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◾️僧帽弁膜症のうち僧帽弁閉鎖不全症の原因は?
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僧帽弁閉鎖不全症(血液が逆流します)の場合では、弁を支える糸のような組織(腱索と呼びます)が長く伸びたり切れたり(腱索断裂と呼びます)して弁が閉じるべきときに閉じなくなって起こります。
年齢や組織そのものの弱さ(たとえばマルファン症候群などのように結合組織が弱くなる病気の場合など)の理由で起こるのです。
高い年齢のために組織が弱って弁膜症になる状態を加齢性と呼びます。
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◾️僧帽弁閉鎖不全症、もう一つの原因は
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時には僧帽弁を支える糸の付け根にある乳頭筋が伸びて弁が閉じなくなることもあります。
また弁の付け根(弁輪)が大きくなって弁が届かなくなって逆流したり、ばい菌(感染性心内膜炎)のために弁に穴が開いてそこから血液が逆流することもあります。
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近年増えたのは狭心症や心筋梗塞などのために左室が大き くかつ丸くなり、僧帽弁が乳頭筋に引っ張られて起こる虚血性僧帽弁閉鎖不全症です。
同様に特発性拡張型心筋症や二次性の拡張型心筋症のため左室が丸く拡張すると機能性僧帽弁閉鎖不全症が発生します。
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右図は虚血性僧帽弁閉鎖不全症を含めた機能性僧帽弁閉鎖不全症の発生メカニズムを示します。
つまり弁葉や腱索そのものに異常はなくても弁は逆流します。そのため「機能性」(器質性ではないという意味)と呼ぶわけです。
これらに対しても左室や乳頭筋レベルでなるべくパワーアップしやすい方法で弁形成ができるようになりつつあります。
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やや稀です が、IHSS(特発性肥厚性大動脈弁下狭窄症、別名はHOCM 閉塞性肥大型心筋症)のため僧帽弁が巻き込まれて僧帽弁閉鎖不全症を合併することもあります。
この場合は異常心筋を的確に切除するだけで僧帽弁は自動的に治ります。
無手勝流で患者さんにもやさしい治療となります。
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◾️僧帽弁膜症のうち僧帽弁狭窄症の原因は?
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僧帽弁狭窄症(弁が狭くなって血液が流れにくくなります)では多くの場合、リウマチ(溶連菌というバイ菌感染が原因で)のため弁組織が分厚くなり、二枚 の弁同士がくっついて開きにくくなることで、弁が狭くなります。
弁の硬さゆえこれまで僧帽弁の形成が困難と言われて来ましたが、現在はエキスパートチームなら形成可能になりつつあります。
弁をできるだけ薄く、柔らかく、動きやすくします。さらに必要なら自己心膜を化学処理して安定させ、これを適切にトリミングして用います。これらによって十分開き、きちんと閉じる、本来の弁の姿になるのです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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