり、地元病院の先生からも手術の事を促がされるようになり、不安も募ってきて、病気に対して真剣に向き合っていかねばと思うようになりました。

一年前ぐらいから自分の病気がどのようなものであるか、又、それの治療方法、手術と調べるようになり、今年の春先から手術をお願いする病院、先生を捜し始めました。

っと決めかねていた時に、七月初め、米田先生並びにかんさいハートセンターの
事を知りました。目の前が明るくなり、進むべき道が現れたと思いました。そし
て、ここでお世話になり手術受けようと思いました。

とは言っても人生で初めての入院、手術。しかも心臓という事で不安が無かったとは言えませんでした。

も先生に初めてお出会いした時から、判りやすい説明と身近に感じる先生の人柄
で、何の不安も無く手術に望む事ができました。

術後も何らかの症状が出る度に、先生方の説明や看護師さん達の暖かい対応により無事退院を迎える事ができました。

一カ月余りの入院生活を、このような環境の中で、送らせてもらったこと、本当にありがたく思っております。

今退院を終え、長い間頑張ってきてくれた心臓にお礼をいいたい気持ちで一杯です。そして、今回の手術によって、治していただいた心臓とうまく付き合っていけたらと思っております。

これからも、このハートセンターが多くの患者さんを救ってくれる事と信じております。皆様の御健康と御活躍をお祈り申し上げます。

本当にありがとうございました。

草々  

 

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MICS SUMMIT 2014

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この6月21日に大阪で恒例のミックスサミットが開催されたため参加しました。

これまではサミット IN OSAKAとして内容ある研究会が大阪にて行われており、私も参加して楽しいひと時をもっていましたが、今回から全国区の研究会として正式に発足したのです。

 IMG_0450
会長はこの会を育てられた大阪大学の澤芳樹先生で、最近話題の新しいグランフロント大阪にあるナレッジキャピタルにて開催されました。

関西胸部外科学会の翌日で皆さんの勉強疲れがちょっと懸念されましたが、なかなかどうして、熱い議論が多数でて大変盛り上がったように感じました。

朝一番はビデオセッションで心臓病センター榊原病院の都津川敏範先生が前側方開胸によるMICS₋AVRを、大和成和病院の菊地慶太先生がMICS₋CABGを話されました。

それから「MICSをはじめよう」という特別企画がありました。大分大学の宮本伸二先生がその開始時の苦労と工夫を、東京医大の杭ノ瀬昌彦先生はMICS₋AVRに進むにはというテーマで、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生は内視鏡下MICSへのステップアップ、そして心臓病センター榊原病院の坂口太一先生はMICS₋CABGをはじめるにはというテーマでお話されました。

いずれもこれからこうした心臓手術を始めようという先生方には参考になったものと思います。ただ短時間の発表を聴くだけでは、通常と少し違う状況でおこるさまざまな問題や合併症とその対策までは手が回らず、やはり時間をかけてチームを育て、熟練させるという作業が不可欠と感じました。

たとえばこの方法は良く見えるよと言われて、はいそうですかとやってみたら、全然見えない、さあ困ったどうしよう、というのが熟練していないチームではよくあります。私もポートアクセス手術の経験量が100例を大きく超えて、僧帽弁や三尖弁だけでなく大動脈弁もこなすようになって、さらにさまざまな心臓手術や再手術などもこなすようになって、本当に安心してできるようになったという覚えがあります。

そこからは趣向をかえて国際セッションとなりました。

イタリアのCampus Bio-Medico医科大学の Francisco MusumeciはヨーロッパにおけるMICSの現況を解説されました。大変幅広くやっておられるのは知っていましたので、あとで細かいところを質問などして充実したひとときでした。中でも開胸時から人工心肺に乗せることで肺を保護するというのは、体への侵襲つまり負担を増やすという一面はあるものの、肺にはやさしい、検討の価値があると思いました。1年ほど前から考えて来たのですが、そろそろ実行するときが来たように感じました。

オーストラリア・ブリスベーンの Prince Charles Hospitalの Trevor Fayers先生は弁膜症のミックスというテーマで話されました。私にとって懐かしの地であるオーストラリアでも盛り上がりがみられるようで、ロボットもぼつぼつ導入されているとのことでした。ひとつご質問をしました。オーストラリアは私的保険と公的保険の二本立てで前者は保険料が高いが選べる病院や医師が多く、公的保険ではその逆なのです。万民の平等が原則である日本では受けない制度ですが、ようするにお金持ちは多少の便宜を受ける代わりにより多額のおかねを出し、保険制度じたいが潤うのです。聞いてみますとロボットなどの高額医療はすべて私的保険の患者さんとのことでした。日本ではこうした高額医療を進めるのは患者さんの負担が極端に増えて大変だとあらためて思いました。

それからアメリカはNorthwestern大学の畏友、Chris Malaisrieが低侵襲のAVRを解説されました。これは関西胸部外科学会のときと同じテーマでしたので、もう少しつっこんだ質問をしてみました。彼の方法は私たちのポートアクセス法よりは創も目立ち社会復帰も遅れますが、動脈硬化が強い患者さんにも使えるという利点があり、私はこれまでも似た方法を使っていますが今後導入してみようかと思いました。患者さんの状況状態に合わせて一番適した方法を選ぶ、そうしたラインナップを増やせるという意味で有意義なお話でした。

ドイツはLubeck大学の Thorsten Hanke先生はドイツにおけるMICSを概説されました。新進気鋭のためかまだ三尖弁形成術などはやってないということで、もう少し頑張っていただきたく思いました。僧帽弁だけでなく必要に応じて三尖弁も治せることが患者さんの長期予後の改善に役立つからです。

午後の後半は臨床工学士(ME)、麻酔科、リハビリ、内科の先生方からそれぞれのお立場からの発表がありました。どれも優れた内容でした。とくに心臓病センター榊原病院のME長である畏友・中島康佑君の安全モニターのお話は出色のできで、これからこうした優れたMEさんが活躍してくれれば医療はさらに良くなるという意味でも素晴らしかったと思います。私のところのMEさんたちも立派に頑張ってくれていますが、彼ら同志の交流を図りたく思いました。プロとして最高の仕事をする、国際的にも活躍する、こうしたコメディカルが増えていくのが楽しみです。

また慶応大学循環器内科の鶴田ひかる先生は内科からみた適切なMICSはというテーマで心エコーの専門的立場からお話されました。見事なエコーと深い読み、鋭い考察、さすがエコーと弁膜症のスペシャリストと賛辞を贈ろうと思いました。長崎大学の江石清行先生が私が申し上げたかったことを全部述べて下さったため私は何も申しませんでしたが、私自身、かんさいハートセンターを立ち上げてこうした心エコーの本物の専門家と初めて一緒に仕事するようになってからの感動をあらためてかみしめていました。

ともあれこうしたチーム医療は極めて重要で、参考になりました。最後に慶応大学の岡本一真先生がMICSの合併症と注意点を話しされ、これまでの経験を活かすという観点から活発な議論がありました。私も発表で気になった左室破裂のケースについて質問討議いたしました。こうした負の側面を真摯に議論し、再発予防や的確な対処法を平素から鍛えあげておくことが何より重要かと思います。大阪大学の西宏之先生はレジストレーションの必要性を話しされました。これから重要になると思います。

日本の現況つまり心臓手術を行う施設が多すぎて、弁形成やミックスなどをあまりやっていない施設が大半という状況のなかで、これから安全にこれらをやっていくためには、ほんらい施設集約つまり病院を束ねて数を絞るという作業が必要です。しかしそれは各病院や大学の事情がありなかなか進みません。現実には治療成績が良い施設がより数を伸ばし、良くない施設は閉鎖して結果的に集約化が進むというのが日本の現実です。その過程で患者さんついで若い先生方やコメディカル諸君に迷惑がかからぬように守る、これが大切と感じました。

真剣でも楽しい勉強と交流をもてたMICS SUMMITでした。今回当番世話人の澤先生、お疲れ様でした。素晴らしい会をありがとうございました。

 

平成26年6月22日

米田正始 拝

 

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バルサルバ洞瘤へのミックス手術 【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月28日

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◾️バルサルバ洞瘤へのこれまでの手術は

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バルサルバ洞瘤は比較的珍しい病気ですが、 バ洞破裂いったんこれが破裂すれば、患者さんは急性心不全やショック状態となり、いのちにかかわることさえあります。

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このバルサルバ洞が破れれば、多くの場合手術が必要です。右図にその破裂パタンを示します。しかしバルサルバ洞組織は弱いため、手術の後の再発、再破裂の報告が少なくありません。

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しかもこのバルサルバ洞瘤の手術はほとんどの病院で、胸骨正中切開で手術が行われています。つまり皮膚切開は通常どおり胸の真ん中で大きな切開、たとえば長さ20-25㎝にもなります。

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これまでは安全第一、内容第一ということで創は気にしないという風潮が強いでした。現在も同じです。

しかしバルサルバ洞の手術を受ける患者さんの多くは10代ー30(40)代の若者です。そうした若者にあまり大きな創で、心にまで傷をつけることを私は好みません。

私たちは安全性ときれいな創を両立させたいということから次の工夫を重ねて来ました。

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◾️そこで工夫を、まず安全性から

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%e8%ab%96%e6%96%87264figure%e3%81%8b%e3%82%892まず安全性では、世の中でときどき見られる、バルサルバ洞瘤を修復したところのすぐ隣が破れて病気が再発したという問題を大動脈基部再建の方法をもちいて解決しました。

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この新しい方法はすでにトップジャーナルにも掲載され、今後の展開が期待されています(英語論文264番をご参照ください)。右図にその方法の一部をお示しします。つまりバルサルバ洞の脆弱な組織を使わずに、しっかりした組織(例えば弁輪など)だけを活用して穴を遠巻きに閉じるのです。

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これまで全例、きれいに一発で修復することができています。中には他病院で手術を受けたがうまく行かず、私たちのところで治った患者さんも複数おられます。

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◾️ついで目立たない小さな傷跡の手術を

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IMG_0069bつぎにきれいな創について、この安全なバルサルバ洞の修復再建法をきれいな創でできるように工夫して来ました。そこでポートアクセス法やその他ミックス法を応用して正中で小さい皮膚切開で手術できるようにしました。

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この結果、若い患者さんはのびのびと夏服やTシャツを楽しめるようになりました。近い将来はポートアクセス法でも手術できるかも知れませんが、現在のところ、あまり無理はせず、確実に、かつきれいにというポリシーで上記のミックス手術を行っています。

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患者さんからは、バルサルバ洞瘤破裂という難しい手術をこんなにきれいな創で治してもらえてうれしいとよく言われます。

今後もこうした方針で手術法を改良していくつもりです。皆様のご意見を頂けましたら幸いです。

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患者さんの想い出はこちら:

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右室二腔症に対するミックス手術(MICS法)――こころの負担を軽くするために 【2019年最新版】

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最終更新日 2019年5月26日

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◾️右室二腔症の手術は

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右室二腔症は心室中隔欠損症VSDのために右室の中に筋肉が異常に張出し、図右室二腔症右室が2つの部屋に分かれたかのように見えるため、この名前があります。

この筋肉の張出しがひどくなり、右室の中を血液が流れにくくなると手術が必要になります。

手術ではこの右室内の異常心筋を、他の構造物を守りつつ、きれいに切除することと、もともとの原因である心室中隔欠損症VSDを閉鎖する必要があります。

これらをきちんと治してこそ、元気に安全に永年暮らせることになります。

こうした手術は通常は胸骨正中切開つまり胸骨を全長にわたって縦に切って心臓に到達することで行われます。そのため皮膚も胸骨の長さ分、切開することになり、長さ25cm前後の大きな創になることが一般的です。

患者さんが比較的お若い方が多いため、大きな創はこころの創にもなりますし、胸骨を全部縦切りすると治るのに2-3か月もかかり、その間、仕事に支障があることもあります。とくにちから仕事は難しくなりますし、クルマの運転もやりづらくなります。

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◾️右室二腔症へのミックス手術

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そこで私たちはミックス手術つまり小切開手術をこの右室二腔症の手術にも導入し、患者さんの高い満足度を頂いています。

Lower Hemisternotomy4右室二腔症では心臓のやや左側の視野が必要となることが多いです。そこでポートアクセス法のように胸の右側からアプローチするのは視野が悪く危険なため、胸骨部分正中切開という方法をもちいています。

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胸骨の下半分ほどを切って心臓にアプローチします。

左図のような切開です。

そのため胸骨は手術後も安定性が良く、術後も早い時期に痛みが軽くなり、骨もより早く治ります。おまけに創が小さく位置も低いため、夏服でも創があまり見えません(心臓手術・事例:右室二腔症へのミックス手術)。

それだけのびのびと夏服も楽しめるわけです。 medianSternotomy

ちなみに右図が通常の皮膚切開です。けっこうな違いがあります。

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心臓と胸骨の位置関係に個人差があります。どうしても胸骨を全部切らざるを得ない場合は皮膚を小さく切開し、上記に準じた利点が得られるようにしています。工夫の積み重ねによって、上記の胸骨部分切開よりも皮膚の傷跡は小さく、うまい使い分けを考えて選んでいます。

心臓手術の患者さんが後日、手術して本当に良かったと言って頂けるよう、こうしたミックス手術を含めたさまざまな努力を行っています。

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  心臓手術と美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
  

患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん

お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

お便り67: MICSで右室二腔症の手術を受けられた患者さん

 

 

 

 

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冠動脈瘻(ろう)や冠動脈瘤に対するミックス手術 【2019年最新版】

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最終更新日 2019年1月6日

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◾️冠動脈瘻の手術

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冠動静脈瘻、または冠動脈瘻あるいは冠動脈瘤の手術にはいくつかの大切なポイントがあります。

そもそもこの病気ではつぎの2つの問題点があります。

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冠動脈ろうで血液が奪われるのは、心臓の筋肉にとっては泥棒にお金を取られるようなものです1.冠動脈の血液は心臓の筋肉つまり心筋へ流れて、心筋は酸素や栄養を受け取り、パワーがでて心臓としてポンプ機能を発揮します。

この心筋へ行くべき血液が静脈その他へ奪われるため、心筋が虚血つまり酸欠状態となります。

その結果として狭心症(胸が痛くなります)や心不全(息切れなどが起こります)となってしまいます。

患者さんの中には左室のパワーが著しく低下している方があります。

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Aneurysm rupture2.冠動脈から静脈その他へ血液が逃げるため、逃げた分だけ血流が増えて、冠動脈が太く大きくこぶのようになります。

いわゆる冠動脈瘤の形になります。

これがあまり進んでいくと、瘤が破裂して突然死などが起こることがあります。

大動脈などの瘤(右図)と同じです。

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6629578治療は冠動脈と静脈あるいは肺動脈などをつなぐ異常血管をすべて取り去るか閉塞させることです。これによって上記の1.と2.とも解決します。

軽ければお薬で行けることもあります。

上記の1.と2.が顕著になると手術が必要となります。

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◾️冠動脈瘻へのミックス手術

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冠動脈や異常血管の位置や状態によって手術法は異なります。

異常血管を閉塞させる、手短には潰すことで安定化が図れる場合は、体外循環を使わないオフポンプの形で、手術ができます。

Lower Hemisternotomy MedianSternotomy私たちの経験では、こうしたケースの多くはミックス手術で骨を部分的に切り、

皮膚切開も通常より小さい胸骨下部正中切開が多くの場合、使えます。

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右の図が通常の正中切開、左図が胸骨部分切開の創です。

皮膚の創だけでなく、骨も一部しか切りませんのでさまざまなメリットが生まれます。

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178560395これによって1.早い仕事復帰、社会復帰が図れ、2.痛みの軽減と創の治りの促進、3.ばい菌による感染症の予防などに役立ちます。

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◾️冠動脈瘻のため大きな冠動脈瘤になっている時は

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冠動脈や虚血つまり心筋の酸欠状態などによっては冠動脈を形成する aneurysmorapphyという術式になることもあります。瘤を切り開いて、中をきれいにしてからちょうど良いサイズまで瘤を小さくするのです。

こうした場合でも極力オフポンプバイパス手術の方法をもちいますが、それが危険な部位や状況では無理をせず、安全に体外循環(人工心肺)をもちいてゆうゆうと手術することもあります。

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◾️まとめ

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こうして高い成功率と低い合併症率を達成しつつ、痛みや苦痛の軽減や早い社会復帰、さらにミックスをうまく活用することで美しい美容効果を目指すわけです。

この病気は若い患者さんも多いため、こうした方針とくにミックスでの手術は一層喜ばれています。

冠動静脈ろうの患者さんには前向きに、安全を確保する治療法をご検討頂ければ幸いです。

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参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法
  

患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん

お便り62: 同、弁形成と冠動脈バイパスを受けた患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

 

 

 

 

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例: 右室二腔症をミックス手術で根治

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右室二腔症は生まれた時からの病気で、右室の中にくびれがあり、血液の流れが悪くなります。

大人になってそのくびれがきつくなり、次第に悪化することがあります。

あまり進むと心不全や不整脈、突然死などの原因にもなります。

患者さんは53歳の女性で、関西の大病院から紹介を受けて来院されました。

5年前に不整脈のためカテーテルアブレーションつまりカテーテルで悪い心臓神経を焼く治療を受けておられます。

右室内のくびれが強くなり、くびれの手前側の圧が血圧を大きく超えるという危険な状態で手術を希望して来られました。くびれの部分での圧較差は126mmHgにも達していました。

実際、運動時などに息切れや動悸が強くなるなどの症状がでていました。

また右室圧が上がり過ぎて、右室から左室へ血液が流れる、右―左シャントと言われる状態ではちょっとした足の静脈の血栓でも脳梗塞などが起こりやすくなります。

患者さんが仕事で忙しいこともあり、心臓手術後の痛みが少なく、社会復帰・仕事復帰が早いミックス手術にて右室二腔症と心室中隔欠損症VSDを治すことになりました。結果的に創も小さく、夏服でもあまり見えず、術後の心臓リハビリなどもやりやすいため、前向きに検討するようになられました。

RVOT心筋切除前手術では長さ10㎝あまりの小さい創で、胸骨も部分的にしか切らないようにしました。

人工心肺のもと、心臓を一時止めて右房と右室流出路を切開して、中へ入りました。

まず右房から三尖弁ごしに右室の中を調べました。VSDは右房からは見えない位置にありました。

そこで右室流出路から右室を見ますと、右室心筋が高度に肥大し右室の中がほとんど見えないほどになっていました

(左上図、この向こうに狭窄があり右室の中がほとんど見えません)。

RVOT心筋切除後そこで右室の異常心筋を順々に切除し、しかし三尖弁の乳頭筋には影響を与えないように注意しつつ、狭窄を完全に取り去りました

(右図、異常心筋を多量に切除し、右室の入口にある三尖弁乳頭筋まで見えています、広々としました)。

狭窄をある程度以上残せば、狭窄が狭窄を呼び、将来また同じ二腔症が再発する恐れがあるため、完全に狭窄を解除したわけです。

VSD1+2閉鎖中VSDは右室のやや肺動脈弁に近い、しかし肺動脈弁から少し離れたの筋肉にぽっかり空いており、これを直接閉鎖しました。

右室の切開部にはドーム状の天井のようなパッチで閉鎖しました。

この結果、右室内の狭窄は完全に取れ、直接圧測定しても圧較差はゼロという良好な結果でした。

RVOTパッチVSDもきれいに閉鎖していることが心エコー・ドップラーで確認できました。

術後経過順調で、ミックス手術のおかげで痛みも軽く、運動も順調に進み10日と経たず元気に退院されました。

ミックス手術すなわち小切開低侵襲手術は美容上の目的で行われるような印象がありますが、それだけではなく、痛みの軽減や早い社会復帰、そして合併症の防止にも役立ち、安全性の向上にもつながるのです。

もちろんミックス手術の創の小ささから、「夏服が着れる」というのは術後の楽しみが増えるというものです。

患者さんは遠方からまた外来へ定期健診にお越し下さるとのことで、再会を楽しみにしています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り78 ベントール手術をミックスで受けられた患者さん

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大動脈基部拡張症心臓手術のなかでも大きめの手術が必要です。

IMG_5500bなにしろ伸びきった大動脈の根っこ部分を人工血管で置き換え、左と右の冠動脈の入口部分をいったん切り離し、それを人工血管にぬいつけ、そして大動脈弁を形成または置換することが必要だからです。

下記の患者さんはまだ30台のお若い女性で、この大動脈基部再建を、小さい創のミックス手術で希望して山口県からお越し頂きました。

手術中は、弁が予想以上に肥厚し短縮しており、患者さん自身の弁を温存するデービッド手術は不適当であることが判明しました。

そこで生体弁をもちいたベントール手術を行いました。

将来、この生体弁がいつの日か壊れたときに、再手術を回避しやすいよう、TAVIつまり折りたたんだ生体弁をカテーテルで植え込む方法がつかえるよう、十分なサイズの生体弁を取り付けました。

創もかなり小さく、夏服でも見えないレベルにとどめました。手術中の安全性を損なわぬよう、さまざまな工夫を凝らしました。

術後経過も順調で、遠方のため余裕をもって帰宅いただけるよう、ややゆっくり入院して戴きましたが、手術後10日で元気に退院されました。

 

*************患者さんからのお便り***********

米田先生へ

先日土曜日に退院させていただくことができました。

傷も本当に小さく痛みもほとんどありませんし、帰ってすぐに軽い食事の用意が出来
ることに自分自身驚いてます。

術前は脈100ぐらいになると心臓あたりがドクンドクン暴れて脈が速くなるのが怖いぐら
いでしたが、

術後は常時脈100近くありますがドクすら感じないので楽でよくなったんだあと感じるのと

、昨日久しぶりに自宅の湯船でゆったり浸かり苦しさを感じることがなくスーと息が入る感じをうけ改めて手術してもらってよかったと思ってます。

 
家事がリハビリで日に日によくなってるのを感じ嬉しいです。ご縁を頂いて本当にあ
りがとうございました。

またハートセンターさん全スタッフさんの志の高さに感銘をうけたのと、各部署での
職人魂のようなものを感じることができ私も随分元気を戴きました。

徹底したお掃除・配膳の方々の優しいあいさつ、知識経験豊富な看護婦さんに相談し
て癒され、先生方からはパワーをもらいみなさんのお蔭で今日の元気な一日があると感謝してます。

米田先生は超ご多忙と思いますが、お身体だけはご自愛下さい。

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その後、上記のメールをホームページに掲載してもよろしいですかとお伺いしたところ、次のお返事をいただきました

********患者さんからのお返事メール*******

米田先生へ

大変ありがたいメールいただきまして、感謝で一杯です。

今朝も昨日より階段がスラスラなことに驚いています。

ホームページ掲載は同じ患者さんとして安心して手術を考慮し受けて戴ければ
幸いです。

実際に私もお便りのコーナーでどれほど勇気付けられ助けられたか
わかりませんので、どうぞご利用ください。

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