最終更新日 2025年9月17日
.
◆ 術後の社会復帰・運転復帰はなぜ重要か
.
心臓手術を受けた患者さんから最も多くいただくご質問のひとつが、
「いつ仕事に復帰できますか?」「車の運転はいつから安全ですか?」 というものです。
心臓手術の目的は「命を救う」だけではありません。
その先にある 社会復帰、仕事復帰、趣味や運転の再開 こそが、生活の質(QOL)を取り戻す大切な目標です。
.
復帰までの期間は、以下の要素によって左右されます。
-
手術の内容(弁形成術、冠動脈バイパス、大動脈手術など)
-
術前の心機能と術後回復のスピード
-
年齢・体力・合併症の有無
.
◆ 一般的な復帰スケジュール
.
標準的な胸骨正中切開(胸の中央を切開する方法)の場合、以下が目安となります。
-
術翌日:立位や歩行開始
-
術後10日前後:退院
-
デスクワーク:術後1~3週間で再開可能
-
軽い家事や短距離運転:術後3~4週間から
-
重労働・長距離運転・荷物運搬など:術後2~3か月以降
.
👉 体力のある方では術後5日目で職場復帰された例もあり、逆に高齢や合併症を持つ方は回復に時間がかかります。
私たちは患者さんの状況に合わせ、たとえば術後数日で短時間だけ職場に顔を出す→再び入院で休養といった柔軟な対応も行っています。
.
◆ MICS(小切開低侵襲手術)で復帰を早める
..
最近注目されているのが MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery:小切開低侵襲心臓手術、ポートアクセス法) です。
-
胸骨を切らずに手術可能
-
傷が小さいため痛みが少なく、治癒も早い
-
社会復帰・車の運転再開が術後3~4週間で可能 になるケースも
.
右図はMICSによる大動脈弁手術後の傷跡です。従来の胸骨正中切開と比べて、ほとんど目立たず、日常生活への復帰が早いのが大きな利点です。
ただしMICSはすべての方に適応できるわけではなく、安全が最優先です。
.
◆ 私たちの工夫 ― MICSができない場合も早い復帰へ
医学的な理由でMICSができない場合でも、
胸骨をしっかり再建し、痛みを最小化する独自の工夫で 早期の社会復帰・車の運転再開 を可能にしています。
この方法では術後すぐに両腕を上げる万歳運動が可能で、その後の上半身運動や社会復帰のスピードも速まります
。、、、続きを見る
.
◆ 安全な体力回復の目安
.
術後リハビリでは、「会話ができる範囲の運動」 を基本としています。
これはオーストラリア式心リハビリに基づいた科学的で安全な方法です。
また、遠方から来院された患者さんには、
.
-
十分に体力が回復してから退院
-
地元の病院と連携してリハビリ継続
といったサポートも行っています。
.
◆ まとめ
-
社会復帰・運転再開の時期は 手術方法・体力・合併症 により個人差があります
-
デスクワークは1~3週間、重労働や長距離運転は2~3か月が目安
-
MICS手術なら3~4週間で復帰可能なケースも多い
-
MICSができない方でも、工夫を凝らした胸骨再建で早期復帰を支援
.
心臓手術後の「社会復帰」「車の運転再開」でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
.
お問い合わせはこちらへどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
よく戴くご質問のページにもどる
.
◆参考ページ
心臓手術とはどういうもの?
そのこれからの方向は
心臓外科の名医とは
さあ手術と言われたら?!
安全に必要な症例数は?
病院の立派さと心臓外科の立派さは別?
対象となる病気は?
私のお勧めは?
美容について
術前のオリエンテーション:
米田正始が考案した心臓手術は
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。