最終更新日 2020年2月29日
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◾️サルコイドーシス心筋症とは?
心臓サルコイドーシスの一つで、左室壁の心筋がサルコイドーシスの炎症のために壊れて瘤化したり拡張型心筋症になったりする状態です。
サルコイドーシスは全身の様々な臓器に炎症やサルコイド(肉芽腫)を形成する難病ですが、心臓にも同じことが起こることがあるのです。心臓では刺激電動系という一種の神経や左室壁の心筋が壊れることがよくあります。
症状は心臓が壊れる部位によって異なりますが、サルコイドーシス心筋症の場合は心不全のために運動時の息切れや動悸、さらに進行すれば安静時や横になると息苦しくなって眠れない(起座呼吸)なども起こります。ちなみに上記の刺激伝導系が壊れると脈が極端に遅くなりふらつきや失神発作などが起こります。
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◾️サルコイド心筋症の治療は
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まずお薬や心臓リハビリなどの内科的治療が行われます。効果不十分の場合に外科手術が考慮されることがあります。脈が極端に遅くなる場合はペースメーカー植え込みが行われます。
外科手術では左室の壊れた部位を中心に形成することで左室のパワーアップが測れます。心筋梗塞の後の左室瘤と共通した一面がありますが、その一方、上記の刺激伝導系など、手術しづらい部位を治さねばならないこともあります。
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◾️私たちの手術では
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私たちはこの病気の特徴を考えてケースバイケースの心臓手術を施行し、改善を見ています(拡張型心筋症・事例5、事例6。
写真左はサルコイド心に対して私たちが行った新しい左室形成術(上記事例6です)の論文が米国のトップジャーナルの表紙(2009年5月号)に掲載された時のものです。
努力の積み重ねが評価され光栄に思っていますし、頑張って下さった患者さんやチーム諸君に感謝しています。
サルコイド心では左心室が局所的にやられるケースが多く、その他の部位は悪くないため、かなりの改善が期待できます。
たとえば左室側壁がやられている場合にはいわゆるバチスタ手術が役立ちますし、前や後ろ側の壁がやられているときにはセーブ手術で治せます。
逆に左心室の難しい部位が病変でやられる場合もあり、左室形成術の豊富な経験が求められます。
心尖部側の左室が壊れている場合なら新しい左室形成術が威力を発揮するでしょう。
たとえば心室中隔の起始部つまりいちばん根っこの部分で、ここには心臓の神経ともいえる刺激伝導系が走っていますので、それへの配慮が必要です。
その一方、僧帽弁形成術で当面の安全とQOL(生活の質)回復を図るなど柔軟な方針で臨むこともあります。
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◾️総じて
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このようにサルコイドーシス心筋症の外科治療では技術や経験が必要なだけに治しがいがあるとも言えますし患者さんにとっては有効な治療手段の恩恵が届きやすいともいえるでしょう。
サルコイドーシス友の会の活動とあいまって患者さんの予後改善に役立てればと思います。
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メモ: サルコイド心で私たち心臓外科へ来られる患者さんの多くは長い病気の歴史をもっておられます。
たとえば眼や肺や皮膚その他の病変ですね。
それはご苦労の歴史ではありますが、病気に向き合って克服してこられた歴史でもあり、私たちなりに内科や他科の先生方と協力して心臓を治してまた元気な生活にもどって戴こうという力が湧いてきます。
そこではこれまで力を入れて来た総合内科的な視点や全人医療的な考え方が有効で、お役に立てることが多いかも知れません。
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◾️患者さんの想い出2はこちら:
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左室緻密化障害とはへ行く
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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