3) 心房中隔欠損症(ASD)―放置すると年齢とともに悪くなり死亡する方が増えます

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◾️心房中隔欠損症(略称ASD)とは?

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図1ASD日本語心房中隔欠損症(ASD)はよくある先天性心疾患のひとつで、大動脈二尖弁のつぎに多いものです。左心房と右心房の間にある心房中隔の一部が欠損し穴のようになっています。

長い間あまり強い症状がなく、心臓の雑音も小さいことなどのため学校検診などで発見されず成人期ときには50代―60代になって病院にこられることがまれならずあります。

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40歳を超えますと心不全や心房細動あるいは運動時息切れなどのためQOL(生活の質)の低下などが起こります。心臓もずいぶん大きくなっていることが多いです。

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また奇異性塞栓つまり右房から左房へ血栓など A306_078が流れてそれが脳や全身に飛んで塞栓を引き起こしたり、脳に膿がたまる脳膿瘍をつくったり、肺高血圧が高じて右ー左シャントとなりアイゼンメンガー症候群になることさえあります。

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それらのために手術なしで50歳に達するのは半分で以後も年間6%の死亡率があるとのデータもあります。

60歳を超える患者さんでもしばしば手術適応となるのはこのためです。つまり心房中隔欠損症では手術をしないと長生きできない恐れがあるわけです。

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◾️心房中隔欠損症(ASD)にはどんなタイプが?

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心房中隔欠損症(ASD)にはいくつかのタイプがあります。

治療の際にそれを把握しておくことは大切です。たとえば


1.二次口ASD: 卵円かとよばれるくぼんだところ
ASDtypesに穴があります。二次中隔の成長が悪いときや、一次中隔の吸収が遅いときに起こります。

右図の2ですね。

ASDの3分の2以上を占めます。僧帽弁逸脱症を合併することがよくあります。

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2.一次口ASD: 一次中隔が心内膜床とくっつかないと一次口ASDとなります。ASD全体の15から20%を占めます。右上図の3.です。

房室弁(僧帽弁や三尖弁)の弁膜症を合併することが多いです。なかでもクレフトとよばれる僧帽弁前尖の裂け目や心室中隔欠損症VSDが代表的です。

トリソミー21つまりダウン症候群の患者さんによく見られます。

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3.静脈洞ASD(Sinus Venosus ASD): ASD全体の5-10%を占めます。部分型肺静脈還流異常症(PAPVR)がよく合併します。右上図の1.です。

Superior型(上大静脈欠損症)とInferior型(下大静脈欠損症)があります。

右肺静脈が左房に注いでいても、その血流がこのASDごしに右房に流れ込む場合は左右シャントが増えることになります。

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4.冠静脈洞ASD: 冠静脈洞と左房の間の隔壁がなく、冠静脈洞の血液が左房へ流れ込みます。

ASD全体の1%を占めます。左上大静脈の遺残をともなうことが多いです。

5.卵円孔開存(PFO): 健康成人の25-30%に見られます。シャントが起こることがあります。

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◾️心房中隔欠損症 ASDの治療は?

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心房中隔欠損症ASDの穴をとおる血液の量が多い時(肺を流れる血液の量が全身を流れる血液量の2倍以上になるとき)や、穴が小さくても右心房から左心房へも血液がもれている時(脳梗塞などが起こりやすくなります)は積極治療の対象となります。

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図1Amplatz最近はカテーテルをもちいてこの心房中隔欠損症を閉じることもありますが、ASDのタイプや位置などの制約があり、かつ不確実閉鎖となることもあり、長期成績がまだ不明です(右図)。

カテーテル治療の硬いパッチがそのお隣にある大動脈基部を圧迫し、大動脈が破裂したという報告さえあります。まだまだ課題があるわけです。要はそれぞれの特徴を踏まえて使い分けるということです。

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◾️心房中隔欠損症の手術は?

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一方手術は傷が残るという弱点はありますが、

安全性が高く、確実に治せるという利点、さらにしばしば合併する三尖弁閉鎖不全症僧帽弁閉鎖不全症あるいは心房細動・右房拡張を高い確率で治せるという利点があります。

 

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三尖弁(図の左側にある白い大きな弁です)や僧帽弁は弁形成手術で治します。私たちはとくに心房細動の期間が長期におよぶケースでの治療に力をいれ、

必要に応じて心房縮小メイズ手術を使用し、心臓の機能や除細動率を上げています (手術事例 成人の心房中隔欠損症ASD)。

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肺高血圧症を合併した心房中隔欠損症ASD患者さんは一般に重症と言われますが、

心房中隔欠損症ASDを手術で閉じたあと肺高血圧が改善すると予測できる場合は積極的に心臓手術に取り組んでいます。

実際、患者さんは術後、呼吸も運動も楽になることがほとんどです。

手術事例: 重い肺高血圧を合併したASDの高齢患者さん) 

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◾️より進化した治療法・ミックス手術

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20代30代などの若い患者さんの場合は早い社会復帰に加えて美容も考慮しています。傷跡が小さく見えにくいと、心の傷も小さくなるからです。

ミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術、とくにポートアクセス手術)で右胸に小さい創を開けてここから心房中隔欠損症ASDや二次的に合併した病気を治すようにしています。

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左写真はMICSのポートアクセス法による心房中隔欠損症の根治術後2か月の創部です。

痛みも少なく、創もみえにくいため、早く仕事復帰でき精神的ストレスも軽いです。これならあれこれ迷わずに早く心臓手術を受ければよかったと言って頂きうれしく思いました。

大切なことは安全の確保、ついで快適さや早い社会復帰、そしてできるだけ健康に、美しくという原則を守ることと考えています。

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やはりその患者さんの状況に合わせたアプローチが重要といえるでしょう。

なお心房中隔欠損症の外科手術はここまで100%の成功率で来ていますが、術前から他の病気(肺や血管や腎臓など)を合併した患者さんが増えたことと、心臓を開ける術式だけに油断なく慎重にていねいに進めなければならないという意味では他の心臓手術と同じ心構えで取り組んでいます。

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米田正始   医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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