最終更新日 2019年5月26日
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◾️右室二腔症の手術は
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右室二腔症は心室中隔欠損症VSDのために右室の中に筋肉が異常に張出し、右室が2つの部屋に分かれたかのように見えるため、この名前があります。
この筋肉の張出しがひどくなり、右室の中を血液が流れにくくなると手術が必要になります。
手術ではこの右室内の異常心筋を、他の構造物を守りつつ、きれいに切除することと、もともとの原因である心室中隔欠損症VSDを閉鎖する必要があります。
これらをきちんと治してこそ、元気に安全に永年暮らせることになります。
こうした手術は通常は胸骨正中切開つまり胸骨を全長にわたって縦に切って心臓に到達することで行われます。そのため皮膚も胸骨の長さ分、切開することになり、長さ25cm前後の大きな創になることが一般的です。
患者さんが比較的お若い方が多いため、大きな創はこころの創にもなりますし、胸骨を全部縦切りすると治るのに2-3か月もかかり、その間、仕事に支障があることもあります。とくにちから仕事は難しくなりますし、クルマの運転もやりづらくなります。
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◾️右室二腔症へのミックス手術
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そこで私たちはミックス手術つまり小切開手術をこの右室二腔症の手術にも導入し、患者さんの高い満足度を頂いています。
右室二腔症では心臓のやや左側の視野が必要となることが多いです。そこでポートアクセス法のように胸の右側からアプローチするのは視野が悪く危険なため、胸骨部分正中切開という方法をもちいています。
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胸骨の下半分ほどを切って心臓にアプローチします。
左図のような切開です。
そのため胸骨は手術後も安定性が良く、術後も早い時期に痛みが軽くなり、骨もより早く治ります。おまけに創が小さく位置も低いため、夏服でも創があまり見えません(心臓手術・事例:右室二腔症へのミックス手術)。
ちなみに右図が通常の皮膚切開です。けっこうな違いがあります。
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心臓と胸骨の位置関係に個人差があります。どうしても胸骨を全部切らざるを得ない場合は皮膚を小さく切開し、上記に準じた利点が得られるようにしています。工夫の積み重ねによって、上記の胸骨部分切開よりも皮膚の傷跡は小さく、うまい使い分けを考えて選んでいます。
心臓手術の患者さんが後日、手術して本当に良かったと言って頂けるよう、こうしたミックス手術を含めたさまざまな努力を行っています。
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参考ページのIndex:
危険なの?
術後の痛み軽減について
社会復帰が早いわけは?
心臓手術と美容について
胸骨「下部」部分切開法とは
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
患者さんやご家族からのお便り
お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん
お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん
お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん
お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん
お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん
お便り67: MICSで右室二腔症の手術を受けられた患者さん
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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