お便り112: ポートMICSの僧帽弁形成術でゴルフ復帰へ

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僧帽弁閉鎖不全症の治療として僧帽弁形成術がベスト!というのはかなりの患者さんたちの間で常識になりつつあるようです。

近くの病院で弁置換を勧められてからこれはおかしい P1120179bとご自分で調べ、形成を確実にやってくれる病院を訪ねる患者さんも増えました。

同様におなじ弁形成なら早く仕事やスポーツに復帰したい、そのためにミックス手術ポートアクセス手術だ!と考える方々が増えました。

そして自分が納得できる治療や方針を立ててくれる医師を求めて飛行機ででも移動するという方が増えました。

下記の患者さんもそのひとりで、みずからしっかりと病気に立ち向かい、勉強し、そして連絡を取って来られました。

手術では僧帽弁前尖の広範囲が逸脱し、形成術としてはやや複雑でしたが、これをポートのMICSできれいに仕上げることができました。

せっかく九州・宮崎からお越し下さっただけに、十分な治療と、遠方がハンディにならないような配慮をし、余裕ができるまで院内で心臓リハビリもこなして頂くようにしました。

まもなく春がやってきます。ゴルフやスポーツなども楽しんでいただければうれしいことです。

東京オリンピックの観戦は余裕でお楽しみ頂けるものと存じます。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

****** 患者さんからのお便り **********


特任院長 米田正始 様
IMG_0782b

いつも医療に献身的に取り組んでおられる米田正始先生をはじめ、増山慎二先生、
小澤達也先生、村西菜苗先生そして麻酔科の先生、看護師の方々等改めて敬意を
表します。

入院から退院まで約29日間、不快な気持ちもなく治療に専念できたこと心より感
謝申し上げます。

ありがとうございました。

神の手に委ねたこの体、お陰様で東京オリンピックまではしっかりと見届けられ
るのではないかと密かに喜んでいます。

また、諦めかけていたゴルフも来年いや今秋にも本格的にできるのではないかと期待をふくらませています。

お会いできそうもありませんのでお手紙でお礼申し上げます。

本当にありがとうございました。

医療充実・発展のため、益々ご活躍されることでしょう。

どうか体だけはご自愛ください

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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エリザベス・テイラーさん

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報道によれば2011年3月11日に女優エリザベス・テイラーさんが死去されたそうです。79歳でした。死因は心不全とのこと。

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Elizabeth Taylor dies aged 79

Updated 24 Mar 2011, 4:14pmThu 24 Mar 2011, 4:14pm ABC news

Hollywood legend and violet-eyed beauty Elizabeth Taylor, famed as much for her glamorous but stormy love life as her five-decade Oscar-winning film career, has died aged 79.

Taylor, arguably the last great star of Hollywood’s golden era, died six weeks after being admitted to Cedars-Sinai hospital in Los Angeles with congestive heart failure, a condition she had struggled with for years.

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彼女はその1年 LizTayler半前にMクリップによる僧帽弁形成術を受けていました。

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超多忙でストレスも多く、健康管理もむずかしいテイラーさんだったようで、それまでもいくつもの病気と闘いながらの人生で、おそらく普通の心臓手術を受けるには体がついてこられない事情があったのか、あるいはすぐ仕事復帰するにはMクリップのような体への負担が少ない治療法が必要だったのかもしれません。

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ともあれ治療からたった1年半で心不全のためにお亡くなりになるというのは、僧帽弁形成術ではめったにないことで、ご年齢も当時77歳と比較的お若く、ひとりの心臓外科医としては残念に思います。

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Mクリップのような不完全治療ではなく、きちんとした手術を受けておけば、この世紀の大女優は死なずにすんだのではないかと思うのです。

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以下はテイラーさんがMクリップによる治療を受けられたときの報道のコピーです。当時は治療成功を皆で喜び合う状況でした。

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Elizabeth Taylor Prepares For Heart Valve Surgery Via MitraClip
October 6th, 2009

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News wires just came alive with a fascinating story about Elizabeth Taylor’s anticipated heart valve surgery.

 

Although details are still coming out, it appears that Elizabeth Taylor suffers from mitral regurgitation – commonly referred to as a leaky heart valve or mitral insufficiency. Also of significant interest… It appears that the MitraClip, a new minimally invasive technology, will be used to repair Elizabeth Taylor’s diseased heart valve.

 

Here are the details from The Press Association:

 

Dame Elizabeth Taylor is to undergo surgery to repair a leaky heart valve, the veteran actress has announced via Twitter. The 77-year-old called on supporters to pray for her as she explained in a series of messages the procedure to be carried out at an undisclosed hospital.

 

“I’ll let you know when it is all over. Love you, Elizabeth,” the last of three messages on the subject read.

 

The Oscar-winner’s last high-profile appearance was made last month at the funeral of long-time friend Michael Jackson. But it was a rare public outing for the actress who has suffered from a number of ailments in recent years and is now seen in a wheelchair.

 

She was taken to hospital last May for what her publicist described at the time as a routine check-up. After being released from the Los Angeles clinic, she announced via Twitter that she was “home from the hospital and feeling great”.

 

Dame Elizabeth again used Twiter, the micro-messaging site, to give details of her new date with the doctors. She tweeted: “Dear friends, I would like to let you know before it gets in the papers that I am going into the hospital to have a procedure on my heart.”

 

Here is a great video that explains the Mitraclip, the non-invasive device, I believe, will be used during Taylor’s operation.

 

Elizabeth Taylor’s final post explained the surgery: “It’s very new and involves repairing my leaky valve using a clip device [play video above], without open heart surgery, so that my heart will function better. Any prayers you happen to have lying around I would dearly appreciate. I’ll let you know when it’s all over. Love you, Elizabeth.”

 

My thoughts and prayers are with Elizabeth Taylor!

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現代の心臓病の治療は内科と外科とが一緒に 172496525相談し検討を重ねてベストの方法を選んだり組み合わせたりして初めて患者さんのお役に立つ、今はそういう時代です。つまりハートチームですね。

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僧帽弁閉鎖不全症の患者さんにおかれましては内科と外科の両方の意見を聴き、ご自身でもよく考えて治療法を選ばれるのが安全ためお勧めできることです。

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お便り105: 感染性心内膜炎(IE)のため僧帽弁形成術を受けられた患者さん

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感染性心内膜炎(略称 IE)は突然ひとを襲います。

きっかけは抜歯やけがその他さまざまですが、その背景に弁膜症先天性心疾患などの心臓病があります。

感染性心内膜炎のために弁がより壊れて弁膜症が悪化することもあります。

IMG_0364b感染や心不全がどうにもならなくなった時などに心臓手術が必要となります。

下記の患者さんは遠方からお越し下さいました。

当初入院しておられた大学病院では心配と連絡を取ってこられ、患者さんのご希望で主治医の許可と協力を得てかんさいハートセンターまで転院して来られました。

2つのメールを掲載いたします。ひとつは最初に私に送って下さったもの、もうひとつは退院後お元気になられたあとのお礼のメールです。

褒めすぎのところはお恥ずかしい限りで読み飛ばしてください。

病気と正面から向き合い、勉強し相談し熟考し、決断された患者さんとご家族には頭が下がります。

ポートアクセス法というMICSによる僧帽弁形成術で痛みも少なく、元気な生活に戻れたのは患者さんとご家族の努力の賜物です。

弁形成のあとはワーファリンも不要ですし自然な生活ができるでしょう

これから元気な健康生活を楽しんで下さい。


******ご家族からの最初のお便り******

お忙しい所大変申し訳ありませんが、インターネットを見て米田先生にメールさせて頂きました。

私は**市に住みます**と申します。

私の妻の母が微熱が長く続いて体調がおもわしくない為、今月始めに近くにある**大学病院で診察して頂いたら、感染性心内膜炎と診断され抗生剤の投与を続けています。

ですが効果があまり良くないらしく、近いうちに弁の手術をしなくてはいけないと先生から告げられたみたいでショックを受けています。

本当にこの病院で手術に踏み切って良いものなのか不安がっています。

実際に手術が近々に迫ってるこの状態でハートセンターへの転院は可能なのでしょうか?

まさか心臓の病気になるなんて思いもよらなくて慌ててしまい、先生のおみえになるような専門の病院があるなんて知識も無かったのですごく後悔をしています(泣) 

何か良い方法があれば教えて頂きたいです宜しくお願い致します m(_ _)m


*****ご家族から、退院後のお便り *****

米田院長先生

昨日は母が無事退院で お便り105きました事を心より感謝申し上げます。

本当なら院長先生に直接お会いして御礼を申し上げたかったのですがメールで申し訳ありません。

母は自分の病気を知った当初はもう助からないと絶望的でしたが、この病気 (感染性心内膜炎) をきっかけに米田院長先生の存在を知る事が出来まして、

神にすがる気持ちで先生にメールを送りましたら直ぐにお返事を頂き、そして先生のお導きによって母の命を繋いでいただけました。

本当に言葉では言い表せないほど感謝の気持ちでいっぱいです。

母の病気がきっかけではありますが、先生を知れば知るほど偉大さや人間性、様々な事が、職種は違えど私にとっても刺激になり勉強にもなりプラスになっています。

今後も母のアフターケアでお世話になりますが、宜しくお願い致します。

そして米田院長先生がいつまでもお元気でご活躍される事を心よりお祈り申し上げます。

ありがとうございました

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お便り103: 僧帽弁形成術を肺を守るためのミックスで

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僧帽弁形成術MICS手術とも進化を続けています。

かつて弁形成が不確実だった時代には肺が悪い患者さんには最初から決め打ちで僧帽弁置換術を行ったものですが、エキスパートがいる病院ではほとんどの場合、形成 IMG_1685bを確実に仕上げることで患者さんの予後を良くできるようになりました。

ただしこれはあくまでも経験豊富なエキスパートとそのチームの話です。

下記の患者さんは70代というややご高齢で、かつ肺が弱いという状況がありました。そこで肺に影響を与えず、しかも術後の肺リハビリがやりやすい、胸骨下部部分切開という方法(MICSミックスのひとつです)をもちいました。

これなら胸骨の上半分は残すため安定性が良く、術後の痛みが減り、深呼吸や歩行練習その他肺のリハビリもうまく進みやすいからです。

僧帽弁形成術はうまく決まり、お元気に退院して行かれました。

その後、私は名古屋を去り郷里の奈良に高の原中央病院かんさいハートセンターを立ち上げました。

以下はその際のお手紙です。

患者さんにはこれからもお元気で楽しく活発に生活していただければうれしいことです。機会があれば奈良へもお出かけ下さい。


****** 患者さんからのお便り *****

御免下さいませ。

米田先生院長就任おめでとうございます。


米田先生には大変お世話になりまして厚くお礼申し上げます。一月に手術をしてその後順調に回復して六月の深谷先生の検診では完璧ですよって。ほんとうに嬉しかったです。

米田先生のおかげです。名古屋ハートセンターで手術して本当に良かったです。

深谷先生の診察を終えたあと、米田先生がお会いして下さり、一言一言がとてもはげみになり、ありがたかったです。

お顔が見えないとさみしい限りです。

手術前は階段を登ると十段目ぐらいでハァーハァー今は平気でかけ登る事が出来ます。うれしくて、うれしくて、やさしいお顔が頭からはなれません。最高の先生です。

又、何かお世話になる事がありましたらその時はよろしくお願い致します。

私も今後も絆を大切にできれば幸いです。
ありがとうございました。

 

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事例: 交連部の僧帽弁形成術 2

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患者さんは40代男性で僧帽弁閉鎖不全症心房細動のため弁形成術不整脈手術を求めて遠方からお越し下さいました。

お仕事の都合でイギリス在住でした。イギリスは心臓外科先進国ですが、その在住エリアの中心的病院で人工弁による僧帽弁置換術しかないと言われてはるばる私の外来へ来られました。

調べますと後交連部を中心とした比較的広い範囲の僧帽弁逸脱と逆流でした。

私にとってはいつもの手術ですので95%以上は形成可能と判断し、あわせて私たちのメイズ手術は単なる肺静脈隔離(PV isolation)より成績が格段に良いためこれも行うことになりました。

図6サマリーPCとA3逸脱術中、まず弁を調べますと、後尖交連部のPCと呼ばれる部分が腱索断裂し瘤化して完全に逸脱していました。

となりの後尖右側のP3と呼ばれるところは低形成かつ逸脱し、

さらに前尖の右側部分であるA3も逸脱し、逆流ジェットが当たっていたためか肥厚していました(写真右)。

前尖も弁輪もかなり大きく、余裕があったため

シンプルで 図10弁輪再建ののち弁尖再建中長期の安定性が証明されている四角切除を行うことにしました。

弁として作動できない部分を四角に切除し弁輪を少し整えたあと前後の弁尖を再建しました(写真左)。

逆流試図16最終逆流試験OK験にて結果良好でしたので

リング30mmを縫着しました。余裕あるサイズでした(写真右)。

インクテストでも十分な弁尖のかみ合わせが確認でき(写真左下)、

図17インクテストもOK長期間安定しやすい形ができていました。

写真の青いところが特殊インクで染まった部分で、白いところが弁尖のかみ合わせ部分となります。

なおこのインクは無害でまもなく消滅します。

リングの糸をくくる前に冷凍凝固法にてメイズ手術を施行しました(写真右下)。図14クライオメイズ

お若いご年齢を考慮し、極力再発しないように冠静脈洞の外側からもブロックラインを造りました。

写真左下がそのときのものです。心臓の外側にも不整脈の原因があるためこれを丁寧に治します。

心拍動下に 右房のメイズも行いました。

図15冠静脈洞にもクライオ術後の経食エコーにて僧帽弁、三尖弁とも良好であることを確認しました。

心房ペーシングが良く効き、心房細動が治ったことをも確認しました。

術後経過は順調で約10日で退院され、しばし郷里で体調を整えてからイギリスへ戻られました。

術後の定期検診でも弁、リズム、心機能とも正常で、仕事にも精出しておられ、うれしい限りです。もちろん利尿剤も不整脈のお薬もワーファリンもなしで行けています。

すでに心臓手術から4年以上が経ちます。この弁はおそらく一生お役に立ち続けるものと考えます。また定期検診でお会いしましょう。

 

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事例: 交連部の僧帽弁形成術 1

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患者さんは40代の医師で僧帽弁閉鎖不全症のため北海道からお越し下さいました。仕事熱心な先生でなるべく短期間で健康な生活に戻りたいというご希望で来院されました。

やや複雑な逸脱のため地元では僧帽弁形成術ができるかどうか??ということではるばるハートセンターを選んでくださったようです。図1弁チェックA3PC


お若く体力もあるためか当初、比較的症状は軽かったのですが
、発作性心房細動を外来で起こされ、心臓手術を何年も先ではなく今やろうと決意されました。 

図2弁チェックP3術中、僧帽弁を見ますと術前のエコー予想どおり、後交連部の逸脱でした。(写真右上)

なかでも前尖A3つまり向かって右側の太い腱索が断裂しており、A2つまり前尖中ほども逸脱、PCつまり後交連部も逸脱していました。

A2-3とPCだけでなく後尖P3つまり後尖右側も軽度逸脱(写真左上)していたため、これらをすべて良い形にすることが長期の安定につながると判断しました。図3A3へのGT

そこでA3に4本人工腱索を立て、PCとバランスをとることでこれを守り(写真右)、

 

かつA2にも人工腱索を立てて正常化を図りました(写真左下)。

ここで生理食塩水を左室内へ注入し僧帽弁がきれいにか 図4A2へのGTみ合い、逆流がないことを確認しました。

リングをもちいて弁輪形成し、

念のため逆流試験で良い結果を確認(写真右下)し、

ピオクタニン色素で深いかみ合わせができていることも確認しまし 図5逆流試験OKた。

術前に発作性心房細動を何度か繰り返しておられたため、両心房メイズで心房細動を根治し、

後顧の憂いなく仕事に集中していただけるようにしました(写真左下)。

図7左房メイズ術後経過は順調で10日あまりで元気に退院されました。

その後も外来でお元気なお姿を拝見するにつれうれしさがこみあげてきます。

あれから4年、ますますのご健勝とご活躍をお祈りいたします。

 

健康人と見分けがつかないほどの良い治り方は弁形成術ならではの利点です。複雑弁形成が必要なため人工弁による僧帽弁置換術になるかも、と言われた患者さんはセカンドオピニオンをもらって本当に僧帽弁形成術ができないかどうか、確認されることを勧めます。

それともう一点、現在ではこうした心臓手術ポートアクセス法などのMICSでできるようになっています。多数の経験をもつ専門施設に限られますが、こうしたことを検討するのも大切です。

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事例:リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成術

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弁膜症の中でリウマチ性は今なお少なくない病気です。

ご高齢の患者さんでは若いころにリウマチ熱にかかり、知らない間に治って、その際に弁が軽く壊れて、その後何十年の間に悪化するというパタンもありますし、地方ではまだ健診態勢が不十分なため見逃されることもあり、決して油断してはならない病気です。

患者さんは40代半ばの女性です。沖縄から来て下さいました。

若いころにリウマチ熱の既往があります。

来院時は階段2階までは登れるもののそれ以上では息切れがしました。ときに下肢がむくむとのこと。

夜枕が低いときに息苦しくなり座ると楽になる、いわゆる起座呼吸が見られました。

心エコー図にて高度の僧帽弁閉鎖不全症と中等度の僧帽弁狭窄症がみとめられました。

僧帽弁は拡張期にドーム状の形を呈して開放制限があり、リウマチ性弁膜症の所見でした。

まだお若いご年齢からぜひ僧帽弁置換術ではなく 図1交連切開僧帽弁形成術を受けたいと希望して米田正始の外来へ来られました。

手術ではまず僧帽弁のヒンジの部分が癒合していて開かなくなっていたため、交連切開しました。右写真はその作業中のものです。

図2交連切開後これで少し開きやすくなりました。

しかし後尖が硬くてあまり動きません(左写真)。弁として機能しないため、ここへ自己心膜パッチで十分なサイズになるように形成しました(右下写真)。

さらに後尖を支え 図5自己心膜でPML拡大る腱索という糸のような組織が硬く短くなっていたため、これらを切除しました。

後尖はかなり動くようになりましたので、

ここで弁形成用のリングを縫い付けました(左下写真)。

図⒏仕上がり逆流試験をしますと、後尖の起き上がりがまだ不足しているため、硬い弁下組織をさらに切除し、徹底して弁機能を回復するようにしました。

その結果、後尖がきれいに起きて弁が正常に作動するようになりました。

ピオクタニン 図9インク試験で良い結果色素をもちいたインクテストでも僧帽弁は十分なかみ合わせを持つことが示されました(右写真)。

術後経過は順調で術後10日目に元気に退院されました。

その後沖縄にて仕事を含めて普通に生活をしておられましたが、一度、感染性心内膜炎にかかられ、近くの病院で薬による治療を受け、全快されました。

術後1年経った外来でのエコー結果は良好でした。ごく軽い僧帽弁閉鎖不全症と同じく軽い狭窄症を認めますが、問題ない程度で、心機能も良好で左房の拡張も軽快していました。元気に暮らしておられます。

感染性心内膜炎は虫歯やけがなどでばい菌が体内に入ると起こることがあり、人工弁の場合はかなり治りにくいのですが、弁形成のあとなら人工弁の場合よりはかなり治しやすいことが知られています。

こうした意味でも弁形成ができて良かったと言えましょう。もちろんワーファリンは無しで行けますし。しかし今後のために感染の徹底予防策をさらにお話しし、安全を確保するようにしています。

学生時代に沖縄県立中部病院や沖縄徳洲会病院などで実習させていただき、沖縄好きの私としてはこうした形ででもお役に立ててうれしく思っています。

 

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お便り101: 信念で難手術を受け乗り切った僧帽弁形成術の患者さん

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患者さんは30代前半の女性です。心内膜床欠損症のため小さいころに心臓手術を受けておられます。

今回は僧帽弁閉鎖不全症が悪化したため来院されました。

Ilm17_da05005-sいちど名古屋ハートセンター(*註)の他の先生の外来を間違って受診され、手術は難しいと言われて帰宅されました。

しかしこの僧帽弁を治すんだという信念で一度断られた病院に、しかし今度こそ私の外来を指名して来院されました。(*註:当時。現在、米田は「医誠会病院、仁泉会病院」で勤務しています)

診察の結果、私はこの弁は僧帽弁形成術で治せると判断し、手術することになりました。

この若さで人工弁になりますと機械弁では妊娠出産が不可能となり、生体弁では何度も再手術が必要となりいずれもお気の毒な姿となります。やはり弁形成が必須です。

手術では僧帽弁の前尖が2つに割れる、クレフトと呼ばれる状態で、まずこれを閉鎖して一枚の前尖を再建しました。しかし弁がすでに硬く変化しており、隙間が空いて、逆流が残ります。

そこで心膜パッチで前尖を拡大し、やわらかい部分でかみ合うように工夫し、あとはリングで適正サイズとして逆流は完全に消えました。

手術前に僧帽弁狭窄症も少しありましたが、それもほぼ無視できる程度に改善しました。

この方の手術では先天性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成術と、リウマチ性僧帽弁膜症への弁形成術の両方のノウハウが活きました。これらを両方こなしている施設は数少なく、来院して戴いて、お役に立てて良かったと思います。

術後経過は順調でまもなくお元気に退院されました。

外来でお元気な顔を拝見するたびに、よく信念をもち、こうした病気を知らない医師の雑音に惑わされず、敢然と再来院し相談して下さったこと、感嘆せずにはおれません。

以下はこの患者さんからのお便りです。


******* 患者さんからのお便り *******

 

米田先生、深谷先生、北村先生、ご無沙汰しております。
入院、手術の折は、本当にありがとうございました。お礼のお手紙が遅くなり申し訳ございませんでした。

黒石教子さんお手紙三歳の時に心内膜床欠損症の手術をし、その後何事もなく生活をしていましたが、今回、子供を出産する間近に、子供の切迫早産等で病院に入院中に、なんとなく心臓のことが気になり大学病院に入院していたので、ついでにと思い診察してもらった際に「僧帽弁閉鎖不全症」という病気が発覚しました。

大学病院の先生に言われたのは、「先天性の病気は、診れる科はなく、仕方なく心臓外科で診る。もし、出産時に心不全等を起こせば子供はあきらめてもらう。もう二人目は産めない。弁を置き換える手術を5~10年以内にしたほうがよい。」という絶望的なことばかりでした。

その時、この先生、病院に自分の命を預けて大丈夫かなぁと思いました。
そんな思いを抱えながらも子供を安産で産みました。息子が成長していくうちに、ちゃんと治して息子の成長を見届けていきたいと強く思うようになりました。

そして、名古屋ハートセンターのHPを見て、受診しました。
その時は一度断られて、大学病院で診てもらおうとも思ったのですが、主人が「米田先生に診てもらおう!」と言い、もう一度ダメもとで名古屋ハートセンターを受診したところ、米田先生が弁形成で手術したら大丈夫。子供も産めるようになるよ!手術はいつがいいかな?と言われたときには、本当にびっくりしました。

そして、その日のうちに必要な検査をして手術の日が決まり、手術前の説明もすごく時間をかけてして頂きました。

特に不安等を感じることなく手術を受けました。手術後は、本当に経過は順調で子供と毎日走り回っています。

あの時、あのまま大学病院で診察してもらわずに勇気をふりしぼりハートセンターに行って良かったなぁと思っています。

それも親切に説明してくれる米田先生、いつも丁寧に診察してくれる深谷先生、入院中フレンドリーに話してくれた北村先生のおかげです。

また、この先も診察等でお世話になりますが、よろしくお願い致します。

 

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お便り98: ポートアクセス法僧帽弁形成術で早い仕事復帰を

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人間出会いはさまざまです。患者さんは50代男性で浜松からお越し下さいました。

A335_010仕事でお忙しく、あまりゆっくり療養もできない状況で、かつ手術後には病気を忘れて仕事に熱中できるような治療をもとめて私の外来へ来られました。

ポートアクセス法による僧帽弁形成術が創も小さく、骨も切らず、痛みも軽く、社会復帰が早いです。

そのためこの状況に一番ぴったりの手術ですが、この患者さんはバーロー症候群という、僧帽弁全体が病気になる、同じ僧帽弁形成術でも比較的高度な技術が求められる状態で、ポートアクセス法をやっている病院でも一般には通常の正中アプローチを使う傾向にある状態でした。

しかしバーロー症候群をポートアクセス法で僧帽弁形成術するという経験を着実に積んできましたので、この患者さんにも同じ方法で手術しました。

弁は3か所を直す、比較的複雑なものになりましたが、結果は良好、逆流なく、かつ全身に負担を与えない、短時間でまとめ上げることができました。

下記のお手紙は、この患者さんが中日新聞にお書きになられたエッセイです。

文中に名古屋の病院とあるのは、当時私が名古屋ハートセンターで勤務していたからです。現在は大阪府の医誠会病院と仁泉会病院で忙しく汗を流しています。

ともあれ患者さんの元気な社会復帰、仕事復帰のお手伝いをできたこと、大変うれしく思っています。これから楽しく、ばりばり仕事に打ち込んで下さい。お時間のあるときに、大阪京都観光を兼ねて外来へ定期健診にお越し下さい。

********患者さんのお便り(エッセイ) 中日新聞10月13日*******

心臓手術

きっかけは職場の健康診断だった。いつもなら儀式的に終わる聴診と脈診が、やけに時間がかかるなと思っていると、「心雑音と不整脈がある。再検査を受けて」と診断された。

 
IMG_1959b 間を置かず精密検査を受けたことが、大きな一歩になった。心臓エコーで、僧帽弁機能不全の疑いがあることが分かったのだ。

 僧帽弁は左心房と左心室の間にあり、血液が流れた後、ぴったりと閉じる。それが、何かの原因で弁に異常が起きて閉じきらなくなり、血液が逆流していた。息切れや胸が苦しいという自覚症状はなかったが、放っておくと、心不全や心筋梗塞のリスクが高まる。早期発見は、むしろラッキーだと考えた。

 名古屋に心臓外科の専門病院があり、さらに精密検査をしたのち、手術の決断をした。後から知ったが、この病院は、皮膚切開が少なくて済む先進技術で手術を行い、担当医はゴットハンドといわれる名医だった。

 二週間で退院し、一ヶ月で仕事に復帰できた。いろんな人との出会いと幸運が重なり、命を救われた思いだ。同僚や家族の支えにも深く感謝する。いまは体調をしっかり整えることで、恩返しとしたい。

 

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お便り93: 僧帽弁形成術の不成功から来院、元気に帰還した患者さん

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弁膜症の手術にも難しいタイプがあります。

下記の患者さんは70代男性で、地元(他府県)でトップレベルの病院にて、僧帽弁形成術を受けられました。


A335_012残念ながら比較的難しいバーロー症候群の僧帽弁で、その病院では対処できず、生体弁による僧帽弁置換術になりました。

ところがその時に生体弁の付け根のところから逆流する、これはおかしい、左室が破裂したのではないかと長時間かけてさまざまな処置が手術室で取られたようですが、結局うまく行かなかったようです。

そこでどうにもならないからと、ちかぢか機械弁で僧帽弁置換術をと言われ、HPで調べてから米田正始の外来に来られました。70代のご年齢で機械弁は、ワーファリンというお薬が欠かせなくなるため脳出血などの合併症が起こりやすくなり、何とか生体弁をというお気持ちで来院されたのでした。

エコーを拝見しますと、どうもおかしい、これは生体弁がきちんと左室内に入り込んでいないのではないか、と考え、それならこの生体弁を外して私たちが新たな生体弁を入れれば治せると考えました。

こうした再手術には独特のノウハウが必要で、弁膜症に熟練したものにしかわからないこともあるため、手術をお引き受けしました。

初回手術の前に来て頂ければ僧帽弁形成術ができたものと拝察しますが、この段階からは次善の策として良い弁置換をしようというわけです。

手術は予想どおりで、うまく新たな生体弁が入り、患者さんは術後11日目に元気に退院されました。やや遠方ですので少しゆっくり院内にいて頂きました。

外来でお会いするたびにお元気になられるのがわかり、うれしく思っています。

以下はその患者さんのご家族からの礼状です。

手術を受けた病院を出て治してくれる専門家をもとめて外の病院へ行く、実に勇気のいることだったと思います。しかしその決断が良い結果をもたらしたこと、敬意を表したく思います。

 

*****  患者さんのご家族からのお便り *****

名古屋ハートセンター
心臓血管外科 統括部長 米田正始 先生
スタッフの皆さま

拝啓


猛暑の候、米田先生はじめ名古屋ハートセンターの皆さまにおかれましては、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。


月日の経つのは早いもので、父が今年2月6日に僧帽弁置換の再手術を受け、本日でちょうど半年となります。
その節は大変お世話になり、ありがとうございました。

今思い返せば、あの時米田先生にご相談していなければ、今頃父はまだ原因不明の心不全に悩まされ、当時かかりつけの**病院で再度僧帽弁の置換をするのであれば血栓リスクの高い機械弁、もしくは循環器内科で処方していただく薬で何とか生き延びるか、どちらか究極の選択を迫られていたと思います。


「あの時」と申し上げるのは、その悩みの境地において米田先生のサイトを拝見してから、居ても立っても居られずご相談いたしました、昨年12月9日のメールです。

 

市川功さんメール

患者さんのご家族からのお礼メールです。本文に記載されているのは添付文書の内容ですが、このメールからも伝わってくるものがございます

当日、しかも1時間足らずで米田先生よりご返事いただいた内容は、医療現場における一般論と、名古屋ハートセンターの受入れ姿勢を綴った大変有難いお言葉でした。
メールを拝見した時の、あの安堵感は今でもはっきり覚えています。
「断らない医療」の姿勢がそこにあるのだろう、と私は思います。

今回、米田先生に執刀していただいたお陰で、懸念しておりました心不全の根本原因もはっきりし、弁置換も機械弁ではなく血栓リスクの低い生体弁を使用してくださいました。


そして何より手術時間が極めて短かったことで術後の回復が早く、父が初回の**病院で受けた弁置換の術後とは明らかに違う回復ぶりでした。


お陰で今では服用を続けていたワーファリンをはじめ、薬は殆ど飲まずに過ごすことが出来ており、この上ない喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。

末筆になりますが、私たち家族の愛する父が、この名古屋ハートセンターでお世話になることが出来て本当に良かったと思っております。


スタッフの皆さまがこの素晴らしい場所で働いておられるのが、羨ましくも思います。
この夏の暑さはまだまだ続きそうですので、どうか皆さまくれぐれもご自愛ください。


敬具

平成25年8月*日

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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