三笠宮さまが受けられた僧帽弁形成術とは?

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◾️報道によりますと、、

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三笠宮さま(三笠宮崇仁親王)がこの7月11日に僧帽弁形成術という心臓手術を受けられ、96歳というご高齢にもかかわらず経過良好でがんばっておられます。

2012年7月13日の毎日新聞は次のように伝えています。

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三笠宮さま<三笠宮さま>食事始める 呼吸数などの数値も安定

毎日新聞 7月13日(金)15時1分配信
<三笠宮さま>食事始める 呼吸数などの数値も安定

心臓の手術を11日に受け聖路加国際病院(東京都中央区)に入院中の三笠宮さま(96)が13日朝、食事を始めた。血圧、脈拍、呼吸数などの数値も安定しているという。

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同病院関係者によると、専門医のチームが食事を再開する時期を検討。容体が安定していることから13日に開始した。三笠宮さまは手術後は感染症などの恐れがあるため集中治療室で手当てを受けているが、12日正午過ぎには人工呼吸器を外して会話ができるようになり、妃殿下の百合子さま(89)と言葉を交わした。【真鍋光之】

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宮さまは天皇陛下の伯父にあたられ、国民からも親しまれている方です。

宮さまは腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症のため、心不全がお薬や点滴などではどうしても治せず、危険な状態になっておられました。

96歳というご年齢は確かにかなりのご高齢ですが、日頃お元気に歩いたり普通の生活が送れる方ならば、経験豊富なチームなら心臓手術はある程度は可能です。

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◾️私たちの経験でも

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私たちの経験でも90歳代のご高齢患者さんの心臓手術は何度か経験がありますが、ポイントを押さえてできるだけコンパクトに手術をまとめあげ、万事において慎重にかつてきぱきと、そして手術のあと積極的に普通の生活に戻す努力がひつようです。こうしたキメ細かい配慮によって90歳代の患者さんでもお元気に社会復帰できるのです。

もししばらく寝たきりになったら、そのまま寝たきり状態が固定したり、痴呆症になったりと、困った事態になりやすいため油断は禁物です。

聖路加病院の川副浩平先生はじめスタッフの先生方に敬意を表するものです。

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以前に高円宮さまが心臓病のためスポーツの最中に突然死されたとき、私は2つの意味で残念と思いました。ひとつは高円宮さまの、罹患されたと伝えられる病気(HOCM)が心臓手術で治せるものであったこと、いまひとつは宮さまが医学学会によく出席され応援して下さったということへの感謝の気持ちからです。

この意味でご高齢とはいえ、勇断をされた三笠宮さまやご家族、また医療チームの皆様は立派と思います。

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僧帽弁閉鎖不全症は簡単な病気ではありません。しかし僧帽弁後尖の腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症なら、心臓外科とくに僧帽弁形成術のエキスパートなら、そう困難なく、治せるものです。

宮さまの場合、一般的には弁形成がもっともやりやすい、また良く効くタイプです。もちろん皮膚と言わず、骨と言わず、心臓や大動脈をはじめ、すべての組織が弱く、相応の対策が必要だったものと拝察いたします。

すべてがぴたりと決まった一件と言えるかも知れません。

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◾️患者さんたちに福音

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天皇陛下冠動脈バイパス手術のときにもお書きしたことですが、宮様のようなご高名な方が僧帽弁形成術を受け、ご高齢にもかかわらず見事にそれを乗り切り、お元気になられれば、全国の僧帽弁閉鎖不全症はじめ心臓病の患者さんたちに大きな福音となることでしょう。

実際、僧帽弁形成術をうけなければならないのに、どうしても決心がつかず、心不全や肺うっ血のため肺炎になっていのちを落としたり、心房細動という不整脈を合併して心臓の中で血栓ができ、これが脳に流れて脳梗塞になったり、などのケースが今なお見られます。

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また内科の先生の中には心不全で入院するほど悪くなるまで手術を勧めないという方もあります。こうした不幸を避けるため、日本循環器学会が多数の専門家を集めてガイドラインを作成し、適切なタイミングで、手術がもっとも患者さんに益するようにしていますが、このガイドラインさえ否定するような医師が今なおおられます。そうした方々は、患者さんが手術を受けないために亡くなられても、「病気だから仕方ないよ」「手術を拒否したのは患者さんだから」と言われるのです。これは医療者として問題です。医師・医療者は患者さんが必要な手術を受ける決心ができるようにご説明・指導する責任があるからです。

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◾️患者さんにおかれましては

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患者さんにおかれましては、本やネットなどで知識を得て、複数の専門家とくに内科と外科の両方から意見を聴き、ご自身やご家族でじっくりと検討することが勧められます。

三笠宮さまの心臓手術の一件は世の中に勇気を与えてくれたと思います。

宮さまのご全快をこころから祈るものです。

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米田正始   医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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Comments

  1. Mさま says

    三笠宮さまの心臓手術(僧帽弁形成術)について詳しいご説明ありがとうございました。
    手術が成功しご容体も安定されているそうで何より嬉しく存じます。
    新聞報道では妃殿下が手術への強い希望を示されたそうで、高円宮殿下寛仁親王殿下をお偲びつつ妃殿下のお心の内をお察し申し上げる次第です。
    医学医療技術の進歩で高齢者でも救命の道がさらに広がることを知りました。
    三笠宮さまのご全快を心よりお祈り申し上げます。
    米田先生にはいつも懇切丁寧なご解説をありがとうございます。
    患者力をもつということ、先生からのメッセージとしていただいております。
    さまざまな情報を日々ご提供して下さいまして、心より感謝申し上げます。
    米田先生の益々のご活躍と名古屋ハートセンターの更なるご発展をお祈りいたします。