心臓外科の名医とは―外科医とチームと病院と

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94715374心臓外科の名医とは、という問答をよく耳にする。

外科医(というより医師)なら誰しも名医になりたいと思うであろうし、そのための努力も皆していると思う。

著者もより多くの重症患者さんを助けられる心臓外科の名医を目指して、飽くなき探求を続けるひとりである。

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しかし現実にそう言われている人たちは多くない。

これまでの海外や国内、国内でも大学病院や国立病院あるいは私立病院、その中でも専門病院などでの経験と、尊敬する恩師や友人たちの姿をもとに考えてみた。

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心臓外科の名医を支える要因は

手術がうまい、手術ができる、これが基本です 1.手術がうまい:

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うまさの内容には早い、質が高い、生存率が高い、合併症が少ない等などのファクターがある。

うまさを支えるものとして、臨床経験量、平素の勉強量や練習量、誰に師事するか、横の交流の多さ、常に反省熟考する、部下や仲間の意見をくみ上げる、何より患者の声や所見に注意するなどが挙げられる。

さらにこれからはポートアクセス法などのミックス手術に熟達していることも必須であろう。

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また周辺部の要因として麻酔の導入時間が短い、術中の管理がしっかりしている、なども含まれる。

さらに言えば麻酔医を、あるいはお互いをうまく育てる腕前ともいえようか。

もう一つの周辺部要因として周術期管理がうまい、あるいはその教え方がうまい、なども挙げられる。

真の意味での安全管理も重要要素である。

また心臓手術の生存率が高く合併症が少ないという要素の中には、あまり術前状態の悪い症例からは逃げるなどの患者選択という要素も入る。

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リスクの高い症例はオペしないという方針で行くなら、見かけの治療成績は格段に向上する、しかしそれが本当の治療成績を反映しているかどうか、疑わしい。

そこでリスク解析が重要となる。

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2.チームワークや雰囲気が良い:

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 それは心臓外科医と麻酔医、看護師や技師とのチームワーチームワークは大切です。チームワークとは仕事をしたくない一部の人たちに迎合することではありません。患者さんから逃げず、常に皆で全力を尽くす、協力して努力する、これがチームワークです クが良い・看護師や技師の仕事の質が高い・いつでも動けるなどの要素がある。

内科との連携はもちろん重要である。

平素から仲間の力が発揮できるような雰囲気づくり、ユーモアのセンス、仲間への愛情が大変重要である。

このあたりは欧米では昔から常識であるが、日本でも必須になったように感じる。

病院ヘッドとくに経営者の姿勢など、病院の体制も大いに関連する。

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たとえば病院ヘッドや経営者が、緊急手術は絶対断らない、という哲学をもつ病院ではその共通の目的に向かっておのずとチームワークができて行きやすい。

チームワークを育てる教育努力や親睦努力がなされればより早くチームは出来上がる。

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一方、病院の指導層がそうした姿勢をもたない状況の時にでも、心臓外科医が献身的に周辺とのコミュニケーションを図り親睦を深め協力を確保するならそれなりに成り立つが無駄は多い。

限りある人生の貴重な時間を見識のない、仕事をしたくない方との交渉に浪費するのはいかにも惜しいと思うのである。

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救急や緊急は断らない、それだけの足腰・実力と理念・決意のある病院こそ患者さんを救えます 3.病院のシステム・体制が良い:

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手術室やICU(集中治療室)あるいは病棟がいつも迅速かつ協力的に動ける、

メンバーが固定されており気心が知れている、

麻酔科がどのような時にもどんな状況でもサポートしてくれる、

内科や放射線科その他あらゆる部門がきびきびと気持よく動いてくれる、

などなどがある。

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公務員意識、組合意識は結構だが、勤労者第一主義の病院というのは、患者は第一でないということに他ならず、心臓外科の名医も育ちにくくなる。

また手術待ち時間や入院待ち時間が短いなども極めて重要である。

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たとえ心臓手術の成績が良くても待ち時間が長すぎると、その間の危険性が高くなり、せっかくの成績が帳消しになる場合もある(心臓外科医の日記ブログ 2010年1月14日 手術の待ち時間 参照)。

ハイリスク患者を断って手術成績を上げるなどは大問題である。

外科医がオペで頑張ろうとしても麻酔医の段階でオペを拒否されるような病院では全体が崩れる。

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もちろんこれらは誰が悪いとか誰のせいであるなどの論議ではない。

たとえば麻酔医の待遇がいざという時に患者さを助けることができる病院、これが大切です 悪いことが真の原因であることもあるし、大学で出世しようとすれば今も研究業績が重要であるため臨床に力が入らないのである。

ここでは心臓外科や心臓血管外科の名医を支える要因を論じただけのことである。

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循環器専門病院や循環器に力点をおいた病院では上記の1.-3.とも成り立ちやすく、とくに私立の施設では一層有利である。

病院とくに民間病院では患者の支持がなければ経営が成り立たないため、おのずと患者第一主義になり、心臓外科の名医を求める土壌ができるからである。

何といっても固定メンバーで熟練度が高くファミリーの雰囲気になっているのは有利である。

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公立でも多大な予算が得られる施設では名医育成の効率は良いかも知れない。

手術数を少なく抑えれば見かけのチームワークは保てるかも知れないが、外科医やチームの成長にブレーキがかかり名医と逆の方向へ進みかねない。

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メディア報道

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◆参考ページ

心臓手術とはどういうもの?

そのこれからの方向

その名医とは

さあ手術と言われたら?!

安全に必要な症例数は?

病院の立派さと心臓外科の立派さは別?

対象となる病気は?

医師の選び方

私のお勧めは?

術後の社会復帰について 

美容について

必要な検査

術前のオリエンテーション

米田正始が考案したオペは

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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