最終更新日 2022年2月4日
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◾️大動脈弁形成術のメリット
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大動脈弁形成術は若い患者さんたちにとって大きなメリットがあります。
というのは手術のあと、ワーファリンが不要ですし、生体弁よりも長持ちするからです。
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生体弁は70代なら20年近く持ちますが、10代なら10年も持たず、弁形成術に大きな有利さがあります。自己心膜による弁再建も10年を超えるようなデータの蓄積がなく、現時点では主流にはなり得ない状態です。
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◾️ミックス(ポートアクセス)での大動脈弁形成術
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しかし若い患者さんたちは将来があるため、なるべく創が小さく、痛みが少なく、仕事復帰も早いポートアクセス手術を希望されるものです。そこで僧帽弁形成術に対してはポートアクセスのミックス(小切開低侵襲手術)を積極的に活用し実績を上げて来ました。
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経験の蓄積により、大動脈弁形成術とポートアクセス法は必然的に合体することになり、この10年ほどは積極的に行うようになりました。患者さんの笑顔が二倍になると言ったらちょっと言い過ぎでしょうか。しかし大変喜んで戴いています。女性患者さんはもちろんのこと、男性患者さんの評判も上々です。
ちいさい傷跡のおかげで、心の傷跡も小さい、そう感じます。
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写真右上はポートアクセス法での大動脈弁形成術 後の創です。もちろん骨はまったく切っていません。真夏の日焼けのあとがどこか楽しそうですね。
当初は30代までの若者を中心にこの方法を使って参りましたが、ノウハウの蓄積で現在は70代ぐらいまでの患者さんにも適宜活用しています。
ただし大動脈の硬化が強い方や、弁尖の破壊が進み弁形成が複雑な場合など安全に懸念がある場合はポートアクセスより一段通常切開に近い方法などを選ぶことがあります。やはり安全第一の原則は最重要ですから。
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◾️大動脈弁形成術のやり方は同じです
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ポートアクセス法で、、といっても大動脈弁形成術のやり方は同じです。
弁尖つまりひらひらと開閉する部分が垂れ下がっていればそれを正しい高さに調整し、
弁輪つまり弁の付け根の部分が拡張しておればこれを適正なサイズに直す、
もちろん弁尖に穴があくなどしておればそれは心膜パッチなどで修復する、
いずれもこれまでの大動脈弁形成術を踏まえた、正統派の方法です。
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この道の権威、ドイツのシェーファーズ先生の方法を活用して右図のような計測を行い、できるだけかみ合わせが深く、安定度が良いように工夫します。
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とくに右図でeH(effective height つまり有効弁尖高)と示す、いわば弁尖の高さをなるべく確保するようにしています。
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さらに二尖弁などで時々見られる弁尖が巻き込んで変化している、いわゆるenrollと呼ばれる状況のときにも、これをもとに戻して弁尖の高さを稼ぐようにしています。
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弁尖そのものの高さ・サイズ、右図でgH (geometric height つまり弁尖そのものの背丈)が不足気味なときには図のAVJやSTJを調整し、その他の方法も適宜駆使して弁尖がしっかりと閉じ、かつ楽に開く、そのように弁を造り上げます。
趣味的な職人芸のように聞こえるかも知れませんが、なにしろ若い患者さんの、永い人生を支える弁を造る、つまり患者さんの人生がかかっているわけですから、本気で修復するのが患者さんへの礼儀と心得ています。
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◾️弁形成術が適応にならない場合は
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その一方、大動脈弁形成術が適応とならないような、弁がひどく肥厚硬化し、あるいは短縮や石灰化やちぎれるなどの変化を来した患者さんに対しては
2.ポートアクセスで生体弁をもちいた大動脈弁置換術を行っています。
もちろん生体弁の場合は将来再手術の必要が生じたらTAVIつまりカテーテルで入れる折りたたみ生体弁で再手術を回避できるように工夫しています。
こうしてさまざまな患者さんの多様なニーズにお応えできるように徐々に進化をしているわけです。
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■読み物
日記:アジア心臓血管胸部外科学会にてーー雑感とともに
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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